瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

太宰治『走れメロス』の文庫本(1)

・角川文庫1143
【改版四十七版】昭和四十五年十二月十日改版初版発行・平成七年五月三十日改版四十七版発行・定価340円・237頁。
・角川文庫14731

走れメロス (角川文庫)

走れメロス (角川文庫)

【改版初版】昭和四十五年十二月十日初版発行・平成十九年六月二十五日改版初版発行・定価362円・264頁。
【改版三版】昭和四十五年十二月十日初版発行・平成十九年六月二十五日改版初版発行・平成二十年七月二十日改版三版発行・定価362円・264頁。
 角川文庫14731の奥付は「昭和四十五年十二月十日初版発行」となっており、角川文庫1143を引き継いでいるのだが、角川文庫1143を見るに「昭和四十五年十二月十日改版初版発行」とあって、さらにその前があったらしいのである。
 この、昭和45年(1970)の改版前には『東京八景』と題していた。このことは、伊馬春部「作品解説――に代えて」により判明する。すなわち冒頭、「角川文庫の一冊として太宰治の「東京八景」が企画されたのは、もうよほど以前にことになる。……」との書き出しの「東京八景」の次に( )内に割書で、角川文庫1143【改版四十七版】には(昭和四五年一一月の改版より/「走れメロス」と書名変更 )とあり、角川文庫14731には(昭和四五年の改版より、/「走れメロス」と書名変更)とある。伊馬氏の文には日付はないが、昭和28年(1953)10月31日の御坂峠の太宰治文学碑の除幕式に関連して甲府で開催された講演会での自身の講演の大要を述べており、『東京八景』初版発行時からあったもののようである。
 そこで山内蘒史 編『太宰治全集』別巻(一九九二年四月二十四日初版第一刷発行・筑摩書房・819頁)を見るに、583〜800頁「参考文献目録」のうち610頁〜624頁上段「III 太宰治の著書に付された解説・後記・注解・年譜・参考文献の類」の613頁上段に「伊馬 春部 解説に代えて   『東京八景(角川文庫)』/角川書店 30・11」とあって、昭和30年(1955)11月に初版が出ていた。ちなみにこの『太宰治全集』別巻だが、何年か前に近所の図書館の再利用図書の棚に出ていたのを拾って来た。別巻だけ廃棄処分にしたのである。別巻みたいなものは、余程のマニアでもないと見ないだろうから、邪魔だと思ったのだろうか。出来れば、元通りに本巻と書棚に並べてやりたいのだが……。
 それはともかく、この『東京八景』は、太宰本人が作品集に与えた題であるので、記事のタイトルとしてこちらを採用しようか、とも考えた。いづれ改版前のものを見る機会を作るつもりで『東京八景』として置こうか、と。けれども、『太宰治全集』別巻の389〜456頁「書誌」の394頁上段の単行本『東京八景』(昭和16年5月・実業之日本社*1とは、内容が殆ど重なっていない――表題作「東京八景」のみ――ので止しにして、他社からもこの題で出ていることだし、中学の国語教科書の影響みたいだけれども『走れメロス』にして置く。太宰本人が書名に採用したことは、ないのだけれども。(以下続稿)

*1:408頁上段に昭和23年8月の改装版。