瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(14)

辺見じゅん「十六人谷」(6)自筆草稿
 今日から遠田勝及び牧野陽子の著書に取り掛かるつもりだったが、辺見じゅん「十六人谷」に関して若干、メモ程度の追加をして置きたい。
「高志の国文学館 年報」平成25年度平成26年11月25日発行・高志の国文学館・48頁)
 7~34頁「Ⅱ 事業内容」、08~26頁「1.展示活動」、10~26頁「□企画展示」の12~17頁「⑵開館一周年特別展「辺見じゅんの世界」」、会期は平成25年(2017)8月10日(土)〜11月11日(月)で、9月23日(月)まで≪前期≫「辺見じゅんが見た風土」、 9 月27日(金)からの≪後期≫「辺見じゅんが語り継ぐ父たちの世紀」、担当学芸員/綿引香織、出品点数/約370点。
 辺見氏の展示が「開館一周年特別展」となった理由は12頁左15行め~13頁「趣旨・総括」の冒頭から察せられる。16~22行め、

 当館の初代館長に就任する直前に急逝した富山県/出身の歌人・作家 辺見じゅん。当館の開館1周年に/開かれたこの展覧会は、短歌・民話・ノンフィクショ/ンと多彩な分野で活躍した彼女の文学活動の軌跡と作/品世界を紹介する初めての試みとなった。本展では会/期を2期に分け、会場の約3分の1にあたる第1章の/部分について展示替えを行った。


 高志の国文学館は平成24年(2012)7月6日開館の富山県立の文学館で、辺見じゅんの死去は前年の9月21日、丁度会期(前期)中に三回忌を迎えている。
 所謂「民話」に関連するのは前期・後期で展示替えのある第1章である。その箇所の記述も抜いて置こう。12頁右10~17行め、

 次の第1章「辺見じゅんの作品世界」は、前期と/後期に分けて展開した。前期のテーマ「辺見じゅんが/見た風土」では、日本全国や富山の自然、風土、民俗・/民話に取材したノンフィクション作品、短歌や随筆な/どをとりあげた。もともと父の影響もあって民俗学に/興味を持っていた辺見は、昭和50年頃から日本の各地/をめぐり、その土地の風土や民俗伝承などを調査する/ようになる。‥‥


 そして、右29~31・35~39行めに、

 また、彼女が自らを育んだ北陸や富山の風土をど/のようにとらえていたのかを探ったのが「ふるさとの/山河 ―父祖の血の記憶」のコーナーである。‥‥/(3行略)/‥‥。富山をはじめとする日本各地で出会った/民話と、作者辺見の人生の一場面が織り込まれた随筆/集『花子のくにの歳時記』、県内に伝わる伝説を採集/した『富山の伝説』(角川書店の『日本の伝説』シリー/ズ)を紹介し、「十六人谷」の直筆原稿などを展示した。

とあり、ここだけだと辺見氏が「伝説を採集し」て「十六人谷」を書いたかのように読めてしまう。
 15~17頁「□主な展示物  ※当館蔵資料の大部分を辺見じゅん旧蔵資料によっている。」を見るに、16頁1~3行めに、

種 別 資料(作品)名 作 者 年 代 所 蔵
書 籍 『富山の伝説』 辺見じゅん 昭和52年(1977) 当館
原 稿 「十六人谷」 辺見じゅん 富山県立図書館

とある。図録『辺見じゅんの世界』(A4判カラー62頁)には写真が掲出されているであろうか。
 「十六人谷」の直筆原稿は富山県立図書館所蔵である。そこで富山県立図書館の方で検索して見るに、

Lソウコウ-3-013 貴
辺見じゅん・自筆草稿]
辺見じゅん/稿 私製 [作製年不明] 200字原稿用紙(ペン書)14枚 26*18cm
作品名:16人谷 形態:草稿バインダー(3)収納

がヒットした。しかし「16人谷」はないだろう。自筆草稿はこれしかヒットしないから、特に「十六人谷」だけが収蔵されようにも見えるが、「草稿バインダー(3)」には他の作品も収納されていて、特に「十六人谷」を取り上げたらしくも思われる。
 確かに、辺見氏には特に「十六人谷」に思い入れがあったらしい。
 晩年の現代短歌文庫69『辺見じゅん歌集』2008年10月10日 初版発行・砂子屋書房・151頁)に、越中を詠んだ作品として「神通川(4首)」と「十六人谷(14首)」が収録されている。

 尤もこれは過去の歌集『水祭りの桟橋』『闇の祝祭』『幻花』の3冊を全篇再録したものらしいから、晩年の作ではなさそうだ。 近いうちに閲覧の機会を得て、14首の連作の内容と、作歌の時期を確認しようと思っている。(以下続稿)