・一柳廣孝 監修『知っておきたい 世界の幽霊・妖怪・都市伝説』(5)
157頁下部の囲みコラムで「もっと知りたい」に紹介される「バリエーション」は、4月13日付(133)で見た、157頁に紹介される人攫いの赤マントではなくて、4月12日付(132)に引いた156頁の問掛けて(殺害方法を)選ばせる方のヴァリエーションですが、このことについては既に注意されており、例えば白水社から出ていたシリーズ「日本の現代伝説」の1冊『魔女の伝言板』の「III トイレ」の章での、三原幸久の見解を、2月2日付(102)に引いて置きました。三原氏は「マント」と並べて「ちゃんちゃんこ」と「はんてん」を挙げ、「赤い紙、青い紙」を選択させる話の変型として発展して来たのではないか、という推測を述べていました。
三原氏も挙げているように「赤いマント、青いマント」を選択させる話は昭和末年頃から研究資料として提示されていて、1月11日付(81)の後半及び1月12日付(82)で見たように『現代民話考』に2例紹介されているのですが、他にも1月7日付(77)に引いた中村希明の回想、2013年12月25日付(65)で見た中島公子の小説「坂と赤マント」、2013年12月21日付(61)で見た、母親の回想を元にしたらしい中島京子の小説「小さいおうち」があり、いずれも昭和10年代のこととなっています。
さらに本書では「赤いちゃんちゃんこ・青いちゃんちゃんこ」の存在を指摘し、1月25日付(95)で見た物集高音『赤きマント』では「赤い半天、青い半天」を挙げていますが、1月11日付(81)の前半に示したように『現代民話考』では「ちゃんちゃんこ」も「はんてん」も赤のみです。或いはこれを踏襲しているのかも知れませんが、1月13日付(83)で見た日本民話の会 学校の怪談編集委員会『学校の怪談大事典』の「さくいん」でも「かみ」と「マント」は赤と青がセットで立てられていますが「ちゃんちゃんこ」と「はんてん」は赤のみです。勿論全ての便所の怪談に眼を通した訳ではありませんが、青い「ちゃんちゃんこ」や「はんてん」は、あまり見ないような気が私にもするのです。
そもそもが、「赤いちゃんちゃんこ」は、妖怪に刺された両肩から流れた血がちゃんちゃんこのように垂れるというオチに、「赤い半纏」の場合は、刺されたときに噴き出した血が壁に斑点となって残ったというオチに、それぞれ繋がっているので「青」を設定する意味がない。まぁそんなことを云ったらマントだって同じなんですが、「ちゃんちゃんこ」及び「はんてん」の早い時期の報告、すなわち『現代民話考』に載る例が赤のみで、青と選ばせる形を取っていないのは、無駄に「青」を設定しなかった、という理解で良いと思うのです。
ここで前回予告した疑問点に及ぶべきですけれども、息切れしてしまいましたので次回に回す少し間を空けることとします。(以下続稿)