瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

反町茂雄『一古書肆の思い出』(2)

 本書の版元は平凡社で、まづ四六判上製本で、次いで平凡社ライブラリー(ライブラリー判・並製本)で再刊された。
・『一古書肆の思い出1 修業時代』一九八六年 一 月十四日 初版第一刷発行・定価 三〇〇〇円・ⅳ+目次+401+12頁

平凡社ライブラリー 244『一古書肆の思い出 1 修業時代1998年5月15日 初版第1刷・定価1,300円・429頁 上製本の書影は函で、公立図書館蔵書は函を保存しないので私は見ていない。
 上製本のアート紙口絵は「著者近影(昭和六十年撮影)」で平凡社ライブラリー版にはない。上製本は続いてローマ数字の頁付で「御 あ い さ つ」は1頁13行、1行40字で、1頁16行・1行45字の本文に比べて随分ゆったり組んでいたが、平凡社ライブラリー版は5~12頁(頁付なし)「目次」の次、13~15頁に1頁16行、1行42字の本文と同じ組み方で収めている。上製本は「御あいさつ」の次に「目次」が扉込みで8頁(頁付なし)ある。
 上製本399~401頁(平凡社ライブラリー版415~418頁1行め)「おわりに」に、本書の由来と全巻の予定構成が説明されている。399頁2~10行め(平凡社ライブラリー版415頁2~11行め)、改行位置は前者「/」後者「|」。

 この本は、筆者の執筆の都合で、毎月四百字詰め二十五枚ずつを、昭和五十七年九月から、美|術雑誌/『目の眼』(新宿区新宿、里文出版発行)に連載したものを、まとめたものです。まとめる|に際して、若干/の補正を加えました。今後続刊のものも、当分は、同じ方式をとる予定でござ|います。
『一古書肆の思い出』は、左の四巻から成る心算*1であります。
 第一巻 修 業 時 代
 明治三十年代から、昭和八年ころまで。昭和二年四月から七年九月までの、古書店での住込|み小僧/時代の、一所懸命の修業の記事が主。
 第二巻 賈(かいひと)を待つ者
 昭和九年ころから、二十年末ころまで。‥‥


 平凡社ライブラリーは1行分空けて418頁2~3行めに2字下げで、

第一巻刊行時点での筆者の予定は右のようなものでしたが、第三巻の原稿が大部に及んだ/ため、同巻以降、左記のように変更になりました。HL版も同様の巻構成となっています。

として、1行分空けて345の副題と時期を列挙、7行め下詰めでやや小さく(編集部)。但し第二巻も実際には敗戦までだから既にしてズレが生じている。
・『一古書肆の思い出2 賈を待つ者』一九八六年十二月 十 日 初版第一刷発行・定価二五〇〇円・口絵+目次+449+20頁
平凡社ライブラリー 255『一古書肆の思い出 2 (かいひと)を待つ者1998年7月15日 初版第1刷・定価1,300円・467頁

 上製本は扉の次にアート紙口絵「書斎にて(昭和五十九年六月撮影)」、 上製本は扉の次にアート紙口絵「書斎にて(昭和五十九年六月撮影)」、ついで「目次」9頁(頁付なし)、1頁(頁付なし)中扉、と云う順だが、平凡社ライブラリー版は1頁(頁付なし)扉、3頁(頁付なし)扉、5~14頁(頁付なし)「目次」。
 上製本447~449頁(平凡社ライブラリー版448~450頁)「メモに代えて」は449頁5行め(450頁6行め)「昭和六十一年十一月」付。冒頭447頁2~6行め(448頁2~7行め)、

 この本は、第一巻につづいて、美術鑑賞の月刊誌『目の眼』(東京、里文出版発行)の昭和六|十年一/月号から昭和六十一年一月号までに連載した分(連載第二十三回から第四十五回まで)に、|若干訂正加筆/したもの。内容は殆ど同じですが、連載第四十五回のに限って、編集の都合で第|四十五・四十六・四/十七回と、三回に分載すべき内容のものを、その一回の内に要約して記し|てあります。
 ここで、私事の喜慶を、メモ変わりに書き記します事を、みなさま、どうぞお許し下さい。*2


