・銀河テレビ小説「たけしくんハイ!」シナリオとの異同(22)
昨日の続き。
・第8回(3)父親参観①
竹次郎(林隆三)が不貞腐れてしまったところにたけし(小磯勝弥)が帰って来て、「今度の日曜」が「父親参観」との「学校から」の「手紙」を真利子(木の実ナナ)に渡す。たけしは最初から竹次郎には期待していないのか「都合が悪かったらお母ちゃんでもいいよって。」との先生からの注意を口にする。案の定、竹次郎は「俺ァ行かねえぞ、学校なんか。」云々とごねて、真利子に説得されても聞かない。尤も、たけしは父ちゃんでも母ちゃんでも「どっちでもいいもん」とこだわっていないのだが、菊が気を利かせて「いいよいいよ、真利子さん、あんた行ってやんなよ。どうせ竹次郎が行ったって役に立ちゃしないんだから」云々と焚き付けて、竹次郎に「俺が行く」と言わせてしまう。真利子に「ほんとにいいのかい? 大丈夫なんだね?」と釘を刺されると、折角行く気になったのにまた逆らいやがって「バカヤローッ!」と、行きつけの居酒屋・信濃屋に出掛けてしまう。
TVドラマでは信濃屋主人の大山(北見治一)を相手に機嫌良く飲んで、父親参観の意義などを教えてもらう。そして父親参観当日の朝の場面になる。
この『シナリオ』105頁下段15行め~107頁上段5行め「●信濃屋の中」のシーン、後半に、たけしが迎えに来て、以後しばらく話す場面があったのだが、TVドラマでは省略されている。106頁上段19行め以降、
そこへ入ってくるたけし。
大 山「ほら、西野さん、お迎え、お迎え。」
竹次郎「もう来たのか。いくらも飲んでねえぞ、父ち/【106上】 ゃん。」
大 山「ま、ま、今日はこのへんにしてさ、美人の/ 奥さんの所へ帰ったら?」
竹次郎「冗談じゃないよ、あんなヘチャムクレ。おい、/ たけし、何か食うか?」
たけし「おでん食いたい。」
竹次郎「よーし。おやじさん、じゃ、おでん二つ三つ、/ こいつにやってよ。」
大 山「はいよ。じゃ、これ、サービスね、何がいい?」
たけし「玉子とね、そっちの丸いのと長いの。」
大 山「ガンモに、ごぼう巻きね。(と、皿におでん/ を乗せて差し出す。)」
竹次郎「たけし、学校のな、お前の先生、おっかね/ えか?」
たけし「おっかなくないよ。女の先生だもん。」
竹次郎「女か。クソババアだな。」
たけし「ババアじゃないよ、若い。」
竹次郎「あらら、生意気に若い女の先生か。」
たけし「美人だよ。」
竹次郎「へえ。」
竹次郎、ボリボリと頭をかいて、ついでにのど/【106】 のあたりをかいて――。
竹次郎「若ェ美人か……。」
大 山「いつなの、父親参観ってのは。」
たけし「今度の日曜日。」
竹次郎「女か……。(と、渋い顔。)」
たけしは「父親参観」のお知らせをもらった当日に真利子に渡しているようだから「今度の日曜日」までは何日か余裕があるはずである。前回、3500円の借金について、古田(綾田俊樹)が今度来るのが『シナリオ』のように「あさって」では勘定が合わないのではないか、との疑問を提示したが、この記述からもやはり「あさって」では有り得ない。古田はこの回の最後、「今度の日曜日」の午後(恐らく夕方)に、『シナリオ』112頁下段10行め~113頁、恐らく予定よりも早く、西野家に来たようなことになっている*1。
無学で人になかなか合わせられないから細かい話が出来ず、対話が苦手だから社交的になれない、すなわち人見知りの竹次郎は、この情報を得て、若くて美人の山口先生(石井めぐみ)と顔を合わせることに、全く必要のない気負いを感じ始めてしまったようである。
しかし、別に「若ェ美人」の先生じゃなくとも、そもそも学校に良い思い出がなく、いろいろ負い目を抱えている竹次郎が、学校に行くに当たって変に緊張して、あのような挙に出てしまった、と云うのはこの会話を省略したところで視聴者には諒解されるところであろう。いや、父親参観の当日、竹次郎が家を出た直後に、真利子によって午後からの予定でも朝早く起き出して家を出てしまい、間がもたなくて酒になってしまう、と云う習性であることが説明されていたから、特に学校に限った話でもないのである。(以下続稿)
*1:1月15日付(18)に見た、初登場の1月2日(?)と同じく、雨の中、西野家を訪ねている。天候は『シナリオ』では指定されていない、日付が変わったことははっきり示されていないが、この天候により古田の来訪が「日曜日」の父親参観の後ではなく、月曜日以降であることを示しているのかも知れない(だとすると午後ではなく午前と考えた方が良さそうだ。月曜以降ならばいよいよ「あさって」どころではないので、「あさって」云々の削除は妥当な措置であった)。但し1月2日(?)も、現れたときは傘を差していたが、以後のシーンでは雨は降っておらず、雨上がりであることを気にするような描写もなかったように思う。