・銀河テレビ小説「たけしくんハイ!」シナリオとの異同(17)
昨日の続き。
・第7回(6)
『シナリオ』94頁、この話に乗れば「大学出の三倍か四倍の実入り」の「月に二万五千円ぐらい」にはなる、と聞かされ、竹次郎(林隆三)はやる気になるのだが、「新しい会社」を立ち上げるために「みんなで、一律」に「五千円」出資することになっている、と言われて尻込みする。しかし真利子(木の実ナナ)が「判りました。何とかしますから。」と請け合ってしまうのである。
金の話を持ち出す前に、古田は職人としての矜持をくすぐる発言をしていた。93頁下段14~21行め、
古 田「そこでね、竹さんみてえに腕のいい職人に/ また戻って貰いてえんだなあ。小僧の時から腕に叩/ き込んだ技術をさ、もったいねえと思うんだよ、/ 俺は。」
竹次郎「そりゃァ……出来りゃァ、そりゃァ……。」
古 田「戦争さえなけりゃ、ずっとうるし職人で通/ ってたんだよ、俺達は。そこへこういう願ってもな/ い話だ。どう? 竹さん。」
金の話が出て尻込みした竹次郎に代わって真利子が身を乗り出して来るのは、この古田の発言が、長年の真利子の感慨でもあったからなのだ。
それは第5回、72頁下段1~17行め、家では酔っ払った竹次郎が煩いので、街灯の下で真利子が秀二郎(松田洋治)の勉強を見てやる場面、
秀二郎「母さん……。何だってあんなおやじと一緒に/ なっちゃったんだ?」
真利子「フフ。(笑って答えない。)」
秀二郎「どこかいい所があった訳?」
真利子「父さん、うるしの職人だったからね。」
秀二郎「そんな事は知ってるよ。」
真利子「昔はね、職人っていうのは、腕さえ良けり/ ゃ学問なんていらなかったのよ。腕が値打ちだった/ の。」
秀二郎「――。」
真利子「それがねえ、うるしどころじゃなくなっち/ ゃったから……戦争のおかげで腕の振るいようが/ なくなっちゃったからね、あの人は……。」
秀二郎「昔はあんなに飲んでなかったのか?」
真利子「全然っていう程飲まなかったわね。一日中黙/ って――さ、いいからやってしまいな。人間、ああ/ なったら、もう元には戻れやしないから……。」
との会話に良く表れている。なお最後の「人間、‥‥」以下はTVドラマで省略されていた。
それはともかく、第7回に戻って古田に「とりあえずいくらか用意できない?」と言われて、竹次郎は秀二郎とたけし(小磯勝弥)を表に連れ出し、前日に自分たちが渡したばかりお年玉と余所でもらった分と、全部出すように命ずるのである。これに真利子も加勢する。秀二郎は説得されてしぶしぶ800円を差し出すが、たけしは持っていた700円*1を出し渋り、取り上げようとする竹次郎に大声を出して抵抗する。
『シナリオ』では、96頁上段2~3行め、
たけし「ドロボー!」
松原組から源治と定子が出て来る。
となっているが、TVドラマでは松原源治(金田龍之介)夫妻は何処か外出先から暗くなってから帰って来て、この騒ぎを聞き付けることになっている。(以下続稿)
*1:お年玉は親から300円、松原定子(今井和子)すなわち松原組から500円の合計800円、うち100円はベーゴマ代。【2月13日追記】この辺り、2月13日付(46)に『シナリオ』を引用して確認した。