瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小泉八雲『骨董』(2)

 2011年6月25日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(14)」に書影を貼って置いた、紀田順一郎東雅夫編『日本怪奇小説傑作集1(創元推理文庫)』(2005年7月15日初版・2005年8月26日再版・定価1,100円・東京創元社・489頁*1)にも小泉八雲の作品は採られている。
 13頁(頁付なし)扉、14頁に紀田順一郎小泉八雲東雅夫平井呈一」の紹介。後者の最後に「本書の底本には、昭和十五年(一九四〇)刊の岩波文庫版『骨董』を用いた。」とある。15〜20頁が本文。1頁17行、1行40字。
 東氏の「解説」については2011年6月25日付にも触れたが、このとき引用したところの少し前(478頁)に、次のようにある。

 なお、平井訳の『骨董』は、戦前の岩波文庫版と戦後の恒文社版〈全訳小泉八雲作品/集〉所収のものとでは、訳文に大きな異同が認められます(タイトル表記も現行では「茶/わんのなか」に変更されています)。今回の復刻に際しては、あえて戦前の岩波版を底本/としました。平井が一時期、親しく師事した永井荷風が、フランス語訳本を参照して朱正/をほどこしたという旧訳の歴史的意義と古雅な文体の持ち味は、このまま埋もれさせるに/忍びないと考えたためです。


 6月18日付(1)に挙げた岩波文庫を見るに、「茶碗の中」はこっちでも15〜20頁に収録されているが、東氏の記述は191〜201頁の「解説」の最後に、

 最後に、本稿もまた既刊『怪談』と同じく、永井荷風先生の朱正を經たものである。茲に先生/の御厚志を深く謝しつゝ解説の筆を擱く。昭和たつのとし十月房陽の客舍に譯者しるす。

とあるのに当たる訳なのだが、ここには「フランス語訳本を参照して」が見当たらない。「既刊『怪談』と同じく」を手懸かりに、岩波文庫2513―2514『怪談』(昭和十五年十月十日第一刷發行・昭和二十五年十一月十五日第六刷發行・定價六拾圓・183頁)175〜183頁「解説」を参照するに、183頁1〜2頁に次のように見えている。

 最後に、拙譯は永井荷風先生に請うて、その朱正を仰いだものである。先生は佛譯本と對校せ/られて、一々斧正の勞をとつて下さつた。茲に記して永く御厚意を銘記する次第である。


 次いで「昭和庚辰新秋」付で「譯者しるす」と締め括っている。

*1:当時参照したのは2005年11月11日4版だった。