私は推理小説が苦手である。松本清張のように初めから、或いは途中で犯人の見当が付いてしまっても、アリバイ崩しで引っ張るのならともかく、犯人が誰かで引っ張るような組み立てになっていると、しばしば途中で別人が犯人であるかのように*1わざとらしく仕向けてあって、その引っ張り方が如何にも不自然だったりすると特に、腹立たしくなって、読むのが嫌になるのである。
但し、映像だと文章で読むほど気にならない。だから2時間ドラマは結構見ている。――文章だとこの説明が足りないとか、変なところに嫌に拘っているとか、そんなところにすぐ気付いてしまって、どうも、嫌なのである。
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平成25年(2013)1月26日公開の映画(利重剛 監督)は、もちろん見に行かなかった。
・映画
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先生役(清塚信也)が本物のピアニスト、と云うのは大きかったと思う。リストのマゼッパ(「超絶技巧練習曲」第4番)の演奏で、引き摺り込まれてしまった。そして、この場面での主人公の少女(橋本愛)の、髪型と端正な顔立ちと、首周りにスカーフを巻いてセーラー服ではないが高校の制服で金属の松葉杖を突いて立っている姿が、2月8日付「松葉杖・セーラー服・お面・鬘(03)」及び2月19日付「松葉杖・セーラー服・お面・鬘(11)に注意した、ギンティ小林『新耳袋大逆転』85頁の、ヒロモト森一による「三本足のサリーちゃん」のイラストに酷似していることに気付いたのである。三本足のサリーちゃんは、髪は鬘で、顔はお面で、片脚(両脚揃っていると云う目撃談もあり)であるところが相違するが、パッと見ではかなり似ている。
さて、橋本愛は気道熱傷で嗄れ声しか出せなくなっていたの(だから周囲が取り違えに気付かない訳だ)が いつしか橋本愛の声で「私、ルシアですっ!」などと、全くルシア(相楽樹)の声ではなく普通に喋るようになるのが、ネット上の映画レビューでは「おかしい」と突っ込まれていたが、これは、たぶん、映画の文法と云う奴で、本当は最後まで嗄れ声で喋っていたはずなんだけど、嗄れ声を聞かされ続けるのは分かっていてもやはり辛いものがあるので、まぁ、私たち観客は、云わば“心の声”を聞いている、と云う寸法なのである。
そこで思ったのは、三本足のサリーちゃんは、声が(まだ当ブログでは声の問題には及んでいなかったことに今、気付いた)男の声に聞こえたから男なんじゃないか、と云う説があるのだが、リアル『さよならドビュッシー』と考えれば(火傷を負った少女説、にもまだ触れていなかったことに、今、気付いた)、女性の可能性も消せないのではないか、と思うのである。(以下続稿)