・角川文庫294(4)
昭和43年(1968)の改版(②)と、昭和末か平成初年の改版(③)を比較してみる。
②は1頁18行、1行43字。文字は11.5×8.0cmに印刷されている。挿絵は10.5×7.5cm。
③は1頁18行、1行42字。文字は12.0×8.2cmに印刷されている。挿絵は11.5×8.0cm。
ちなみに①は1頁18行、1行43字。文字は11.7×7.5cmに印刷されている。挿絵はない。
挿絵は墨絵で③で拡大された分、色が薄くなって濃淡の減り張りがなく、ぼやけた印象になっている。②の印刷は29頁など、濃過ぎて何が描かれているかよく分からないものがあるが、他は濃淡がはっきりしている分、③より印刷は良いように見える。
挿絵の数に増減はない。
②「李陵」11・29・37・47頁「弟子」61・85・99頁「名人伝」109頁「山月記」123頁「悟浄出世」131・141・155頁「悟浄歎異」163・180頁。
③「李陵」11・29・37・47頁「弟子」63・87・101頁「名人伝」111頁「山月記」125頁「悟浄出世」133・143・157頁「悟浄歎異」165・183頁。
「注釈」は①にはなかった。②182〜194頁、③185〜198頁、注の数も増減なし。1頁21行。1行の字数を③では1項目ごと2行めから字数を1字減らしているため、頁数が増えている。
「解説」は①にあった武田泰淳「中島敦の狼疾について」だけでなく、作者の友人氷上英廣(1911.4.10〜1986.9.16)の「中島敦――人と作品」が追加され、2本立になっている。氷上氏の解説は②195〜204頁・③199〜208頁で同じ写真(サイズ等が違う)が挿入されている。武田氏のものは②205〜213頁・③209〜217頁、題に「ろうしつ」のルビがある。
ついで「参考文」がある。ここも全くの同文らしい。②214〜235頁、③218〜239頁。
班固「李陵伝」――「漢書」巻五十四 ②214〜220頁、③218〜224頁
司馬遷「任少卿に報ずる書」――「文選」巻四十一 ②221〜228頁、③225〜232頁
李景亮「人虎伝」――呉曾祺編「旧小説」 ②229〜235頁、③233〜239頁
それぞれの文の末尾出典が記される。そして最後に
※ 以上の文章は、作品「李陵」「山月記」の創作材料と目される中国古典を作品鑑賞の参考として読み下したものである。理解を容易にするため、自由な訓読をほどこし、難解な語句には( )を付して、補助的語句・説明を加えた。/(都留春雄編)
とある。(以下続稿)