9月20日に関係箇所の入力が終わる前に返却してしまったため、そのままになっていたのを、遅ればせながら補って投稿して置く。
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・別冊太陽 日本のこころ 198「山田風太郎」(4)
うっかりしてこの雑誌について、9月10日付(10)までに挙げて置くべき箇所を落としていた。
40〜48頁「東京出奔と医専時代 1942-1945 」に、45頁右上にカラーで初刊本『滅失への青春 戦中派虫けら日記』の書影が示され、そのキャプションの最後「‥‥、一青年の時代への向き合い方に共感を呼んだ一冊である。」と纏めているが、初刊本は9月5日付(05)に見たように「奇跡のように売れなくて」恐らく初版「七百部」止まりなので、初刊本の書影を示して「共感を呼んだ」と説明されるとそぐわない感じがする。やはり8月19日付(01)に挙げた未知谷版の功績が大なのではなかろうか。そして9月6日付(06)に見た「山田風太郎見参逐語録」に拠ると、未知谷はさらに、昭和21年(1946)以降の日記や、雑誌に載ったきりで単行本に纏められていない小説の続刊を望んでいたらしい。山田氏の歿後、これらの企画が他社によって実現されているのを見ると、少々複雑な気分にさせられる*1。
それはともかく、46頁に白黒写真が上中下3段に掲載されるが、その上段にあるのが、9月8日付(08)及び9月9日付(09)と同じ日記帳の見開きで、左側に下寄せで入るゴシック体横組みのキャプションに、
『滅失への青春 戦中派虫けら日記』の/元になった日記帳【1942(昭和17)年11/月25日〜1943(昭和18)年3月31日】の/最終ページに記録されていた読書録。
とある。これも活字本の昭和18年3月31日条とは配列が異なっている。原文に「/」が使用されているので、改行位置はそれぞれ、大和書房版114頁12行め〜115頁下段3行め「×」未知谷版132頁上段16行め〜134頁2行め「|」ちくま文庫版194頁5行め〜196頁9行め「+」で示す。行頭にある二重鍵括弧開きは半角、閉じと開きが連続している箇所は1字半、行末の二重鍵括弧閉じは場所によっては半角。「/」の前にある二重鍵括弧閉じは大和書房版は半角。○の次にある二重鍵括弧開きは未知谷版とちくま文庫版は半角。
○東京へ来てから以前に倍する惨たる時間。いった|い自×分のしたことは何であったか、と+もかくも読んだ|雑書は左×のごとし。
○『懺悔録』ルソー/『デカメロン』ボッカチオ/|【未132上】『イ×アリング』ローリングス/『ジキ+ルとハイド』ス|チヴンソ×ン/『レ・ミゼラブル』(第三巻)ユーゴー|/『人生読本』×トルス+トイ/『死の家の記録』ドスト|イエフスキー/『東×洋哲学夜話』アダムス・ベック/|『人間+論』アラン/『ソア×ーナの異教徒』ハウプトマ|ン/『寂しき人々』『織匠』ハ×ウプトマン/+『アイ|ヴァンホー』スコット/『神曲』ダン×テ/『ルゴン・|マカール』(第一巻)ゾラ/『生+の誘惑』×【大114上】モーパッサ|ン/『グリーン家殺人事件』ヴァン・ダイン/×『ジョ|カスト』『瘦猫』+『ジャン・セルヴィアンの願い』ア×ナ|トール・フランス/『ラオコーン』レオパルジ/『海|+底×物語』ウイリアム・ビープ/『天路歴程』バンヤ|ン/『科×学物語』ディーツ/『シーホー+ク』サバチ|ニ/『グランド×・ホテル』ヴィッキー・バウム/『ヘ|ンリー五世』『以尺×報尺』+『ハムレット』『ペリクルー|ズ』『タイタス・アンドロ×ニカス』『アセンズのタイモ|ン』『リチ+ャード二世』『ジョ×ン王』『十二夜』『ヴェロ|ナの二紳士』シエクスピヤ/『決×闘』『生活+の河』|クープリン/『氷島の漁夫』『埃及行』ピ×エル・ロ|チ/『イワンの馬鹿』『芸術とはどう+【文庫194】いうものか』×ト|【132下】ルストイ/『初恋』ツルゲーネフ/『小さき町にて』|フ×ィリップ/『ツシ+マ』フランク・ティース/『ド|ン・キホ×ーテ』セルヴァンテス/『日本その日その|日』モー+ス
○『紋章・時計・その他』横光利一/『小僧の神|様・そ×の他』志賀直哉/『北村透谷+集』/『生い立ち|の記』島崎藤×村/『忠直卿行状記・その他』菊池寛/|『色懺悔』『二人×女・+その他』尾崎紅葉/『にごりえ・|たけくらべ』樋口一×葉/『歯車・その他』芥川竜之|介/+『都会の憂鬱』佐藤春×夫/『蒼氓・その他』石川|達三/『泉鏡花集』/『三木露×風詩集』/+『仏蘭西短|篇小説集』森鴎外/『正岡子規集』×/『菊池寛評論|集』
