瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

田口道子『東京青山1940』(24)

・『現代民話考』の青南国民学校(5)
 『現代民話考』の「子どもたちの銃後」に見える戦時下の青南国民学校(青南小学校)についての、田口氏の同級生西原(大村)煌子の回答の続き。
【2】「六 竹やり訓練など」では、冒頭、単行本299頁6行め「○東京都港区。*1」文庫版352頁3行め「*東京都港区。」とあって、続けて単行本11行めまで、改行位置「/」で示した。文庫版は8行めまで、改行位置は「|」で示した。

‥‥。旧赤坂区立青南国民学校で、戦時中、少年団結成とかで一日中班閲兵|があり、/壇上の配属将校に向って右手をナナメにあげて(あのハイルヒットラーを)させられた。体操/の時には、毎日毎日、短棒投げをやった。あの時はわからな|かったが今思うと、あれはテリュ/ーダン投げの練習ではなかったかと思う。また、|毎朝、明治天皇昭憲皇太后の和歌を一首ず/つ黒板にかき、拝唱させられた。


 本書にはこのような内容は見られない。国民学校(小学校)に「配属将校」はいなかったのではないか。特に少年団の結成式と云うことで、それこそ「子弟」が青南国民学校に通っていた将校が招待されて来ていたのであろう。――この辺りの確認は『港区教育史』上巻を閲覧する必要があろう。
【3】「七 子どものうた」は本文(例話)なので単行本299頁14~15行め、文庫版353頁4~6行め、

 旧赤坂区立青南国民学校では、新しい軍歌が出来ると授業とりやめで、講堂に全校集|められ、歌/詞をそらんじるまで練習させられた。例えば「落下傘のうた」とか「加藤隼|戦闘隊」。

とあって、300頁1行め「分布」として2行めに2月22日付(20)に引いたように場所と回答者が示される。文庫版353頁8~10行め「分布/*東京都港区。本文。/  回答者・大村煌子(東京都在住)。」。とある。
「落下傘のうた」は軍歌「空の神兵」であろう。昭和17年(1942)4月発売。9月には同題の映画が公開されている。

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「加藤隼戦闘隊」については、本書第二章 昭和戦前「青山」の街・人・暮らし【36】写真集『海軍兵學校』のなかの好きな人の節に、120頁7~10行め、

 また翌年の十九年三月には、小学校を卒業するときだったが、ビルマ戦線に散った「加藤隼/戦闘隊」という映画が大評判で、あの藤田進が加藤隼戦闘隊長になっていた。「三四郎」に再び/会えると期待して観に行った私だったはずだが、「三四郎」ほどの印象はなく空中戦の記憶はお/ぼろげだ。

とあって軍歌のことには特に触れていない。昭和18年(1943)3月25日公開の「あの」藤田進(1912.1.8~1990.3.23)主演の映画「姿三四郎」については、やはり第二章【28】純情武骨な「姿三四郎」スタイルが当時の主流【29】正義派少年への憧れに記述されている。

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 映画「加藤隼戦闘隊」は昭和19年(1944)3月9日公開。軍歌は昭和16年(1941)にニュース映画で紹介され、映画公開直前に灰田勝彦(1911.8.20~1982.10.26)吹込のレコードが発売されている。(以下続稿)

*1:ルビ「みなと」。