川奈まり子『実話怪談 出没地帯』の「母校の怪談」には、川奈氏が在学中の見聞をやや詳しく記した2つの事件の現場の他にも、怪談の伝わっている場所が紹介されています。初出のニュースサイト「しらべぇ」連載の2015/02/18「【川奈まり子の実話系怪談コラム】母校の怪談【第九夜】」後半を抜いて置きましょう。
女子美には、他にもいくつか怪談があった。
「屋上から飛び降り自殺した生徒が、ときどき死の瞬間を再現する。校舎脇の桜の樹の梢が風もないのに揺れるのはそのため」
とか、「蓼科の寮には、手首を切って死んだ子が今でも彷徨っている」
とか。
言うまでもなく、それらのほとんどが、根も葉もない面白半分の噂に過ぎない。
怪談の生まれやすい環境だったのだ――歴史のある古い学校で、美術を志す女性にはエキセントリックな者も少なくなく、創作に悩んだあげくの自殺者が昔からときたま現れたから。
また、私が在校した当時は杉並校舎はしかなく、建物の老朽化が問題視されていて、開かずの間もいくつかあった。保安上、使用禁止にしただけだろうが、使用されなくなって久しい部屋は不気味で、幽霊目撃談の温床になった。
しかし、見るからに古くて陰鬱な旧校舎ならともかく、新設されたまっさらなキャンパスにまでオバケ話がつきまとっているのは、どうしたわけか。
在るのだ。私の卒業後にオープンした相模大野の新キャンパスにも、怪談が。
こっちのソースは某SNSのコミュニティ。「相模原校舎建設工事に関係した人によると、もともと、あそこは森林地帯」
「森を切り開く時、白骨体がよく出て、しばしば工事中断したとのこと」
「工事終盤の深夜、現場内で数多くの怪奇現象」
「大学の南にある給水塔の下では、排ガス自殺をしたホトケ様にも遭遇」
相模原校舎のある場所は元々、富士の樹海のような場所だったため、地元では昔から怪奇スポットとして知られていたという。
たまたまそんな土地を選んでしまうとは、因果なことだ。とっても良い学校なんだけどなぁ。
ま、まずオバケの類はふつうは見えないから、何にも問題ないと思うけどね。何事もなく(?)卒業した私が言うんだから間違いない。
太字は原文のママです。色を薄くした箇所は単行本では省かれている部分です(他にも書き換えたところがありますが一々注記しませんでした)。ここで注意されるのは、相模原キャンパスの怪談の「ソース」を示していることです。
私は川奈氏が当初「ソース」を示していたことを知らずに、単行本の幾つかのキーワードで検索を掛けて辿り着いたのですが、これは、[mixi]のコミュニティ「女子美(4年制)」に2004年10月12日に立てられたトピック「6号棟に出るって話し」で、杉並校舎と相模原校舎について、コミュニティでも最多の18件のコメントが寄せられています。私は mixi のIDを持っていないので18件中[3][8][9][11][13][15]の6件が閲覧出来ないのですが、2005年6月9日に書き込まれた[16]番、
古いネタを引っ張り出してしまってスミマセン。
マイミクに、相模原校舎建設工事に関係した人がいるのですが・・。
もともと、あそこは森林地帯で、大学と公園を作るために開拓したそうです。
森を切り開く時、白骨体はよく出て、しばしば工事中断したとのこと。
また、工事終盤の深夜、現場内で数多くの怪奇現象にあったそうです。
大学の南にある給水塔の下では、排ガス自殺をしたホトケ様にも遭遇したとか・・!!
つまり、相模原校舎全体が、富士の樹海のよーなトコロだったので、何がでてもフシギはないようです。(地元人談)
自分は、4年間通って、何も遭わなかったデスけど。
ってか、UFOの方が見たいです!!
これが、川奈氏の典拠と判断されます。女子美術大学・女子美術大学短期大学部HPの「沿革」を見るに、「1971年7月 (昭和46)」条に「蓼科寮開設」、「1990年4月 (平成2)」条に「芸術学部相模原校舎開校」とあります。
トピックの題の「6号棟」は、相模原キャンパスの「6号館」のことで、トピックと初期のコメント、2004年10月13日書き込みの[1]番、10月14日書き込みの[2]番(トピック主)、10月16日書き込みの[4]番の中心話題になっていましたが、[4]番が最後に、
杉並の方が出そうですよね。歴史あるし。
寮はあのへんでUFOの大群が見えたっていう噂を誰からか聞いた。本当ですか?(っていうかまた微妙に脱線?)
と書き添えたUFOが、直後の[5]番以来、約8ヶ月ぶりに[16]番の最後に持ち出されている訳です。
相模原キャンパスの話題はその後、12月17日書き込みの[6]番、2005年3月25日書き込みの[10]番、4月15日書き込みの[12]番と続き、そして川奈氏が依拠した[16]番が最も纏まった報告となっております。
閲覧出来ないコメント6件も気になるのですが、それ以外で今回挙げなかったコメントが、杉並キャンパスに関するもので、もちろん川奈氏が挙げている2件の事件にも触れたものとなっております。(以下続稿)