「幽霊俥」と云う落語がある。私がこの噺に注意することになった理由は後述するが、とにかく落語の演目を調べるにはまづは『落語事典』を参照するべきだと思ったものの、どこの図書館にもある訳ではなく、何館か廻って漸く、かつて卒業論文執筆時に参照した増補版とは様子の違う、改訂新版を見ることが出来た。
・東大落語会 編『増補落語事典』改訂新版
- 作者: 東大落語会
- 出版社/メーカー: 青蛙房
- 発売日: 1969/04/01
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- 作者: 東大落語会編
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・昭和48年9月10日増補版(611頁)
・平成6年9月30日改訂版(612頁)
・平成20年2月25日改訂7版
私の見た本の奥付にはこの4つの版の発行日が並んでいた。諸版の違い等は別の機会に述べることにして、今は「幽霊車」の項目のみを眺めて置こう。すなわち、443〜449頁「ゆ」の、443頁下段13行め〜444頁上段4行めに、
幽霊車(ゆうれいぐるま)○*1
〔梗概〕九段下の爼橋で二人連れが車に乗ったとこ/ろ、車屋が顔の青い、鼻のつんと高い、やせた車夫で、/ふと気がつくと、赤ん坊をふところに抱いている。わけ/をきくと、女房が先々月赤ん坊を残して死に、夜中に赤/ん坊が乳泣きをすると女房の幽霊が出て来るとか、車を/ひいて山坂にかかると、女房があと押しをしてくれると/か、気味の悪いことばかりいうので、ぞっとして五十銭/やって「もう車はいいよ」と二人で逃げ出した。「きた【443】ねえ貧乏な車屋だと思ったら、幽霊がつきまとってるて/えのはおどろいた」「なるほど、幽霊かもしれねえや」/「どうして」「おあしがなかった」
〔解説〕初代円左がやった。明治時代にできたはなし/であろう。
とある。演題の下の○の中に「百」とあるのは、前付8頁のうちの6〜8頁「速記本一覧」に、6頁下段10〜14行め、
○*2=雑誌「百花園」 金蘭社 明治二十二年五月創刊 / 落語、人情ばなしの速記を主とした雑誌で、明治三/ 十三年までに二百四十册出た。明治の速記本の中で/ は最も価値ある文献だが、いまとなってはなかなか/ 入手しにくい。
とあるのように 速記が雑誌「百花園」に掲載されていることを示しているのだが、近年これを口演する催しがあった。主催の「らくご@座」のofficial web siteの公演記録「REPO 2014」の「2014.3.8(土)/百花園探険部」がそれで、株式会社ミウラ・リ・デザインの中の人のブログの2014年3月08日「らくご@座 自由学園明日館「百花園探検部」」及び、石井式落語のブログ「石井式落語のブログ」の「2014/03/08」付記事に、三遊亭遊雀(1965.1.28生)の口演とその感想が記されている。(以下続稿)