瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

赤いマント(280)

五木寛之の赤マント(8)
 10月11日付(276)に引いた、昭和58年(1983)刊『七人の作家たち』の岡庭昇・高橋敏夫「編者解説」に「この間のことは、小説にも出てきますが」とあるように、五木氏は小説やエッセイに、朝鮮時代のことを繰り返し書いているらしい。
 きちんとした根拠に基づいて書いているのであれば、複数の記述があってもそのうち1つを選んで紹介すれば良かったのである。しかし、記憶は曖昧で、記録も、ない訳でもないらしいのだけれども、詳細に及んだものではないようなのである。
 それで、その後気を付けて何冊かのエッセイ集を眺めてみたのだが、京城の小学校について、特に詳しい記述は見当たらなかった。
 そんな中、先日、1ヶ月半ぶりに出掛けた某市立図書館で五木氏の本を幾つか手にしているうち、この辺りのことを少々詳しく『わが人生の歌がたり』以前にNHKラジオ深夜便」で語ったのを活字化した本に逢着した。
五木寛之『人生の目的』平成十一年十一月十一日 第一刷発行・平成十二年 一 月十五日 第六刷発行・定価1429円・幻冬舎・279頁・四六判上製本

人生の目的

人生の目的

人生の目的 (幻冬舎文庫)

人生の目的 (幻冬舎文庫)

人生の目的 (幻冬舎新書)

人生の目的 (幻冬舎新書)

  • 作者:五木寛之
  • 発売日: 2019/03/14
  • メディア: 新書
 文庫版と新書版は未見。
 大理石風のエンボス加工をした見返し(遊紙)、クリーム色の扉、1~10頁(頁付なし)「目次」、11頁(頁付なし)「なぜいま人生の目的か」の扉、裏は白紙。
13頁から本文で冒頭、4行取り1字下げ、やや大きいゴシック体で節の見出し。1頁15行、1行40字。この1章めは16節、70頁まで。2章め「肉親について」71~96頁、9節。3章め「金銭について」97~125頁、9節。4章め「信仰について」127~149頁、8節。
 151頁(頁付なし)5章め「わが人生の絆*1」は裏、152頁(頁付なし)下部中央に縦組みでやや小さく、

トークエッセイ――NHKラジオ深夜便より―― 〉
日本音楽著作権協会(出)許諾第9913460 ⁃ 906号

とある。153頁(頁付なし)は「こころの絆*2」の扉で裏は白紙。155頁冒頭5行分空白。156頁4行めまで前置きで、156頁5行め、4行取り1字下げ、やや大きいゴシック体で項の見出し。この節12項、196頁まで。2節め「学校の絆*3」197~231頁、9項。3節め「青春の絆*4」233~253頁、4項。4節め「人間の絆*5」255~273頁、6項。
 274~279頁「あとがきにかえて」末尾(279頁3行め)に下寄せで「横浜にて   五木寛之」とある。その裏が奥付。
 初出は示されていない。5章めのみ扉の裏に「NHKラジオ深夜便より」とあって放送原稿もしくは文字起こししたものを加筆修正して収録したらしく思われるが、4章めまでの初出は「あとがきにかえて」の最後の1段(278頁11行め~279頁2行め)の謝辞に、278頁12~13行め「‥‥。NHKのラジオ制作のスタッフにも大変お世話になったし、『日刊ゲンダ/イ』編集部にもお礼を申し上げたい。また幻冬舎の‥‥」とあって、五木氏は「日刊ゲンダイ」に昭和50年(1975)10月から「流されゆく日々」と云うエッセイを長期連載している*6から、その一部を纏めたものと思われるのだけれども、明示されていない。
 小学校について、これまでに見た本にない記述が見えるのは、5章めの1節め「人生の絆」と2節め「学校の絆」であるが、長くなるので次回に回そう。今回は、前半の各章に見える、朝鮮時代関連の記述を指摘して置く。
 2章め2節め、76~79頁7行め「これからは手に職をつけるのがいちばんだ」の節に、敗戦頃までの父親の経歴が略述されている。
 3章め1節め、99~101頁4行め「五十一円から八十円への人生」の節は、同じく敗戦頃までの父親の俸給を章題である「金銭について」振り返っている。ここで注意されるのは、100頁1~7行め、

 父親の履歴書を見ると、大正十五年(一九二六)に九州の小学校教師としてスタートし/ている。いまでいうノンキャリアの人生の出発点だ。当時の月給が、〈八級上俸〉とあっ/て、五十一円である。平壌で敗戦を迎えた昭和二十年(一九四五)のころには〈三級俸〉/までたどりついているが、それでもしれたものだろう。
 私の小学生時代の記憶に、母親が、
「お父さんの月給が八十円になったのよ」
 と、うれしそうに言ったときのことが残っている。

との記述で、父親の「履歴書」があるならば、もう少し時期や場所などはっきりさせられるのではないか、と思うのだけれども。(以下続稿)

*1:ルビ「きずな」。

*2:ルビ「きずな」。

*3:ルビ「きずな」。

*4:ルビ「きずな」。

*5:ルビ「きずな」。

*6:「Daily Chronicle」の副題の通り毎号掲載されており、「日刊ゲンダイDIGITAL」に拠れば10月17日掲載分が「連載10993回」であった。【10月20日追記】10月13日掲載分も「連載10993回 時代の秋がやってきた <1>」である。通常 17:00 に公開されているのに10月17日は 0:00 に公開されているから、イレギュラーな、修正・訂正であったものか。――無料会員は月に5本、会員限定記事を読めるのだが、もう今月分を読み切ってしまったので、13日分と17日分が、書き出し以外にどう違うのか、俄に確認出来ない。