瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(15)

辺見じゅん「十六人谷」(7)
 白馬岳の雪女に関連する話題として、しばらく白馬岳の雪女そっちのけで「十六人谷」を取り上げて来た。
 ここで一応の纏めをして置くと、辺見じゅん「十六人谷」は、白馬岳――黒薙川の柳又谷の源流部――の「雪女」を抱き合わせ、禁忌から解放が「雪女」とは違って恋愛の成就――恍惚裡の死へと主人公を導く。気になるのは「言うな」の禁忌を最後の最後まで守っていたのに、どうして弥助の体験が世間に広まったのか、である。一方「まんが日本昔ばなし」は「言うな」の禁忌を設定していない。だから話したから殺された訳ではないようだ。そのため、随分気の長い復讐劇のようになってしまっている。山刀の呪力を強調して置きながら、山刀を置いて逃げ出していることも気になる。
 弥助は「その後も山に入り続けてい」た、と8月6日付(10)に述べたが、辺見版の弥助はそうだとして「まんが日本昔ばなし」の方がそうしていたかは、分からない。ただ、少年にしか見えない弥助が「猿や狸を70匹獲った」とは思えないので、その後のことだろうと思ったのである。しかし、何の保証もないのに山に入り続けるとは思えない。普通は8月3日付(07)に見た、「十六人谷」伝説の原型である『肯搆泉達録』巻之十四ノ3「黒部山中事」に見える類話のように「是より杣をやめたるとなり」――山に入る仕事からは身を引くことになるのではなかろうか。
 とにかく、いろいろと寄せ集め、曖昧にしたことが却って恐怖を高めているようである。すなわち、怪異談と云うより怪異小説、作り事と見做すべきであろう。

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 8月10日付(14)に取り上げた「高志の国文学館 年報」の、他の年度のものにも「十六人谷」についての記載があった。
・「高志の国文学館 年報」平成27年(平成29年1月13日発行・高志の国文学館・44頁)
 5~30頁「Ⅱ 事業内容」、19頁「2.資料概況」の「□主な新収資料」の「購入」の中に「平井千香子|装画「十六人谷」」とある。平井千香子(1972生)は富山県中新川郡上市町出身の日本画家、オフィシャルサイトには「雪女」や「八尾比丘尼」といった*1越中の伝説に基づくらしい作品が掲出されている。
 この作品だが、06~18頁「1.展示活動」の16~18頁「□ギャラリー展示」の16頁2行め~17頁10行め「⑴ギャラリー展「豊かなイマジネーション 妖怪がひそむ富山の民話」」に関連して描き下ろされたものらしい。会期は平成27年(2015)5月20日(水)〜7月6日(月)、担当/守内紀子。
 16頁右6~11行めに、

 代表作に『百鬼夜行抄』がある富山県出身の漫画家、/今市子氏、歌の文芸誌『弦』の表紙を担当する県内在/住の日本画家、平井千香子氏の富山の民話にまつわる/描き下ろし作品や、県内在住の美術作家、清河北斗氏/の富山の民話にまつわる造形作品を展示し、富山の自/然から生まれた民話世界を考えるきっかけとしました。

とあって、平井氏と清河北斗(1974生)は「特別協力」と云うことになっている。
 さて、どんな絵なのか、気になるところだけれども、高志の国文学館HPなどに掲出されていないので分からない。(以下続稿)

*1:八百比丘尼」でないところに主張があるのかどうかは不明。