瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

横溝正史『金田一耕助の冒険』(1)

 角川映画は劇場公開時に縁がなく、親の好みではなかったのでテレビでの放送もあまり見ていない。最近、図書館でDVDを借りて、何作か見た。
 それで、次の本もやはり図書館で見掛けて、借りて来た。文庫版は未見。*1
中川右介角川映画 1976-1986 日本を変えた10年二〇一四年三月八日第1版発行・定価1500円・KADOKAWA・285頁・四六判並製本

角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年 (単行本)

角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年 (単行本)

・角川文庫19611『角川映画 1976-1986 [増補版]平成28年 2月25日初版発行・定価880円・KADOKAWA・372頁*2

角川映画 1976-1986(増補版) (角川文庫)

角川映画 1976-1986(増補版) (角川文庫)

 角川映画の時代は、私の幼稚園児から中学生までで、映画館に行った記憶も殆どないくらいだから、当然劇場では見ていない。実家ではビデオデッキもなかなか買わなかったので、私が昔の映画を見るようになったのはパソコンで再生出来るDVDが一般的になってからのことである。
 洋画は、台詞が分からないから字幕にするけれども、文字を追っている間、演技に集中出来ない。かつ、字幕は台詞と比べて、かなり内容が省略されている。だから収録されておれば吹替で見てしまう。吹替で見て、原語では見ない。余裕があれば原語でも見るのだけれども、なかなか何度も見ていられない。『山猫』は字幕を見なくても大体分かるのだけれども。
 その点、邦画は字幕か吹替かで悩む必要がないから楽である。あまり集中して何かをする余裕もないので、子供だったから縁のなかった旧作を、まぁ暇潰しに、中川氏の本を参照しつつ、見ているのである。
大林宣彦監督『金田一耕助の冒険』 昭和54年(1979)7月14日公開
金田一耕助の冒険 [DVD]

金田一耕助の冒険 [DVD]

  • 発売日: 2001/10/25
  • メディア: DVD
金田一耕助の冒険 [レンタル落ち]

金田一耕助の冒険 [レンタル落ち]

  • 発売日: 2004/07/23
  • メディア: DVD
金田一耕助の冒険 廉価(期間限定) [DVD]

金田一耕助の冒険 廉価(期間限定) [DVD]

  • 発売日: 2007/07/06
  • メディア: DVD
金田一耕助の冒険

金田一耕助の冒険

 私は金田一耕助横溝正史に思い入れがないので、金田一に対する冒瀆だとか、そんな気持ちにはならず、当節の風潮を嘆く金田一に若干感情移入しつつ、見たのであった。特典映像「大林宣彦監督インタビュー」での監督の主張には、2012年1月4日付「福田洋著・石川保昌編『図説|現代殺人事件史』(4)」に述べたような理由から私は賛成出来ないけれども。
 しかし古谷一行(1944.1.2生)の金田一耕助田中邦衛(1932.11.23生)の等々力警部、そして「特別出演 岡田茉莉子 夏木勲 三橋達也 三船敏郎」と例の和田誠の白抜きの文字でクレジットされ、他にも東千代之介とか吉田日出子とか仲谷昇とか、大林氏の映画の中でも恐らく最も豪華な出演者が揃って(?)いるのではないか。
 この映画は、中川氏の単行本098〜128頁「第四章 『復活の日』へ――一九七九年から八〇年」の、108〜112頁9行め「角川春樹大林宣彦との友情の始まり」に取り上げてあるが、110頁9〜12行めが気になった。

 それを象徴するのが、本人が演じた角川春樹横溝正史を訪ねるシーンだ。角川が「今月の印税で/す」とジュラルミンのトランクに入った札束を見せる。横溝が手にしてパラパラとすると、上の一枚だ/けが本物の札でそれ以外は白いので「中身が薄いですな」と言って、「私は、こんな映画にだけは出た/くなかった」とつぶやく。

とあるのだが、この紹介では中間部分がすっ飛んでいる。映画ではこの場面(01:44:18〜56)は、

角川: 右手にジュラルミンケース、左手に同じ大きさのスーツケースを提げて現れ、白磁の表札「横 溝」のある門柱の前でケースを下ろして柏手を打って拝み、門内に入ってすぐ躓く。
横溝: 縁側で障子の張り替え
角川:「どうも先生、ご無沙汰しております」
横溝:「いやぁ、どうもどうも」
角川:「これがあのー、今月分の、えー印税でございまして」札束の詰まったジュラルミンケースを開ける
横溝:「あぁそう」
角川:「えーこちらがぁ、えー『金田一耕助の冒険』の原作料でございます、どうぞ」スーツケースを開ける
横溝:「こーりゃーまた沢山ありますねぇ」札束の1つを手にする
角川:「えー、こりゃもう大作並ですから」
横溝: パラパラめくると外側の1枚ずつが本物で中身は白紙ばかり「中身は薄いですな」スーツケースに投げ返す
角川:「あぁ」右のこめかみに手を当てて前にがっくり、その姿勢のまま身体を起こして頭を掻き、肩に落ちた雲脂を払う
横溝: 糊の付いた刷毛を手に「私はこんな映画にだけは出たくなかった」
角川: 縁側にパタと手を突く

となっている。文庫版では改訂されているかも知れないが、単行本は図書館で結構目にするので突っ込んで置く。
 なお、Wikipediaの「金田一耕助の冒険」の項にも、

プロデューサーの角川が原作者の横溝正史の家へトランクいっぱいの札束を運んできて、横溝が「さすが大作映画ですなあ」とトランク内を見ると中身は白紙を挟んだ贋の札束。すかさず横溝が「中身は薄いですなあ!」と言うシーンがあり

とあるが、横溝氏の1つめの台詞が違うし、2つめは呟きであって「!」と付くほど力は入っていない。
 原作は読んでいません。
・角川文庫

金田一耕助の冒険 2 (角川文庫 緑 304-65)

金田一耕助の冒険 2 (角川文庫 緑 304-65)

春陽文庫
 田中邦衛は私の中学時代、中学の近所に造成された住宅地に転居してきたとかで、しばらくして数学の教師*3がちょっと離れたホームセンターで田中氏に遭ってサインを求めたところ、快く応じてくれたそうで、私は逢わなかったし「北の国から」も碌に見ていないのだけれども、田中氏の印象は頗る良いのである。(以下続稿)

*1:2017年11月22日追記】その後、2016年6月19日に追記したように文庫版を見た。遅ればせながらこの一文を削除した。文庫版もこの本映画に関する記述は2016年6月22日付(2)に述べたように同文である。

*2:6月19日追記】番号と発行日・定価・版元・頁数を追加した。

*3:2020年8月31日追記】この教師のことは2020年8月17日付「elevator の墜落(4)」に述べた。