 以下、第一巻の部数が一万部を超えたこと、多くの新聞・雑誌に好意的・推奨的な書評が載ったこと、そして448頁13~16行め(449頁13~16行め)、

 読者から、発行元の平凡社へ届いたハガキは三百八枚。「面白かった」「良い本だ」「一気に|読んだ」/という御感想が殆ど全部だったのは、ありがたい事でした。ただし、八十二人のお方|から、定価が高/いというお叱言*3を頂いたのには恐縮。早速発行元へお願いをして、諸雑費を切|りつめて、第二巻は二/割ほど引き下げてもらいました。【448(449)】

と、第一巻よりも頁数が増えているのに定価が下がっている事情を説明する。最後に449頁2~4行め(450頁2~5行め)「‥‥。続く第三巻|は「古典籍の/奔流横溢」の巻、昭和の大移動史のクライマックス、『思い出』の正念場です。|御批評を参考にしな/がら、老身衰意を鞭打ち励まして筆を進め、六十二年末に刊行の心算*4でご|ざいます。」と計画を述べるが、3ヶ月程遅れて刊行された。
・『一古書肆の思い出3 古典籍の奔流横溢』一九八八年 三 月十七日 初版第一刷発行・定価二五〇〇円・口絵・ⅳ+目次+480+26頁
平凡社ライブラリー 263『一古書肆の思い出 3 古典籍の奔流横溢1998年9月15日 初版第1刷・定価1,300円・510頁

 上製本は扉の次にカラー口絵「重要文化財 金光明最勝王経音義 承暦三年古写本」、続く「首 に*5」は第一巻「御あいさつ」と同じ組み方でローマ数字の頁付でⅳ頁、そして「目次」8頁(頁付なし)。平凡社ライブラリー版は5~13頁(頁付なし)「目次」の次、15~17頁「首に*6」は本文と同じ組み方。
 「首に」はⅳ頁1行め(17頁6行め)「昭和六十三年一月三日」付、冒頭ⅰ頁2~3行め(15頁2~3行め*7)「 『思い出』全巻の中心である第三巻が、ようやく出来上がりました。予定よりは三、四ヶ/月|遅れました。‥‥」とある。「目の眼」については触れていない。2段落めを見て置こう。ⅰ頁8行め~ⅱ頁2行め(15頁7~12行め)、

 次ぎに、この第三巻、即ち「古典籍の奔流横溢*8」の巻と、第四巻の「賑わいは夢の如く」*9/の|間に、新たに「激流に棹さして*10」の一冊を増入して、『一古書肆の思い出』を全五巻に/改めま|す事について御諒解を得たく存じます。一昨年一月にこの『思い出』第一巻を版行/致します時|には、第二巻には昭和二十年までを、第三巻には終戦時から昭和四十年までの/【ⅰ】記事を収載する|予定で、第三巻だけは他巻よりは若干厚く、本文六〇〇ページ*11ほどにまと/める心算*12で|した。これがとんでもない誤算でした。


 そして3段落めで本書執筆の目的を説明すると共に見込み違いについて詫びている。前半を抜いて置こう。ⅱ頁3~8行め(15頁13行め~16頁5行め)、

 元来、『思い出』の中心題目は、昭和時代をこの国開闢 *13以来の貴重古典籍の大移動期と/規定|【15】して、その実相を自ら見聞し、又実践したままに記述するにありました。大移動を引/き起こし|た震源は、太平洋戦争の開始・敗北、進駐軍の手による日本の政治及び経済の徹/底的な改革に|あります。大揺れに揺れた期間は、二十年後半から二十五年の半ば頃までの/約五年間。重大な|事件が非常に多い。移動は最も激しく且つ広汎にわたりました。二十六/年ころから四十年ころ|までは大小の余震が頻発*14しました。‥‥


 4段落め、ⅲ頁3~10行め(16頁12行め~17頁2行め)に本巻と続刊の予定を述べている。これも前半を抜いて置こう。

 この第三巻の内容は、二十年八月以降二十三年の末まで、万丈の波瀾の発端から、最高/潮に|達したまでの記事。わずか三年半ながら大変動期の核心です。その心して、いくらか/ 詳 *15かに|記しつつあるうちに、五〇〇ページの全巻が満ちてしまいました。第四巻は、多/分モ少し要を|摘*16んで、二十四年から四十年までの動乱を記すことになりましょう。第五巻/は残りの二十年間。|平和な日本の産業・経済・社会の躍動時題に当たります。‥‥


