・角川文庫553(2)
「改訂版」とあるのは9月21日付(1)で見た、新潮文庫版の小澤俊夫「解説」に云う「昭和三十五年版」である。小澤氏「解説」の書き方だと角川文庫版は昭和35年(1960)にいきなり改訂版として刊行されたように読めるが、実は昭和28年(1953)に「改訂」されないものが角川文庫として刊行されており、それを昭和35年に「改訂版」に改めたのである。奥付に「昭和三十三年二月十四日 十三版発行」というのは、恐らく初版の最後の増刷で、柳田氏の「昭和三十五年版の序」の冒頭と照応している。角川文庫版では巻頭3〜9頁で末尾に「昭和三十五年四月」付で「柳田 国男」とある。
久しく国内の若い人たちに愛読せられ、今でもまだちっとも人気の衰えていない『日本の昔話』/を、今度のように大規模に改定するということは、実は容易の事業ではなかったのだが、それを/承知してもなお実現させたいと、私が念じていたのも永いことであった。……*1
すなわち、5年間で13版を重ねた「人気の衰えていない」ものをわざわざ絶版にして、2年かかって改訂版を送り出したのである。小澤氏「解説」から関連する箇所(181頁)を引用して置こう。
三十五年版は、柳田の序で述べられているように、丸山久子、石原綏代*2が、柳田の意を受/け、五年版以降の全国における昔話記録作業の成果をふまえて、日本の昔話を整理するため/におこなったものである。
続けて小澤氏は「三十五年版の「あとがき」」を一部引用してこれを確認している。この「あとがき」は、角川文庫版では巻末187〜190頁にあって末尾に「昭和三十五年四月」付で「丸山 久子/石原 綏代」の連名。(以下続稿)