瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張『影の車』(3)

・中公文庫(3)
 8月4日付(2)の続き。
 初版273〜277頁・改版321〜327頁、三好行雄「解説」の冒頭に「『影の車』は昭和三十六年の一月から八月まで、『婦人公論』に連載された連作推理小説である。所収七話はいずれも殺人をめぐる人間心理の明暗を描いているが、‥‥*1」とあるが、1月から8月までの連載なのに7話は変だと思って目次を見るに、7話とも40〜47頁(改版)で2回に分けて掲載されたものはなさそうなのである。そこで差当りWikipedia「影の車」項を見るに、8月号に掲載された「突風」が収録されていないのである。それなら「七月まで」とするか、1篇収録されなかったことを説明して置くべきだろう。「突風」は同題の短篇集に収録され、5月5日付「松本清張『突風』(1)」で見たように中公文庫にも収録されている*2
 1頁(頁付なし)扉は初版に比して改版は文字が大きくなり、標題の下「松 本 清 張著」とあったのが「松 本 清 張」だけになっている。また版元名が違う。2頁(頁付なし)は初版は左下に縦組みで「表紙・扉 白井晟一」とあったが改版は白紙。3頁(頁付なし)「目次」は初版の方が文字が大きい。それぞれの作品の頁が違うのみ。、5頁(頁付なし)中扉、初版「影 の 車」改版「影の車」。7頁から本文で、初版はまず1行分空白、次にゴシック体で「第一話」次に大きく「潜在光景」そして3行分空白があってその次に2行取り8字下げで「」と章番号。改版は5行分スペースを取って、2〜3行めの辺りに「第一話 潜在光景」とあり、次いで2行取り7字下げの半角斜体の算用数字で章番号。初版1頁18行、1行43字。改版1頁16行、1行40字。頁付があるのは初版は277頁まで、改版は327頁まで、その裏は初版は白紙だが改版には(編集部)による「今日の人権意識に照らして不適切と思われる語句・表現」についての断書きがある。
 ついで奥付、初版は下部に縦組み下詰めで小さく「©1973/中公文庫影の車/昭和四十八年七月十日初版/昭和五十七年一月十日17版/著 者 松本清張/発行者 高梨 茂/用紙 本州製紙/製版印刷 三晃印刷/製本 小泉製本/発行所 中央公論社/〒104 東京都中央区京橋二―八―七/振替東京二―三四/定価 三二〇円」算用数字は横並び、標題と著者名・発行者名と定価はやや大きく、版元名が最大。改版は横組みとなっている。版元の住所・印刷・製本などは変わっていない。
 最後に目録、初版は3段組の「中公文庫 既刊より」の「昭和56年11月」で見出しなどのない1段は20点(1頁めは18点ずつ)。1頁めから5頁め上段11点めまで「ノンフィクション(M)」5頁めの残り、下段7点めまで「日本文学(A)より」5頁めの17〜20点めに松本氏の「北の詩人/絢爛たる流離/砂漠の塩/ミステリーの系譜」が並ぶ。下段の残りは田中純一郎『日本映画発達史』全五巻、『日本の詩歌』全三十巻/別巻一巻、『日本の歴史』全二十六巻、『世界の歴史』全十六巻で『日本映画発達史』のみ各巻の題を示す。
 改版は「中公文庫既刊より」が7頁。1頁8点、1頁めは7点、いづれも松本氏の本で、カバー裏表紙折返しにあったものから本書を除く7点だが「突 風/ミステリーの系譜/渇いた配色/眩 人*3/中央流沙/実感的人生論/黒い手帖」と順序が異なる。これは整理番号順で「ま-12-」は共通、以下「6・11・17・21・23・24・25」の順である。(以下続稿)

*1:「連作」に傍点「ヽ」。

*2:松本清張『突風』(1)」は、書出しからも察せられると思うのだけれども、実はこの三好氏「解説」に触れた部分よりも後に作成したものなのである。2月23日付「松本清張『潜在光景』(2)」から発展して、中公文庫『影の車』改版のメモを作成していたのが、中公文庫『影の車』初版を見ることが出来たのでそのまま投稿する訳にも行かなくなり、取り敢えず『突風』を先に投稿して、後回しにしたのだが随分遅くなってしまった。

*3:ルビ「げんじん」。