瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

日本児童ペンクラブ『日本伝説傑作選』(2)

 昨日の続き。
 内容は大きく2つの章に分けられている。
 7頁(頁付なし)「怨霊と怪奇の世界」の章の扉。
 9頁(頁付なし)1節め「怨 霊 伝 説」の扉。章・節の扉ともに上部中央に明朝体縦組み、節の方はやや小さく、章の方は太字。
 10頁、3字下げ3行取りで1話めの題。仮に番号を打って置く。
【1】「亡 魂 の 仇 討」10~17頁3行め (長野・中山光義)
 最後の行は下詰めでやや小さく伝承地と執筆者名を添えている。2行分空けて次の話の題。
【2】「二 人 の お 菊」17頁4行め~25頁6行め (兵庫・東京・中山光義)
【3】「亡 鬼 菅 原 道 真」25頁7行め~34頁11行め (京都・東京・中山光義)
【4】「執 念 の 首」34頁12行め~38頁4行め (宮城・寺島邦尾)
 39頁(頁付なし)2節め「怪 奇 伝 説」の扉。
【5】「美 人 画 の 精」40~46頁5行め (静岡・中山光義)
【6】「人 形 の 恋」46頁6行め~50頁17行め (京都・中山光義)
【7】「算 盤 の 大 入 道」51~55頁17行め (大阪・中山光義)
【8】「島 に 化 け た 魚」56~60頁9行め (千葉・中山光義)
【9】「旅 僧 の 哀 願」60頁10行め~65頁9行め (福島・中山光義)
 67頁(頁付なし)3節め「妖 怪 伝 説」の扉。
【10】「ハ タ ヤ の ヌ エ」68~81頁16行め (岩手・遠野地方・平野 直)
【11】「天 狗 の 片 羽 根」82~88頁9行め (三重・中島真二)
 89頁(頁付なし)4節め「魔 性 伝 説」の扉。
【12】「津軽の雪めらし」90~98頁8行め (青森津軽地方・平野 直)
【13】「白 馬 の 雪 女」98頁10行め~103頁6行め (長野・中山光義)
【14】「鬼 徳 と 天 神」103頁7行め~113頁11行め (北海道神居古潭・平野 直)
【15】「立 烏 帽 子」113頁12行め~119頁15行め (三重・中島真二)
【16】「上の口と下の口」120~124頁7行め (沖繩・永山絹枝)
 125頁(頁付なし)2章め「失われたものへの愛」の扉。
 127頁(頁付なし)1節め「悲 話 伝 説」の扉。
【17】「カルルスの雪」128~137頁6行め (北海道登別カルルス地方・平野 直)
【18】「かわごが淵と小太郎淵」137頁7行め~141頁6行め (群馬・宮下全司)
【19】「錦  木  塚」141頁7行め~148頁3行め (秋田・平野 直)
【20】「マリモと芦笛」148頁4行め~152頁15行め (三浦清史)
【21】「黒 百 合 の 花」153~159頁3行め (石川・中山光義)
【22】「壺の碑とスミレ草*1」159頁4行め~168頁16行め (青森千曳・平野 直)
【23】「哀 花 鷺 草」169~173頁11行め (東京・石井作平)
【24】「岩になったアイヌ娘」173頁12行め~178頁14行め (北海道積丹半島・三浦清史)
【25】「善知鳥と椿山*2」179~186頁17行め (青森・平野 直)
【26】「仙  の  前」187~192頁16行め (和歌山・和田 寛)
 193頁(頁付なし)2節め「英 雄 伝 説」の扉。
【27】「め く ら 景 清」194~200頁16行め (『讃岐国名勝図会』『狂言盲景清』その他・二反長半)
【28】「為 朝 の 強 弓」201~209頁11行め (椿説弓張月・其他・新井忠一)
【29】「鎌倉権五郎の目玉」209頁12行め~213頁15行め (後三年合戦絵詞・奥羽軍記・新井忠一)
【30】「太田の呑竜上人」214~219頁17行め (群馬・おの・ちゅうこう)
【31】「松本城うらみの天主閣」220~225頁12行め (原話「貞享義民伝」・新井忠一)
 執筆者の50音順。
新井忠一【28】【29】【31】
石井作平(1930~1987)【23】
おのちゅうこう(1908.2.2~1990.6.25)【30】
寺島邦尾(1928生)【4】
中島真二【11】【15】
永山絹枝【16】
中山光義【1】【2】【3】【5】【6】【7】【8】【9】【13】【21】
二反長半【27】
平野直(1902.3.28~1986.4.23)【10】【12】【14】【17】【19】【22】【25】
三浦清史(1929生)【20】【24】
宮下全司【18】
和田寛(1935~2015.1.31)【26】
 編集委員4氏のうち執筆しているのは中山氏のみ、しかし10篇で約1/3に当たる。
 場所は以下の通り。
  北海道神居古潭【14】
  北海道積丹半島【24】
  北海道登別カルルス地方【17】
  青森【25】
  青森津軽地方【12】
  青森千曳【22】
  岩手・遠野地方【10】
  秋田【19】
  宮城【4】
  福島【9】
  群馬【18】【30】
  千葉【8】
  東京【2】【3】【23】
  長野【1】【13】
  静岡【5】
  石川【21】
  三重【11】【15】
  京都【3】【6】
  大阪【7】
  和歌山【26】
  兵庫【2】
  沖繩【16】
 この他【20】は「北海道阿寒湖」とでもすべきだと思うのだが地名を示さない。それにしても、中国・四国・九州の話が1話もないのはどうしたことだろう。
 それから「英雄伝説」の節のみ、何故か地名ではなく参考にした資料を挙げる。これが二反長半「刊行のことば」にあった「古典説話への研究を広げた」の実践例なのだろうか。
  『讃岐国名勝図会』『狂言盲景清』その他【27】
  椿説弓張月・其他【28】
  後三年合戦絵詞・奥羽軍記【29】
  原話「貞享義民伝」【31】
 本文だが「成人向け」の再話とでも云うべきもので、松谷みよ子の再話どころでなく会話などで膨らませて読物めかしている。和歌森氏と云う当代一流の民俗学者の解説があっても、実態は伝説を題材にした通俗読物と云ったもので、とてもでないが「口碑あるいは古い伝説として記録されたもの」として扱うことの出来るようなものではない。(以下続稿)

*1:ルビ「いしぶみ」。

*2:ルビ「う と う 」。