瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

ビートたけし『たけしくん、ハイ!』(23)

銀河テレビ小説たけしくんハイ!」シナリオとの異同(16)
 昨日の続き。
・第7回(5)真利子の英語力②
 そこで、『シナリオ』93頁上段20行め、

真利子「それ、確かな話なんですか?」

と確認を求めると、古田(綾田俊樹)は英文の注文書を持ち出す。
 ここで、真利子(木の実ナナ)の英語力が発揮される。
『シナリオ』93頁下段4~7行め、

竹次郎「俺ァ、どうも、パンと横文字は……。」
  真利子、注文書を手に取って見る。
真利子「秀二郎、お兄ちゃんの英語辞典持っといで。」
  秀二郎、真利子に辞書を渡す。


 ここはTVドラマの台詞をメモして置いた。

竹次郎:「いやぁ俺はどうもパンと横文字はよぉ」
真利子:「ちょっと。秀二郎。お兄ちゃんの英語の辞書持っといで」
秀二郎:「え、うん」
竹次郎:「ほら、早くしろ」


 そして、真利子が手にしている英文タイプの注文書が大写しになる。ただ、右上と左下が画面に収まっていない。

                214 W. Maf・・・
                Boston, Mas・・・
                02138
                U.S.A.
 
                October 1, 1954
 
Dear Sir:
 
We are doing some research for purchasing Japanese
lacquer manufactured goods.
We are planning to import high quality lacquer products
sixty thousand dollers a year.
 
Your office, I understand, has been assigned to regulate
and oversee the distribution of lacquer products.
 
・・・ould like is for you to send to us any ?
・・・ you may have on this subject.


 ボストン(Boston)の次はマサチューセッツMassachusetts)であろう。
 『シナリオ』にはこの文面はない。ただ93頁下段8~12行め、

真利子「へえ、当方には良質のうるし製品を年間六/ 千ドル分輸入する用意がある……。」
古 田「一ドル三百五十円だからね。二百十万だよ。/ 二百十万、気が遠くなるような数字だと思わない/ かね。」

と、冒頭部分を真利子が訳して読み上げている。
 ここで注意されるのは『シナリオ』では「六千ドル」だったのが、TVドラマでは「6万ドル」と一桁増えて10倍の額になっていることで、古田の台詞も、

古田:「1ドル360円ですからねぇ、2160万ですよ、2160万!」

となっている。「気が遠くなるような数字」云々はなく、とにかく数字そのものを強調するのである。しかし、昭和24年(1949)4月から昭和46年(1971)8月まで1ドル=360円の固定相場制だったので「三百五十円」と言うのがやや解せない。竹次郎相手だから計算しやすい数字にしたのだろうか。
 それから『シナリオ』では常体で喋っていたのが、TVドラマでは敬体にしているところが注意される。
 注意深い真利子は注文主についても確認している。TVドラマに写った注文書からは確認出来ないが、『シナリオ』から引用すると、94頁上段10~14行め、

真利子「この、リチャード・マッケンジー商会って/ いうのは……。」
古 田「進駐軍で日本に五年いた人でね。日本の古い/ 蒔絵とか漆器を大分向うに持って行ったらしいん/ だ。」


 主としてTVドラマで活躍したアメリカの俳優 Richard McKenzie(1930.6.2生)の名を借りたのかどうだか。(以下続稿)