瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

NHKスペシャル『幻の大戦果』(2)

 このNHKスペシャルの書籍版。

幻の大戦果・大本営発表の真相 (NHKスペシャルセレクション)

幻の大戦果・大本営発表の真相 (NHKスペシャルセレクション)

 辻泰明・NHK取材班『幻の大戦果・大本営発表の真相(NHKスペシャルセレクション)』2002(平成14)年11月25日第1刷発行・定価1600円・日本放送出版協会NHK出版)・230頁
 放送に比して全体的に詳細になっており、構成も違っているが、DVDはもう図書館に返却してしまったので細かい比較は出来ない。そこで、差し当たり、問題の箇所のみ当たってみる。
 第三章「真実の封印」139〜203頁のうち、174〜191頁「無視された警告/戦果が幻であると気がついた人がいた/堀少佐が見たもの/電報はなぜ葬られたのか」の辺りが堀少佐関係の記述で、181頁3行め〜187頁6行め「堀少佐が見たもの」の節に堀少佐の手記の引用がある。
 183頁上に白黒写真がありキャプションは「戦果判定のようすを目撃した堀栄三少佐とその手記『比島の悲劇』」、保管用の封筒の上に置かれた原稿用紙の束、右上に軍装の顔写真。原稿用紙は柱がないので袋綴じではないらしい。1枚10行、1行20字、B5判か。
 まず181頁4〜7行めに以下のように手記が紹介されている。

 堀少佐は、鹿屋基地で目撃したことを手記に残した。その手記は、一部加筆訂正されて出版さ/れてはいるが、今回、私たちはご遺族の了解を得て、その原文を見せていただくことができた。/敗戦直後に書かれたと思われる手記の原稿には、堀少佐自身の筆跡で綴られた目撃談が生々しく/記されている。


 そして9行めから182頁9行めまでが1つめの引用、以下187頁6行めまで、殆ど原文の引用である。放送で読まれなかった部分も引用されている。
 問題の箇所は1つめの引用にある。182頁1行めまでを引いて見よう。

 台湾沖航空作戦の本拠である鹿児島の海軍飛行場鹿屋に着いたのは、翌日の午後一時頃で/あったと記憶する。
 ピストの中に入ると飛行服に身を固めた海軍の飛行士が如何にも疲れたかの如くソファー/に二、三人横になって航空糧食をしゃぶりながら寝そべっている。隣では刻々入電してくる/電報を慌ただしく点検しながら一々司令に耳打ちをしている。幕僚の一団が突然の来客であ/る私を冷やかに横目で見て通る。この人たちに属する十人程の下士官、兵がその度毎に立っ/たり、走ったりしながら、或る者は黒板に「戦艦一、沈」「航母(?)二、沈」と入電した情報をそのままに書き入れる。或る者はこれを帳面に整理する。東京への電報が打たれる。寝/(以下略)


 太字にしたのが放送で読み上げられた部分。漢字を開いているものの書籍版は原文通りで、放送と違って「侭」の字を「傍」と誤読してはいない。
 放送では問題の箇所をいきなり読み上げていた。だから「そのかたわらに」と言われても何の傍らなんだかさっぱり分からないのだが、中には読まれなかったその前の部分に出て来た「何かの傍らに書いたの?」と思ったりする人もあったかも知れない。尤も、大抵はそのまま聞き流してしまったのじゃないか。(以下続稿)