瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

日本児童ペンクラブ『日本伝説傑作選』(1)

和歌森太郎・二反長半 共編『日本伝説傑作選』昭和四十九年三月三十日 初版第一刷発行・定価1200円・第三文明社・235頁・四六判上製本

 一昨年に都内2つの区立図書館で借りた。今手許にあるものはカバーがない。現在、通っていない別の区の蔵書には、帯は外されているが書影に示したカバーが掛かっていた。しかし今検索して見ると、こちらの区の蔵書は除籍されてしまったらしくヒットしない。従ってカバーについては記述出来ない。
 見返し(遊紙)は茶色、和紙風のエンボスの厚紙の扉は小口(左)から 2.0cm のところを縦に帯状(幅 1.9cm)に朱色にして、その最上部から中央まで明朝体で大きく標題、下部に縦長のゴシック体で「〈和歌森太郎/二反長 半 〉 共編」最下部にゴシック体で小さく横並びに版元名。標題の右に朱の円(径 5.4cm)があって、カバー表紙の同じ辺りにあった牛頭(?)の顔が示されている。
 1~2頁「刊行のことば」は、最後に下寄せで2頁8~9行め「日本児童ペンクラブ・民間文芸特別委員会   会長 二 反 長 半 」とある。1頁4~12行め、

‥‥、古来の人間の生き方、考え方を知る重要なカギのひとつが民間文芸である。本会/で、民間文芸特別委員会を設け、広く各地の自治体、一般、その他に働きかけ、大規模なそれの収/集に踏み切ったのはそのためである。古典説話へも研究を広げた。
 反響は大きくて、尨大な資料となった。それを分類し、その中の成人向けとして現代の社会人に/ぜひ読んでほしいものを集めて、先ず伝説・昔話の二本とした。伝説、昔話の成立構成、その他に/ついては、本会相談役である歴史学者民俗学者和歌森太郎氏による解説が詳しいからそれによ/って知っていただきたい。
 民間文芸特別委員会では、なお続々と集まってくる資料を有効に分析し、新らしい民間文芸学を/樹立するとともに、この二本に続き、続編ともいうべきものを刊行する計画である。


 この「尨大な資料」はどうなったのであろうか。それこそ1970年代の民話ブームの下、自治体や一般人が昔話や伝説についてどのような意識を持ち、どのように扱っていたかを見る良い材料になると思うのだけれども。
 和歌森太郎(1915.6.13~1977.4.7)は巻末、226~235頁に「伝説・昔話考」を寄稿している。冒頭226頁3~4行め、

 児童ペンクラブの会員が、並々ならぬ努力をもって掘りおこした伝説や昔話の傑作ともいうべき/ものを、ここに選出集成した。

とあるところからして、和歌森氏は「傑作選」の選定には関わっていないようだ。二反長氏の「刊行のことば」からしても、日本児童ペンクラブの相談役として解説執筆を引き受けた、と云ったところで、それを編者として名前を出したのは、辞書に於ける金田一京助新村出みたいなもので、当時東京教育大学文学部教授で著書も多く高名な学者であった和歌森氏の名前を活用したまでであろう。実態に即せば「日本児童ペンクラブ 編」にするべきだったと思う。
 3~5頁(頁付なし)「目 次」、最後(5頁8行め)に下寄せで「装幀・版画 原田維夫」。
 6頁(頁付なし)は下部中央に横組みで「編集責任者/ 和歌森太郎/二反長 半/編集委員/阿坂卯一郎/角山 勝義/中山 光義/平方 久直」とある。編集委員は主として児童劇・学校劇の劇作家であった阿坂卯一郎、角山勝義(1911.1~1982)、中山光義(1908~?)、平方久直(1904~?)は児童文学作家、平方氏は平方浩介(1936生)の父。どうも、平成初年に歿した人の情報がネット上には殆どないので困る。
 二反長半(1907.11.20~1977.7.5)は日本児童ペンクラブ初代会長(1971~1977)で、創価学会員ではなかったが第2代会長となった戸田城聖(1900.2.11~1958.4.2)と懇意であったところから『若き池田大作』と云う著書があり、そこで会で編集した本書が創価学会系の第三文明社から刊行されることになったのであろう。(以下続稿)