瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

宮澤賢治の文庫本(12)

・角川文庫7381『風の又三郎』(1)
 角川文庫は奥付の発行日を「刷」ではなく「版」で示す。版を改めていない、ただの刷り増しであっても「版」としている。そのためか「改版」を示さない。奥付には、本字歴史的仮名遣いで刊行されたはずの「初版」とその「版」の発行日が並んでいるだけで、その「版」がいつ「初版」から「改版」されたものなのか、分からないのである。これが新潮文庫であれば、初版「発行」日と、「改版」の発行日、そしてその「刷」の発行日の3行が示してあるから、初版を①、以下「改版」ごとに②③‥‥と番号を打って整理することが出来るのだが、角川文庫はどの「版」から改版されたのか、俄に分からない。図書館にも新潮文庫ほど所蔵されていないので、数を見てパズルのように組み立てて行くことも困難である。
 この角川文庫7381『風の又三郎』も、初版発行がいつなのか、暫く分からなかった。最近【改訂十八版】を見ることで、漸く「昭和五十一年十一月二十日初版発行」であったことが分かった*1
 しかし私はまだこの【初版】を見ていない。
・『改編 風の又三郎昭和六十三年十二月十日初版発行・定価260円・168頁
 本書の書影は国内サイトには見当らず、シドニー最大の日本の古書籍買取販売店Hondarake full of booksのオンラインショップ「宮沢賢治[ 改編 風の又三郎―ガラスのマント ]小説 角川文庫」として挙がっている。私の手許にある本はこの写真に比して色が濃い。
 このカバー表紙は平成元年(1989)3月11日公開の伊藤俊也(1937.2.17)監督「風の又三郎 ガラスのマント」に因んだものである。

風の又三郎 [VHS]

風の又三郎 [VHS]

風の又三郎〜ガラスのマント オリジナル・サウンドトラック

風の又三郎〜ガラスのマント オリジナル・サウンドトラック

 「改編」とあるのだけれども、奥付の発行日は「昭和六十三年十二月十日 初版発行」の1行だけだから、「改編」以前の版がいつ出たのか分からない。かつ、どこをどう「改編」したのかの説明は154〜158頁、堀尾青史「解説」にも見当らない。
 カバー裏表紙には、上部に「ISBN4-04-104009-4 C0193 \260E 定価260円」とある。映画公開の3週間後の平成元年(1989)4月1日に消費税法が施行されており、それ以前のカバーである。発行日の昭和63年(1988)12月10日から映画公開まで4ヶ月あるが、当初からこのカバーだったのであろうか。それにしても昭和末年から平成初年に掛けての事物は、本当にネット上に情報が乏しい。ビデオで発売されながらDVDになっていない映画も多い。
 カバー背表紙は水色地で上部に細いゴシック体と明朝体で「改編風の又三郎」、中央やや下に明朝体でやや小さく「宮沢賢治」、下部に「角川文庫 緑 四〇 9 ―  260」とある。
 カバー表紙折返しには横組みで、上部に、

改編 風の又三郎
  どっどど どどうど……
  青いくるみも吹きとばせ
  すっぱいかりんも吹きとばせ…
 山の谷川の岸にある小さな小学校/に、大風の吹いた朝、ひとりの少年/が転校して来た。
 次の朝、その少年が登校して来る/と、土手の草が、ざわざわ波になり/校庭に小さなつむじ風がまいた。
 谷川の小学校の子供たちは、その/少年があらわれて以来、ふしぎに落/着かない気持ちにおそわれた。
 表題作ほか8編を収録。

とある。標題と本文の間はやや広い。下部の広告は2013年3月5日付「角川文庫の「野性時代」の広告(1)」の、最下部にやや右寄りで1行「カバー写真提供/日本ヘラルド映画」とある。
 カバー裏表紙折返し、やはり横組みで「角川文庫宮沢賢治作品集」1行空けて「注文の多い料理店セロ弾きのゴーシュ銀河鉄道の夜宮沢賢治詩集/改編 風の又三郎」とある。最下部左に明朝体で小さく「カバー 暁美術印刷」、右下にKBマーク。(以下続稿)

*1:と書いたが、問題は実はそう単純ではないらしい。これについては〈改編〉以前の版を確認の上、きちんと整理することとしたい。