・銀河テレビ小説「たけしくんハイ!」シナリオとの異同(18)
昨日の続き。
・第7回(7)菊とたけしの空想①
古田(綾田俊樹)が帰る場面はない。恐らく古田が帰ってから帰宅した英一郎(趙方豪)が事情を聞き、皆が期待を膨らませる場面になる。但し『シナリオ』96頁下段7行め「 眠っているたけし。」とあるがTVドラマでは竹次郎(林隆三)も寝入っている。この辺り『シナリオ』には竹次郎について記述がない。古田を見送りがてら信濃屋で機嫌良く飲み直していると云うつもりだったのだろうか。しかし古田が来訪する前、組合(?)の新年会で既に酒が入っていた訳だし、家で十分気持ち良くなって古田が帰るまで頑張っていたか、或いは古田が帰る前に寝てしまったと考えた方が自然である。
英一郎は弟2人がお年玉を取り上げられたと聞いて、自分のお年玉を秀二郎(松田洋治)とたけしに分けてやるのである*1。つくづく良い兄で、演じている趙氏も素晴らしい人のように見えて来る。96頁下段19~20行め、
真利子「英一郎、お前はいいのかい?」
英一郎「俺はアルバイトで稼げるから。」【96】
この「アルバイトで稼げる」実情を説明した場面が『シナリオ』には1月18日付(21)に引いたように存在していたが、TVドラマでは省略されてしまった。しかし、そのような場面はなくとも、当然アルバイトをして学資の足しにしていたろうと思うけれども。
そして「月々二万五千円」が話題になる。真利子(木の実ナナ)はお金より漆の仕事に戻れることが嬉しいと言うが、秀二郎は勉強部屋、菊(千石規子)は義太夫のお稽古場が実現することに思いを馳せるのである。その、理想の生活を映像化したのが、97頁下段3行め~98頁上段4行め「●菊の空想」である。こざっぱりした和室で松原源治(金田龍之介)と三上(牧伸二)に義太夫の稽古を付ける菊、勉強部屋で勉強する秀二郎、茶の間でくつろぐ真利子、洋風住宅の玄関からにこやかに出て来るたけし。――最後、98頁上段1~3行め、
たけしが蝶ネクタイに半ズボンで気取って出て/ 来る。
門に〝西野〟という立派な表札。
という場面を見たことは、何となく覚えていた。しかしこれらが全て菊の空想シーンだったことは忘れていた。なお、たけしは眼鏡に吊りズボン、目が悪い訳ではないのに眼鏡を掛けさせた辺り、1月13日付(16)に取り上げた「お金持ちの家の子」松本正彦っぽい。
TVドラマでの追加としては、義太夫の稽古の場面、『シナリオ』には登場しない古田と進駐軍の軍人(恐らくリチャード・マッケンジー)が並んで座って、拍手をしている。それから秀二郎の勉強部屋、秀二郎の机を照らすのは街灯、すなわち机の脇に電柱が立っている。――想像を超えた空想なのである。
さて、アメリカに漆器を輸出する会社に職人として参加したことで、遠からず裕福な暮し振りになっている自分たちを空想する役割は、TVドラマでは菊一人が担っているのであるが、『シナリオ』段階ではたけしも裕福になった自分を空想していた。しかし、この場面はTVドラマは省略されている。長くなるので、次回、眺めて置くこととしよう。(以下続稿)
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IOCは解体した方が良い。オリンピックみたいなことは、やらないよりやった方が良いだろうが、利権として肥大し過ぎている。7月にこの感染症が何らかの解決を見ているとは到底思えないのに、何が何でもオリンピックをやろうとしたがっている人々には、殆ど狂気を感じる。これ以上無駄金を使わないでくれ。マスコミはマイナースポーツの代表の、涙ぐましい努力を報じている。早く中止を決めてやれ、としか思えない。もういくら同情を引くような、頑張って来た選手が可哀想だから応援しようよ、みたいな輿論誘導をしても上手く行かないだろう。
こんなことになるのなら去年やった方が良かった、と Tweet した大学教授がいたが、去年の夏は北半球では小康状態だったが南半球で蔓延していたのだから、全世界から集めてやるなんてやはり無理だったろう。かつ、昨年春の感染拡大で代表を確定させられなかった(そして未だに確定していない)競技団体が少なからずあったのに。Twitter 上にはこの手の無分別な発言が多過ぎる。
いや、それぞれの競技団体が世界選手権をやっており、それらは今や動画配信等でリアルタイムに観戦出来るようになっている。別に4年に1度、全世界から全種目を集めてやる必要なんか、ないのである。無駄な施設を沢山作らされるだけであることは、当初予算の数倍になった悲惨な東京大会(未開催)が証明している。1競技の世界選手権なら既存の施設でまかなえるのだ。経済力のない国でも工夫次第で開催出来る。
政府・自民党があれだけ旅行業界に公金を注入したがるのは、東京オリンピックのために客室増を強いたのにこんなことになったからであろう。1競技の世界選手権であったなら、こんなに客室を必要としなかった。今必要なのはむしろ病室増なのに、膨大な予備費を抱えながら未だにGoToに取り憑かれている。GoToは偏った愚策である。しかし、頑なに代案を考えようとしない。本当に旧日本軍のようだ。上手く行かなかったときの計画を立てないのは、日本が未だに「言霊」に支配されているからだろうか。
しかし、当てが外れて努力が無駄になるのが可哀想、と云うのであれば、未だに見捨てられたままの氷河期世代がまづ可哀想だろう。私ら博士崩れも自己責任呼ばわりされたものだが、あなたたちだって自己責任ということになるのではないか。大学院重点化だって国が旗を振って推進したのだ。違うと言うのであれば、私らも違うと言って(いや、私は今更研究職に就きたいと思っていないので構わないが)救いの手を差し伸べてもらいたいものだ。
*1:【2月13日追記】この辺り、2月13日付(46)に『シナリオ』を引用して確認した。