瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

夏目漱石『坊っちゃん』の文庫本(14)

・角川文庫79(3)
改版八十五版(173頁)非売品
 昭和三十年一月三十日初版発行・昭和四十一年四月三十日五十一版発行・平成十年五月三十日改版八十五版発行。
 3月22日付(05)に紹介した改版八十五版とほぼ同じものだが、カバーが違う非売品である。定価280円のカバーのある改版八十五版と比較しつつ紹介してみたい。
 まず、カバー表紙だが、定価のあるものに使用されていた写真の、顔の部分の、拡大し過ぎてぼやけるくらいの、顔があって、その額にかかるように黒で縁取った白の明朝体で大きく「夏目漱石」と著者が示される。最下部、中央にゴシック体白抜き*1で「角川文庫クラシックス」。最上部は1.0cm幅の橙色の帯状になっていてその中央に白抜き明朝体で「坊っちゃん」と標題。
 カバー背表紙は4月8日付「夏目漱石『吾輩は猫である』の文庫本(02)」の改版七十八版と同じレイアウトなのだが、分類番号の類がなくなっている。上部に「」その下に教科書体の標題、中央やや下にゴシック体で著者、下部は色が帯状に4.5cm、白抜きゴシック体で「角川文庫クラシックス」とある。他に文字はない。
 カバー裏表紙、白地で中央に説明文があってこれは定価のある本と一致、他にはバーコードやISBNコードなどはなく、右上の枠に[非売品]とゴシック・横組みであるのみ。カバー裏表紙折返し、左下に小さく「カバー 暁印刷」とのみ。定価のある本にある上部の「夏目漱石の本」列挙はない。右下は切除されているためKBマークの有無は不明。
 カバー表紙折返し、上部の写真と紹介文は定価のあるものと一致。最下部、定価のあるものには何もないが、これには「カバーデザイン/豊田富路暮」とある。
 本体は定価のあるものに同じ。奥付の裏、角川源義「角川文庫発刊に際して」までで目録類のないことも同じだが、奥付が少し違う。すなわち、匡郭内の最後に「定価はカバーに明記してあります。」とあったのがなくなって、同じ行の下部の枠に[非売品]とゴシック体、縦組み。異同はこれだけで、匡郭の下辺の外、左に「CL な 1-2」右にISBNコードとCコードがあって、これは定価のあるものと一致している。カバーからは削除したが奥付はそのままにしたようだ。
 8月5日付「太宰治『斜陽』の文庫本(09)」に、角川文庫の「図書館文庫/非売品」を紹介しているブログを紹介した。本書もその類だと思うのだが、『坊っちゃん』の他にどの作家のどの作品がセットになっていたのか、どのような意図で企画されどこに配られたのか、いろいろ興味のあるところだけれども、今はこういうものが存在している、ということを報告するに止めて置く。

*1:2014年12月2日追記】同じレイアウトの角川文庫235『こゝろ』一八〇版のカバー表紙を見て、投稿当初「白抜き」を脱落させたものと見て補った。