瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

平井呈一訳『吸血鬼カーミラ』(1)

 私は怪談は好きだけれども、怪異小説はあまり好きではない。怪談に比して語り口が冗長だったり、妙にどぎつかったり、読んでいるうちに興醒めしてきて、続かなくなる。怪談にしてもくどい話し方は好きではない。それはそうと、怪異小説では、因果関係が説明されているとそれが無理苦理説明したように感じられて冷めるし、説明がないと「じゃあなんなんだ」という気分にさせられる。じゃあ怪異小説なぞ読むな、と言われそうだが、言われなくてもあまり読んでいなかった。このブログでは「怪異小説」というタグを附けているけれども、純然たる創作ではなく、何かしら下敷きになる怪異談があって、それをどう転化したか、という興味で、不純物の選り分けみたいな風で、やっている。甚だ宜しくない読み方である。
 そこからすると、レ・ファニュ/平井呈一訳『吸血鬼カーミラ創元推理文庫)』(1970年4月10日初版・2007年12月21日42版・定価660円・東京創元社・386頁)などは、まず読もうと思わない範疇に属するのだけれども、読んでみたのは『ガラスの仮面』のせいである。『ガラスの仮面』のことは、別に書く。

吸血鬼カーミラ (創元推理文庫 506-1)

吸血鬼カーミラ (創元推理文庫 506-1)

 それで1冊全部読んだのだが、正直似たようなパターンが多く、――85〜138頁「大地主トビーの遺言 Squire Toby's Will.」139〜201頁「仇魔 The Watcher, or The Familiar.」203〜254頁「判事ハーボットル氏 Mr. Justice Harbottle.」が、人に知られざる悪事を為した男が、自分の計略の犠牲になって死んだ男の化身につきまとわれ、そして十分注意していたにもかかわらず、一瞬の隙を衝かれて恐ろしい最期を迎える、という型――この辺りを読んでいるときは苦痛だった。
 初めの方、9〜22頁「白い手の怪 Narrative of the Ghost of a hand.」23〜52頁「墓掘りクルックの死 The Dead Sexton.」53〜83頁「シャルケン画伯 Schalken the Painter.」は良かった。表題作255〜372頁「吸血鬼カーミラ Carmilla.」は面白かった。が、邦題に「吸血鬼」を入れているのはネタバレだろう。
 作者の略伝と個々の作品の解説・原題と発表年などは平井呈一「解説」(373〜386頁)にまとめられている。
 書影に示したカバーは近年の改装らしく、Amazon詳細ページには別のカバー表紙の画像も上がっている*1。但し中身は初版以来変更ないらしく、1頁19行、1行43字で字がぎっしり詰まっている。解説のみ1頁18行。
 初版以来37年・42版を重ねるうちに、誤植の修正なども行われただろうと思うのだが、それでも若干可笑しなところがある。以下に列挙してみよう。(以下続稿)

*1:【2月4日追記】改装前のカバーをかけた本を見た。1985年2月1日22版。但し折返しが切除されており、カバー装画の担当者などは読めない。カバー裏表紙は中央部に朱色で「創元推理文庫」のロゴがあり、下部に1行でISBNコードがあるがこれは42版に同じで「定価480円」に関連する箇所が異なるのみ。カバー背表紙は22版は黒字に白抜きだったのが42版では淡い灰色地に黒い文字は入る。下部は分類表貼付のため見えないところがあるため記述を略す。奥付はほぼ同じだが、22版には「訳者紹介」の最後に「。1976年没。」がない。また42版では郵便番号、電話番号、振替番号が変わっており、最後にISBNコードが加わっている。【2019年12月1日追記】46版(1970年4月10日 初版・2017年1月13日 46版・定価800円)を見た。カバー表紙は42版に同じ。但し42版を借りた図書館は現在利用資格がないので、余所で別の版と比較出来ればメモして置きたい。