・銀河テレビ小説「たけしくんハイ!」シナリオとの異同(11)
昨日の続き。
・第6回(4)古田②
1月7日付(10)に見た第2回、昭和16年(1941)2月に出征して以来音信不通だった竹次郎(林隆三)の漆職人仲間の古田(綾田俊樹)が「尋ね人の時間」を使って竹次郎を捜していることを真利子(木の実ナナ)たちは知るのだが、当の竹次郎が何故か連絡を取りたがらない。それでそのままになってしまうのだが、昭和30年(1955)1月2日、西野家を尋ね当てた古田は雨の中、訪ねて来る。何故住所が分かったかは説明されていない。しかし、説明はなくとも関係先を少しずつ辿って西野家に至ったのであろうことは容易に察せられる。
『シナリオ』84頁上段7~9行め、松原家でテレビを見せてもらえなかったたけしたちは、外で遊んでいる。
●空地
竹馬に乗っているたけし達。
竹次郎と同年輩の男――古田が来る。
TVドラマでは竹馬ではなく、何処かの路地沿いの庇の下でメンコをしているところに、蝙蝠傘を差した古田が通り掛かって、たけし(小磯勝弥)に声を掛ける。
古田を演じた綾田俊樹(1950.6.13生)は撮影当時34歳(満35歳になる直前)、竹次郎を演ずる林隆三(1943.9.29~2014.6.4)より7歳年下だが、林隆三と同年輩の役を違和感なく演じている。
古田を自分の家に連れ帰ったたけしが声を掛けると、『シナリオ』は84頁下段4~13行め、
真利子、洗濯をしていたのか、手に石けんの泡/ をつけて出て来る。
真利子「どなた?」
たけし「知らない。でも、父ちゃんの友達だって。(と、/ ひざで室内に這*1い上がって)母ちゃん、お年玉く/ れっかな?」
真利子「バカ。(と、泡の手でたけしの頭を叩いて玄/ 関へ。)」
たけしの頭に泡が残る。
古田が入って来る。
と展開するのだが、TVドラマでは、雨天にしたせいか、真利子は例の造花の内職中であったことになっている。従って玄関で応対するまでに時間も掛からないので、たけしがお年玉を当てにし、それを叱ると云う件もなくなっている。
これは昨日確認した昭和30年1月1日放送の「新春放談」の映像を使用したことと同じく、実際の1月2日の天候を確認して、これに合わせて変更したのだろうか。
さて、在宅だった真利子と菊(千石規子)が応対して、真利子は「尋ね人の時間」への竹次郎の反応について自分の解釈で説明し、そして新年の寄合に出掛けている竹次郎を呼びに行く。
私が気になったのは、残った菊と古田の間に交わされた次の会話である。『シナリオ』とTVドラマは小異、まづ『シナリオ』85頁上段18行め~下段5行め、
菊 「さあさあ、古田さん、どうぞお上がりにな/ って。」
古 田「おばあちゃん、この坊やは?」
菊 「終戦の翌年*2生まれた子なんです。」【上】
古 田「へえ。あ、そう。じゃ、三番目って訳だ。ああ、/ そう。(と、ポケットに手を入れる。)」
期待するたけし。
が、古田が取り出したのはタバコである。
たけし、何となくがっかりする。
お年玉に期待する件はTVドラマでもそのままであった。TVドラマではこの場面、私は全てメモを取ったわけではないが、
古田:「おばあちゃん! この坊やは!」
菊:「聞こえてますよ」苦笑「この子はね、終戦の翌年に生まれた子なんです」
古田:「あ、そう! じゃあ! じゃあ三番目って訳だ」上がりながら「そうかぁ三番目か。へえー」
となっていて、古田が菊の耳が遠いと勝手に思い込んで、途中まで大声で喋ることになっている。
さて、「じゃあ三番目」と云うのは、1月10日付(13)に見たように、西野家の「二番目」の息子、昭和14年度生の秀二郎までは、昭和16年(1941)2月の出征時までに実際に見て知っているからである。それは良い。注意されるのはたけしの生年が昭和21年(1946)と云うことになっていることである。後述するが第12回に「二十一年の九月」と明示されている。原作者のビートたけし(1947.1.18生)と同学年である。ちなみに秀二郎のモデルである原作者の次兄・北野大(1942.5.29生)は昭和17年生なので、モデルそのままの設定であったら出征前の古田は「二番目」も知らなかったはずなのである。
それはともかく、そうすると、たけしは昭和30年1月2日の時点で満8歳、小学2年生と云うことになる。しかし既に見たように小磯勝弥(1972.5.27生)は撮影当時13歳だ。とても小学2年生には見えない。――ここで、1月8日付(11)に注意した「二組の西野君」が、何年二組なのだかが、再び問題になって来るのである。(以下続稿)