瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

太宰治『走れメロス』の文庫本(3)

・角川文庫14731
 9月19日付(2)で紹介した3種類のカバーであるが、表紙折返しの著者紹介が望月・松山が9行でほぼ同文だったのが梅で19行に大幅な加筆がなされていること、裏表紙の内容の紹介文の数字や振仮名が松山と梅が一致すること、からして、望月→松山→梅、の順であることは間違いない。
 このカバーがどの版にかかっているか、だが、私がこれまで見た望月通陽のカバー2冊はいずれも【改版初版】、松山ケンイチのカバー1冊は【改版三版】それからなか見!検索では【改版四版】、そして梅佳代のカバー2冊は【改版初版】と【改版四版】である。一番新しいはずの梅のカバーに【改版初版】があり、また【改版四版】に松山と梅のカバーがある理由は、返本もしくは出荷せずにストックされていたもののカバーを掛け替えたためだと思われる。
 これらの本体だが、奥付のそれぞれの発行日の他は【改版初版】と【改版四版】が「製本所―BBC」だが【改版三版】が「製本所―大口製本印刷」となっているくらいで、「角川文庫発刊に際して」及び最後にある「角川文庫ベストセラー」の4頁(1頁に7点)は一致。

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 ところで、角川文庫の太宰治作品の松山氏のカバーは6月25日付「太宰治『人間失格』の文庫本(06)」でも触れたが、角川文庫14732の書影を当時、貼っていなかった。何故かというと6月2日付「太宰治『人間失格』の文庫本(04)」を上げたとき、確か白地に「人間失格 太宰治」という、実際のカバーではない、明らかに間に合わせにしか見えない書影になっていたからなのだが、今見たら梅氏の写真になっていた。そこで、仮にここに貼って置く。梅氏のカバーの本を手にしてからにすれば、良かったような気もするのだが。

人間失格 (角川文庫)

人間失格 (角川文庫)

 『斜陽』や『走れメロス』の書影は横になっているのにこれが縦であるのは、上記の切り替えの混乱が関係しているのかも知れない。それから書名が「人間失格・桜桃」になっているが、6月2日付でも触れたように現在は『人間失格』だけになっている(「桜桃」も収録されているが)ので、これも上手く対応出来ていない。
 さて、松山氏のカバーの時期だが、『人間失格・桜桃』のAmazon詳細ページのレビューを見るに2008/11/24「★★★★★ 松山ケンイチ」に「完全にジャケ買いです」云々とある。それからなか見!検索で閲覧出来る平成20年(2008)4月の改版再版が松山氏のカバーになっていることを確認している。尤もこの奥付の日付は、そのままこのカバーに切り替えられた時期と一致するとは限らないが、目安にはなる。いや、ブログなどを検索すれば出てくるのだろうが。ところが、2009/6/15「☆☆☆☆ やられました」として「表紙が松山ケンイチさんなので注文しましたが、まったく違う表紙のものが届きました」云々とある。 生田斗真の映画の前年であり、生田氏の写真であれば違っていてもここまでの書き方にはなっていなかったろうと思うから(私は別にどちらも、好きでも嫌いでもないが)松山氏の写真のカバーの在庫がなくなって、望月氏のカバーに戻していたのではないか。それなのにAmazon詳細ページの書影が松山氏のままであったので、このような反応を招いてしまったのであろう*1。望月氏のカバーが悪いというのではないが、版元は松山氏のカバーで売り上げ増を図って、実際松山氏のカバー目当てで注文したのだから在庫切れになった段階で速やかに対応するべきだった。別のカバーに戻してからも前のカバーが店頭から完全に消えるまで時間差があるにしても。――けれどもその際に、Amazon詳細ページの片隅にでも、古い書影を残して置くような配慮が欲しいと思うのである。*2

*1:2013年3月18日追記】この推定は注意不足による誤りであったことを2013年3月18日付「太宰治『人間失格』の文庫本(17)」に指摘した。

*2:そうすれば、まぁこのカバーのこともあるのか、と、納得してもらえ(るかどうか分からないが、一応の言い訳にはなっ)たのではないか。