・角川文庫294(5)主要参考文献
引続き、昭和43年(1968)の改版(②)と、昭和末か平成初年の改版(③)を比較してみる。
前回取り上げたところまでは、②と③で組み方以上の違いは(たぶん)ない。
②「主要参考文献」236〜238頁、③「主要参考文献目録」240〜245頁。①には文献の紹介などはない。
②は末尾に(郡司勝義)とあり、③の末尾には(木村東吉作成)とある。
②は「一 伝記/二 本文/三 作家論/四 研究書」に分けられているが、「一 伝記」は以下の如し。
正確な信頼できる資料と調査に基づく「中島敦伝」はまだ著されていない。いずれ好学の/士の現れるのを俟*1つのみである。(以下の私の略年譜はそのためのまったくの一指標にすぎ/ず、これが縦横に書き改められるのを願ってやまない)
「二 本文」には生前刊行された『光と風と夢』と『南島譚』、口絵に書影が掲載されている『李陵』そして(昭和二十三年十月より筑摩書房刊)と(昭和三十四年六月より文治堂書店刊)の2種の全集が載る。「三 作家論」(ここまで236頁)には以下(237頁)の4つが挙がる。
中村光夫「中島敦論」(昭和十八年十二月『中村光夫作家論集』所収)
武田泰淳「中島敦の狼疾について」(昭和二十三年十二月『人間・文学・歴史』所収)
臼井吉見「中島敦の文学」(昭和二十三年十二月『人間と文学』所収)
山本健吉「伝奇と伝奇文学」(昭和三十七年八月『小説の再発見』所収)
「四 研究書」は角川書店刊『中島敦・梶井基次郎(近代文学鑑賞講座第十八巻)』と佐々木充『中島敦(近代文学資料1)』そして文治堂書店版全集の月報『ツシタラ』I―Vを挙げ、最後に
とある。岩田一男(1910.4.23〜1977.12.7)は横浜高等女学校の同僚。「人と作品」というシリーズは清水書院のものと思うが『中島敦』は刊行されていない。3行空けて、
以上が単行本であるが、中島敦が素材とした古典と中島敦の作品との関係を詳しく論じたもの/に次のようなものがある。(以上237頁)
そして238頁に岩田一男1篇、田鍋幸信1篇、佐々木充4篇の昭和34年(1959)5月から昭和42年(1967)7月までの紀要論文を挙げ、最後に
鷺只雄「『狼疾』の方法(1)―(4)」(昭和三十九年十二月より現在続稿ちゅう。『平工業高等専門/学校紀要』)
が挙がるが、昭和末の版になっても「現在続稿ちゅう」はそのままになっている。
③「主要参考文献目録」は注記もなく列挙しただけの目録である。
まず「単行本」として②「四 研究書」に挙がる2つに加えて、全部で12種、次に「雑誌特集号・全集月報等」として3種の全集月報(②に挙がっていた2つの全集に加えて、昭和51・3―51・9に刊行された筑摩書房の全集のもの)と雑誌の特集4種を挙げる。そして最後に「雑誌・単行本所収論文(昭和56年以後)」として、64種の論文と最後に英文の学位論文1本を挙げる。昭和56・1から昭和61・3まで。それ以前のものは「単行本」に見える、
に載っているのだろう。(以下続稿)
*1:ルビ「ま」。