瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

校舎屋上の焼身自殺(16)

・「週刊新潮」2月6日号(3)
 それでは昨日の続きで、「凄惨な自殺を敢行した「女子美大生」の才能」の後半、36頁5段め4行め「芸術的難解な死」の節を見て行きましょう。5〜20行め、

 実は、■■さんは、最近、上/野にある古典美術の技法を教え/る塾に通っていて、この日も友/達と待合せをしてその塾に行く/予定だった。
 その友人によれば、■■さん/は卒業を前にして自分の才能に/悩んでいたという。「学校で学/んでる洋画と、自分のやりたい/ことが違う」と、よくもらして/いた。女子美大の林利根学生課/長がいう。
「彼女は付属高校からの推薦入/学者で、高校時代から油絵を志/望していたようです。入学と同/時に油絵が専攻でした。・・


 林利根は挿絵画家林唯一(1895.1.27〜1972.12.27)の三男で彫刻家、現在、女子美術大学名誉教授です。直接自殺者を知っていたのではなく、役職上、取材に対応している訳です。
 5段めの最後の2行と、37頁1段めの14行めまで、一般的な卒業制作時の学生の様子や原因がつかめないことなどを語っています。なお、37頁の右上には写真(2段め2字めまで×15行分)が掲載され、下にさらに2字分「深夜突如火の手が上った女子美大校舎」とのキャプションがあります。4階建ての校舎の手前にバスケットゴールのある、フェンスに囲われた校庭が見えますが、屋上の時計塔は写っていません。この写真の左から1段めは本文が17行、左端には3段抜きの黒の長方形にゴシック体白抜きで「次号は創刊三十周年記念特大号です」とあります。
 そして14行めの最後から2段めに掛けて、林学生課長のコメントの最後には、次のようにあります。2段めの15行めまでは前述の理由で字数が少なくなっております。

・・。そ/れにしても不思議なのは、どう/して日曜日のあんな時間に校舎/の屋上なんかにしのび込めたか【1段め】ということです。日曜/日は、特に校舎の使用/許可を得た者以外は入/ることができないので/す。許可を得た者でも/午前九時から午後三時/までなんです(この日、彼女は埼玉県■■市■■■の自宅を午後三時に出ている。父親は会社員、家族五人)。彼女は高/校、大学とあわせて七/年間近くもこの学校に/通っていますから、ど/こか秘密のルートを知/っているのかもしれませんけど/ね」


 2段めと3段めは32行で、残りは油絵担当の林敬二助教授の自殺者について、それから一般的な美大生の悩みについてのコメントがあります。林敬二(1933生)は洋画家でやはり現在、女子美術大学名誉教授です。画像検索すると作品が幾つかヒットしますが、林助教授の画風は抽象画に寄っており、裸婦など写実を志していた自殺者とは合わなかったようで、「上野にある古典美術の技法を教える塾に通ってい」たのも「学校で」は十分に「学」べなかったからでしょう。
 なお、林助教授は自殺者の才能について、特に何とも云っていません。学部の4年では判断出来ないとの一般論を述べているだけです。――煽るような題が附されていますが、これは週刊誌の常套手段と云うべきものでしょう。
 37頁4〜5段めは「●みちのく紀行シリーズ22/小久慈焼岩手県*1」と云う東北電力の広告です。(以下続稿)

*1:ルビ「こくじやき」下。