角川映画は劇場公開時に縁がなく、親の好みではなかったのでテレビでの放送もあまり見ていない。最近、図書館でDVDを借りて、何作か見た。
それで、次の本もやはり図書館で見掛けて、借りて来た。文庫版は未見。*1
・中川右介『角川映画 1976-1986 日本を変えた10年』二〇一四年三月八日第1版発行・定価1500円・KADOKAWA・285頁・四六判並製本
角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年 (単行本)
- 作者:中川 右介
- 発売日: 2014/02/21
- メディア: 単行本
- 作者:中川 右介
- 発売日: 2016/02/25
- メディア: 文庫
洋画は、台詞が分からないから字幕にするけれども、文字を追っている間、演技に集中出来ない。かつ、字幕は台詞と比べて、かなり内容が省略されている。だから収録されておれば吹替で見てしまう。吹替で見て、原語では見ない。余裕があれば原語でも見るのだけれども、なかなか何度も見ていられない。『山猫』は字幕を見なくても大体分かるのだけれども。
その点、邦画は字幕か吹替かで悩む必要がないから楽である。あまり集中して何かをする余裕もないので、子供だったから縁のなかった旧作を、まぁ暇潰しに、中川氏の本を参照しつつ、見ているのである。
・大林宣彦監督『金田一耕助の冒険』 昭和54年(1979)7月14日公開
- アーティスト:センチメンタル・シティ・ロマンス
- 発売日: 2014/03/05
- メディア: CD
しかし古谷一行(1944.1.2生)の金田一耕助に田中邦衛(1932.11.23生)の等々力警部、そして「特別出演 岡田茉莉子 夏木勲 三橋達也 三船敏郎」と例の和田誠の白抜きの文字でクレジットされ、他にも東千代之介とか吉田日出子とか仲谷昇とか、大林氏の映画の中でも恐らく最も豪華な出演者が揃って(?)いるのではないか。
この映画は、中川氏の単行本098〜128頁「第四章 『復活の日』へ――一九七九年から八〇年」の、108〜112頁9行め「角川春樹と大林宣彦との友情の始まり」に取り上げてあるが、110頁9〜12行めが気になった。
それを象徴するのが、本人が演じた角川春樹が横溝正史を訪ねるシーンだ。角川が「今月の印税で/す」とジュラルミンのトランクに入った札束を見せる。横溝が手にしてパラパラとすると、上の一枚だ/けが本物の札でそれ以外は白いので「中身が薄いですな」と言って、「私は、こんな映画にだけは出た/くなかった」とつぶやく。
とあるのだが、この紹介では中間部分がすっ飛んでいる。映画ではこの場面(01:44:18〜56)は、
角川: 右手にジュラルミンケース、左手に同じ大きさのスーツケースを提げて現れ、白磁の表札「横 溝」のある門柱の前でケースを下ろして柏手を打って拝み、門内に入ってすぐ躓く。
横溝: 縁側で障子の張り替え
角川:「どうも先生、ご無沙汰しております」
横溝:「いやぁ、どうもどうも」
角川:「これがあのー、今月分の、えー印税でございまして」札束の詰まったジュラルミンケースを開ける
横溝:「あぁそう」
角川:「えーこちらがぁ、えー『金田一耕助の冒険』の原作料でございます、どうぞ」スーツケースを開ける
横溝:「こーりゃーまた沢山ありますねぇ」札束の1つを手にする
角川:「えー、こりゃもう大作並ですから」
横溝: パラパラめくると外側の1枚ずつが本物で中身は白紙ばかり「中身は薄いですな」スーツケースに投げ返す
角川:「あぁ」右のこめかみに手を当てて前にがっくり、その姿勢のまま身体を起こして頭を掻き、肩に落ちた雲脂を払う
横溝: 糊の付いた刷毛を手に「私はこんな映画にだけは出たくなかった」
角川: 縁側にパタと手を突く
となっている。文庫版では改訂されているかも知れないが、単行本は図書館で結構目にするので突っ込んで置く。
なお、Wikipediaの「金田一耕助の冒険」の項にも、
プロデューサーの角川が原作者の横溝正史の家へトランクいっぱいの札束を運んできて、横溝が「さすが大作映画ですなあ」とトランク内を見ると中身は白紙を挟んだ贋の札束。すかさず横溝が「中身は薄いですなあ!」と言うシーンがあり
とあるが、横溝氏の1つめの台詞が違うし、2つめは呟きであって「!」と付くほど力は入っていない。
原作は読んでいません。
・角川文庫
- 作者:横溝 正史
- メディア: 文庫
- 作者:横溝 正史
- メディア: 文庫
- 作者:横溝 正史
- 発売日: 1979/06/01
- メディア: 文庫
- 作者:横溝 正史
- メディア: 文庫
*1:【2017年11月22日追記】その後、2016年6月19日に追記したように文庫版を見た。遅ればせながらこの一文を削除した。文庫版もこの本映画に関する記述は2016年6月22日付(2)に述べたように同文である。
*2:【6月19日追記】番号と発行日・定価・版元・頁数を追加した。
*3:【2020年8月31日追記】この教師のことは2020年8月17日付「elevator の墜落(4)」に述べた。