瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(76)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(11)
 12月5日付(75)の最後に触れた昭和12年(1937)以前、「北秋田郡荒瀬村」時代の文献について、12月6日付「TRUE CRIME JAPAN『情痴殺人事件』(1)」の冒頭にネットに上がっているものではなく、紙の本で確認した上で詳細に及ぶこととしたい、と述べたのだけれども、週末に返却期限の本を返しに行った図書館に予約取置して置いてもらっていたつもりがサイトの「予約かご」には入っていたのだけれども「予約実行」していなかったので借り損ねてしまった。『情痴殺人事件』も返却してしまい、今手許に材料もないので(ないことはないが頭が切り替わらないので)差当りネット上の本文にて比較して置こう。
 その文献は佐々木喜善『東奥異聞』青空文庫に上がっている。底本と初出については、

底本:「世界教養全集 21」平凡社
   1961(昭和36)年12月23日初版発行
   1963(昭和38)年12月20日3版発行
初出:「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店
   1926(大正15)年3月

とある。私もこれまで『世界教養全集』を見ただけで『東奥異聞』の初刊本は国立国会図書館にも所蔵されておらず、まだ見たことがない。

 全部で12章のうち、6章めが「嫁子ネズミの話」である。まづ、

 ネズミの話は、日本の神代史のあたりにも、かの有名な大国主神を火中からお救い上げた話など、ふんだんにあります。しかし、そういう神話などは別にして、私たち祖先の人々、すなわち農民の――平民の――なかから起こった話にはどういうのがあったか、それはかなり多くの民譚がありますが、私はそのうち、奥羽地方の民間のなかに残っているネズミの起原の話をつぎに一、二お話しようと思います。

との前置きがあって、「」節めがこの話で「」節めは「その話は『江刺郡昔話』という私の本のなかにも書いておきましたから」とあるように、佐々木氏の著書である爐邊叢書『江刺郡昔話』(大正十一年八月十七日印刷・大正十一年八月二十日發行・大正十五年六月廿五日再版發行・定價八拾五錢・郷土研究社・4+162頁/復刻版・昭和51年11月20日発行・名著出版)の四六頁5行め〜四九頁「鼠となつた娘の話」の梗概である。
 それでは『東奥異聞』の「」節め、冒頭を見て置こう。末広氏の発表した2つの本文、9月14日付(55)に引いた平成4年(1992)の「あしなか」第弐百弐拾四輯掲載の「山の神の伝説」、12月4日付(74)に引いた昭和31年(1956)の「山と高原」二月号第二三三号)の「狩山の鼠」との異同を、両者に一致する箇所を黒の太字、「あしなか」と一致する箇所を青の太字、「山と高原」と一致する箇所を赤の太字にして示した。

 羽後の国、北秋田郡荒瀬村という所は、同国のうちでも有名な山郷で、そして村の大部分は狩猟でもって年中の生活をたてている所であります。‥‥


 末広氏は「羽後の国」を「秋田県」に改めている訳だが、「山と高原」ではうっかり「同国の」と云う言い回しを残してしまったのである。(以下続稿)