瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張「氷雨」(1)

・『氷雨(NHKアーカイブス ドラマ名作選集)(発行:NHKエンタープライズ・発売:ポニーキャニオン

 平成12年(2000)5月7日に「NHKアーカイブス ドラマ名作選集」として放送したもの。
 00:01:52から本編、01:21:56まで。昭和34年(1959)11月27日放送。番組(DVD)は01:22:44まで、従って本編の前後は「アーカイブス解説」の「前説」と「後説」である。
 00:01:11〜23に、加賀美幸子アナウンサーがスタッフが使用していた台本を手に「キヤスト」*1のうち西村晃淡島千景佐分利信小沢昭一山岡久乃を指し示している他、本編の最後、01:20:01〜01:21:12「配役」として「岡野茂子/淡島千景」から「米田/佐分利信」が流れる。ちなみに「全編再生」と「本編再生」で表示される時間が異なるが、ここでは全編再生の時間で記述する。
 汚職事件の口封じのため自殺させられた、日東開発興団経理課長・岡野豊雄(西村晃)の未亡人・岡野茂子(淡島千景)が「昭和生命保険会社」を訪れ、外交部長*2(松下達夫)に見せる履歴書が、00:33:10〜15に映る。

    履 歴 書
本籍地 東京都杉並区井荻四ノ×七
現住所 東京都大田区洗足×十七×七
      筆頭者 吉木栄三 長女
          岡 野 茂 子
          大正十四年十一月二十一日生
    学 歴
一、昭和十×年四月一日 東京市立高等女学校入学
一、昭和十七年三月三十一日 仝校卒業
一、昭和十七年四月一日 東京市タイピスト学院入学
 
一、昭和十八年三月三十一日 仝学院卒業
    職 歴
一、昭和十八年四月一日 日東開発興団秘書課勤務
一、昭和二十年六月十日 仝興団を退職
    賞 罰
一、なし
右の通り相違ありません
昭和三十四年九月十四日
            岡 野 茂 子  

 学歴の途中にある空白は折れ目。B4判か。本籍地は井荻になっているが、茂子が料亭に住込みで働くに際し、00:43:55〜44:05に、子供は「私の里」=「甲府」の「両親」に「預け」たことが語られている。
 冒頭で加賀美アナウンサーが手にしていた台本を確認すれば、この小道具の原案も記載があるのかも知れないが、今は映ったものを転写して置く。5秒も映っておれば今なら画面を静止させれば大体分かるが、それでもやはり数字など読み得ないところがあるのだが、当時は静止も巻戻しも出来なかったから「高等女学校」「タイピスト」「日東開発興団」といった辺りが見えれば、それで十分な訳である。
 岡野茂子(1925.11.21生)はこの履歴書の日付現在で満33歳、夫とは満20歳の頃に職場結婚という訳で、登場しないが小学生の子供がいるという設定になっている。但し、ドラマはその後、パトロン佐分利信)を得て料亭「千鳥」の女将になった茂子が01:15:11〜01:17:28で視聴するTVのニュースで01:16:08〜16「2年前に発生した日東開発興団の汚職事件は、会計課長岡野豊雄氏の自殺により確証が得られず」、また01:17:20〜26「こうして今回の事件は2年前に発生した同じ日東開発興団の汚職事件を」とのアナウンサーの声が流れているので、この日は01:15:33に「6日朝」というのみで月は不明ながら、季節は秋らしいから履歴書の日付からは2年は経過しているはずである。即ち、この履歴書の日付を基準にすると、未来を描いたドラマということになってしまう訳だ。そうすると岡野茂子の36歳くらいまでで、現実の淡島千景(1924.2.24〜2012.2.16)の年齢に近付いていることになるが、履歴書の日付を2年前、昭和三十二年(1957)に設定しなかったのは、まぁ単なるミスだろう。
 この「氷雨」について、DVDのパッケージに気になる記述があるのだが、これについては別に確認してみたい。(以下続稿)

*1:「キャスト」ではない。台本は謄写刷B5判。

*2:「配役」には01:20:27〜29「保険会社 部長」とあるが、00:01:16に映る台本の「キャスト」には「…外交部長」と見える。なお日本語字幕ONにすると00:33:16から00:40:25の間にたびたび(保険部長)とこの人物について表示されるが、これはおかしい。