○『人間性』今村正一/『野口英世』小泉丹/『天|災と×国防』寺田寅彦/『バイロン伝』+三好十郎/『西|洋二千年×【大114下】史』浅野晃/『西洋哲学物語』陶山密/『孔|孟思想講話』×高須芳次+郎/『新日本図南の夢』菅沼貞|風/『日本の甲×冑』山上八郎/『良寛の一生』須佐晋|長/+『生命と物質』×服部静夫/『近世日本国民史・吉|宗篇』『同・天保改革篇』×徳富蘇峰/『白楽+天詩集』|【133上】『李太白詩集』大槻徹心/『日×本宗教全史第三巻』比|屋根安定/『江戸ばなし』三+田村鳶×魚/『鴎外論稿』|伊藤至郎/『芥川竜之介研究』大正文学×研究会/『国|難日本歴史』+白柳秀湖/『民族日本歴史』白×柳秀湖/|『ゲーテの生涯』中島清/『南蛮帖』岡田章雄/×+『海|援隊始末記』『陸援隊始末記』平尾道雄/『殺人論・×|毒及毒殺論』小酒井不木/『焰と+色』式場隆三郎/|『城と×要塞』城方久/『聖徳太子』黒上正一郎/『日|本の反省』×大槻憲+二/『楠木正成』浅野晃【文庫195】
○『東海道中膝栗毛』十返舎一九/『野ざらし紀行・|奥×の細道・その他』芭蕉/『近世説+美少年録』馬琴/|『枕草×子』清少納言/『世間胸算用・日本永代蔵』西|鶴/『増×鏡』/『大+和物語』/『柳子新論』山県大|貳/『政談』萩生徂×来*2/『吾妻鏡』/『古今和歌|集』/『読+史余論』新井白石/×『正法眼蔵随聞記』*3/|『近世実録全書全十九巻』/『脚本傑作×集』/+『御家|騒動実記』/『京伝傑作集』/『忠臣蔵浄瑠璃集』×|『珍本全集』
○『南国太平記』『大阪落城・その他』『楠木正成・|その×他』直木三十五/『ごろつき船』+大仏次郎/『江|【未133下】戸川乱歩×小説集』/『小酒井不木探偵小説集』/『五|代友厚』直木三十×【大115上】五/+『日本仇討物語』直木三十五 【未134上】
○これだけこんなものを読んでちゃ、入学試験に通|るワ×ケがない。
日記原本では、右頁の最初の2行は空白で、3〜4行めに、
東京へ來てから一年になった。以前に倍する慘たる一年。――この間、自/分のしたことは何であったか、讀んだ本は次の如くである。
と前置きして、残り11行は上下2段に書名を列挙。まづ上段に11点並べて、下段に11点。左頁は上段15点、次いで下段15点。左右の括弧に挟まれた算用数字で番号を打ち、上段は1字下げ、下段は同じ高さに揃える。再現するのは困難なので、段ごとに示すことにする。
右頁5〜15行め上段、
(1) 懺悔録(ルソオ)
(2) デカメロン(ボッカチオ)
(3) 人間性(今村正一)
(4) イアリング(ローリングス)
(5) 野口英世(小泉丹)
(6) 紋章、時計其の他(横光利一)
(7) ジーキル博士とハイド氏(スチブンソン)
(8) 天災と國防(寺田寅彦)
(9) レ・ミゼラブル第三巻(ユーゴー)
(10) 人生讀本(トルストイ)
(11) 死の家の記録(ドストイエフスキー)
右頁5〜15行め下段、
(12) アダムスベック―東洋哲學夜話
(13) 東海道膝栗毛(十返舎一九)
(14) 人間論(アラン)
(15) 小僧の神様他(志賀直哉)
(16) 北村透谷集(島崎藤村編)
(17) 幼ひ立ちの記(島崎藤村)
(18) バイロン傳(三好十郎)
(19) 忠直卿行状記他(菊池寛)
(20) 西洋二千年史(浅野晃)
(21) ソアーナの異教徒他(ハウプトマン)
(22) 西洋哲學物語(陶山密)
左頁上段、
(23) 孔孟思想講話(高須芳次郎)
(24) 新日本圖南の夢(菅沼貞風)
(25) 寂しき人々、織匠(ハウプトマン)
(26) 南国大平記(直木三十五)
(27) 大阪落城 他(直木三十五)
(28) 楠木正成 他(直木三十五)
(29) ごろつき船(大佛次郎)
(30) アイワンホー*4(スコツト)
(31) 神 曲(ダンテ)
(32) ルゴン・マカアル第一巻(ゾラ)
(33) 生の誘惑(モオパッサン)
(34) 野ざらし紀行奥細道他(芭蕉)
(35) 近世説美少年録(馬琴)
(36) 色懺悔(尾崎紅葉)
(37) 二人女他(尾崎紅葉)
左頁下段、
(38) グリイン家殺人事件(ワン・ダイン)*5
(39) にごりえ、たけくらべ(樋口一葉)
(40) 江戸川亂歩小説集
(41) 齒車其の他(芥川龍之介)
(42) 都會の憂鬱(佐藤春夫)
(43) 蒼氓其の他(石川達三)
(44) 日本の甲冑(山上八郎)
(45) 良寛の一生(須佐晋長)
(46) 生命と物質(服部靜夫)
(47) ジヨカスト・瘦猫(アナトール・フランス)
(48) ジャン・セルヴイヤンの願ひ(アナトール・フランス)
(49) 近世日本國民史吉宗篇(蘇峰)
(50) 白楽天詩集(大槻徹心)
(51) 李太白詩集(大槻徹心)
(52) 日本宗教全史第三巻(比屋根安定)
活字本は西洋文学、日本の近代小説、評論・研究、古典、大衆小説に分類しているが順序は『同(近世日本国民史)・天保改革篇』以外は日記原本の通りである。すなわち、日記原本にはさらに2頁、この列挙が続いていたはずである。(以下続稿)