瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

岩本由輝『もう一つの遠野物語』(7)

 岩本氏は「〔追補版〕あとがき」をまず、「このたび、追補版を出すにあたって、何か所かの誤植の訂正をした」と書き出している*1。「何か所か」にとどまっている辺りからして間違いは少なかったのだろうが、校正で見逃しているということからすると、紛らわしく分かりにくい誤りなのだろう。こういう書き方を良く目にするが、どこを直したのか明示すべきだと思う。
 次にすぐ「有名な“サムトの婆”の話について……新たに訂正する必要が生じたので、ここに記しておく。」として、遠野市立博物館 編『佐々木喜善全集』(遠野市立博物館)第二巻収録の佐々木氏の短篇小説「舘の家」に見える“サムトの婆々”に関する部分を引用している*2
 と、ここで「舘の家」を読んで置こうと思っていたのだが、まだ読んでいない。この『佐々木喜善全集』、第1巻(1986.6)第2巻(1987.5)第3巻(1992.5)第4巻(2003.6)と完結まで時間がかかったこともあって(そればかりではなさそうだが)大学図書館などでも揃いで所蔵していないところが多いようだ。揃いは以前、都立中央図書館の開架で見たことがあるくらいである。刊行の遅れた第4巻は国会図書館も所蔵していない有様で、大学図書館の所蔵状況も、第3巻はあるのに第2巻がなかったり、第1巻しかなかったりしている。
 もちろん、考えがあって不揃いにしている訳ではないだろうから、遠野市立博物館はこれらの図書館に営業活動をするべきだろう。――それで、とにかく、行けば見られるところは知っているのだが、震災後、鉄道の本数減に計画停電やら夜間開館の休止などがあって、都立中央図書館には行かないままである。国会図書館にも同じくらい足が遠のいている。気が付けば震災後、貸出をしてくれる、つまり返却期限という強制出頭の機会がある図書館にしか行っていない(4月12日付*3に似たようなことを書いていた)。
 岩本氏はこの「舘の家」を、明治40年7月刊の「芸苑」巻第三に掲載されている、とする*4。しかし馬場勝弥編(左久良書房)の第2次「藝苑」は、明治39年1月創刊で、以後月刊で2年巻5(明治40年5月)まで17冊を刊行して休刊になったらしい。すなわち、7月にはもう刊行されていなかった。「巻第三」が2年巻3(明治40年3月)のことだとすれば月が間違っている。岩本氏の誤記でなければ『全集』の誤記ということになる。

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 以上は2011年5月9日付(6)の続きで、実は平成23年(2011)5月10日に書いたのだが、漸く続きが書けそうになったので、1箇所加筆し(太字)、新たに注を4つ加えて、そのまま上げて置く。(以下続稿)

*1:272頁2行め。

*2:272頁2行め〜273頁12行め。

*3:2011年4月12日付「花粉サイクリング」――このとき50件を越えたくらいだった「下書き記事」は現在240件に達している。全くの断片も少なくないし、既に使えなくなったものも多い。

*4:272頁7〜8行め。