瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

八王子城(7)

 「造形大の怪談」の5話めを引いて見よう。『戦国の終わりを告げた城』70頁3〜7行め、

 つぎは、毎年旧暦六月二十三日の落城忌に氏照公の墓前で一緒になる松尾好高さん(西蓮寺檀/家総代)が、造形大の警備員を一〇年間していた近所の人から聞いた兵士の幽霊である。ときお/りではあるが、きまって真夜中の一時か二時頃現れ、手には竹槍を持ち、竹製の胴丸をつけ、股/引には膝につぎがあたり、足もとまではっきりみえたという。ある人からお茶をあげるとよいと/聞いたので、そうすると、いつしか消えて眠ることができたという。


 「氏照公」は八王子城主北條氏照(1540〜1590)、後北條氏三代目氏康(1515〜1571)の三男で、四代目氏政(1538〜1590)の弟、五代目氏直(1562〜1591)の叔父。小田原攻めの際には小田原城に籠城しており、八王子城落城に立ち合っていない。「西蓮寺」は八王子市内には2つあって、大楽寺町に凉水山不動院西蓮寺、石川町に金東山薬王院西蓮寺でともに真言宗智山派である。ここはJR八高線小宮駅に近い石川町の西蓮寺ではなく、元八王子町に近い大楽寺町の西蓮寺であろう。同じ話は揺籃社ブックレット8『高尾山と八王子城にも採られている。3月10日付(4)の引用の続き、31頁12行め〜32頁1行め、

 最もリアリティがあるのは友人の松尾好高さんから聞いた同大学の警備員が/みた幽霊である。きまって真夜中の一時か二時頃現れ、手には竹槍を持ち、竹/製の胴丸をつけ、股引には膝につぎが当り、足元まではっきりみえたという。*1/ある人からお茶をあげるとよいと聞いてそうするとやがて消えて眠ることがで/きたという。‥‥


 椚氏は「最もリアリティがある」としており、確かにリアルには違いないが、この記述では警備員がどこで、どのようにしているときに目撃したのかが分からない。「きまって」と云うから何度となく見ているはずだが、頭部は見ていないようだ。「眠ることができた」とあるから、構内や校舎内を巡回中に見たのではなく、守衛室で仮眠中に「きまって真夜中」に目が覚め、枕元に立っているのを目撃することとなっていたように、読める。この辺りも、私などからすると不足を感じてしまう。(以下続稿)

*1:ルビ「どうまる・ももひき・ひざ・あた」。