 ここで第一巻「おわりに」から、当初予定されていた第三巻と第四巻の時期を確認して置きたい。前者は400頁4~13行め(416頁4~14行め)、後者は400頁14行め~401頁12行め(416頁15行め~417頁14行め)にその大略が説明されているが、400頁4~5行め、

 第三巻 古典籍の奔流横溢
 昭和二十一年ころから、四十年ころまで。良質の古典籍の市場大氾濫時代。‥‥

とあり、400頁14~15行め、

 第四巻 賑わいは夢の如く
 四十年ころから、六十年ころまで。‥‥

とあった、第三巻を2冊に分けることにした訳である。
・『一古書肆の思い出4 激流に棹さして』一九八九年 八 月二十五日 初版第一刷発行・口絵+ⅳ+目次+522+34頁

平凡社ライブラリー 271『一古書肆の思い出 4 激流に棹さして1998年11月15日 初版第1刷・定価1,500円・551頁 上製本は扉の次にカラーの折図の口絵「太 政 官 符 宝亀三年正月十三日 大伴家持の自筆署名あり」、続く「第四巻の首 に*17」は第一巻「御あいさつ」と同じ組み方でローマ数字の頁付でⅳ頁、そして「目次」9頁(頁付なし)。平凡社ライブラリー版は5~14頁(頁付なし)「目次」の次、15~18頁「首に*18」は本文と同じ組み方。
 「(第四巻の)首に」はⅳ頁10行め(18頁2行め)「平成元年六月」付、冒頭ⅰ頁2~8行め(15頁2~8行め)、

 第三巻の発刊以後一年二ヶ月にして、ようやく第四巻を書き了えました。またも予定よ/り|数ヶ月遅延しました事を、読者諸兄におわび致します。老駑*19に鞭うち、業余の閑を盗ん/での、|精一ッ杯の営みなのでございます。どうぞ御許容下さいませ。
 この巻には昭和二十四年一月から二十六年十二月まで、三年間の思い出を記しました。/昨年|初めの予定では、昭和四十年までを収める予定でしたが、それがこの程度に止まりま/した事は、|大きな見込み違いでございます。 予 *20めの調査の不十分を露呈するもので、恥/じ入るばかりであ|ります。

とあって、確かに詳細に及んでいるのは有難いのだが、519~522頁「思いつくまゝに」平凡社ライブラリー版520~523頁「思いつくままに」に、読者カードに老齢だから健康に気を付けるように、という忠告が多いことに触れて、520頁3~4行め(521頁2~3行め)「今のところ元気に仕事|に励ん/で居ります。」と応えていたのだが、最後まで書き上げることも、次の巻を完成させることも出来なかったのである。この後記に当たる文章は「首に」に同じ時期、522頁6行め(523頁8行め)「平成元年六月」付で書かれている。
 さて、とても残り1巻に予定されていた分量が収まるとはとても思えないのだが、第三巻と違って本巻では編成の変更について触れるところがない。
 そして未完のまま遺稿が最終巻として刊行されることになるのだが、これについては明日取り上げることとしよう。(以下続稿)

*1:ルビ「つ も り」。

*2:「私事」は右に寄せる。平凡社ライブラリー版は若干小さくする程度で、他の( )で括ったところと同じ大きさ。

*3:ルビ「こ ごと」。

*4:ルビ「つ も り」。

*5:ルビ「はじめ」。

*6:ルビ「はじめ」。

*7:読点全角。

*8:ルビ「おういつ」。

*9:ルビ「にぎ」。なお、平凡社ライブラリー版は鉤括弧全角。

*10:ルビ「さお」。

*11:平凡社ライブラリー版はここに「(原本)」を挿入。しかし要らなかったろう。

*12:ルビ「つ も り」。

*13:ルビ「かいびやく」。

*14:ルビ「ひんぱつ」。

*15:ルビ「つまびら」。

*16:ルビ「つ 」。

*17:ルビ「はじめ」。

*18:ルビ「はじめ」。

*19:ルビ「ど 」。

*20:ルビ「あらかじ」。平凡社ライブラリー版は前後にルビに合わせた余白を作らない。