瑣事加減

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小松和彦監修『日本怪異妖怪大事典』(1)

【監修】小松和彦編集委員小松和彦常光徹山田奨治・飯倉義之『日本怪異妖怪大事典』定価18,000円・東京堂出版・658頁・A5判上製本

日本怪異妖怪大事典

日本怪異妖怪大事典

・2013年7月20日 初版発行
・2013年7月31日 再版発行
 カバー表紙折返し、下部にゴシック体横組みで小さく「カバー :『百鬼ノ図』部分(国際日本文化研究センター)」とある。
 見返しは紅緋色。扉は紺色単色で、カバー表紙と同様の暗雲の背景に、標題と監修・編集委員をやや縮小して示す。裏は白紙。
 アート紙のカラー口絵が8頁(頁付なし)あって、近世以前の妖怪画を示す。
 頁付を括弧で括った前付が24頁、(1)〜(2)頁「はじめに」は段組なしで行間も広い。(3)頁「目次」は2段組、上段に前付、下段に本編について示す。左下に明朝体縦組みで小さく「 扉図版『百鬼ノ図』(部分)/国際日本文化研究センター蔵」とある。
 (4)〜(21)頁「解説」も2段組で、小松和彦「怪異・妖怪とはなにか」(4)〜(11)頁下段5行め、常光徹「妖怪と呪的なしぐさ」(11)頁下段6行め〜(17)頁上段11行め、飯倉義之「現代の怪異・妖怪と都市伝説」(17)頁上段12行め〜(21)頁上段8行め。このうち、小松氏と飯倉氏が編集の意図等に触れているので、その部分を見て置こう。
 まづ、小松氏の解説の冒頭、(4)頁上段3〜17行め、

 怪異・妖怪という言葉について
 最初に、本書を『日本怪異妖怪事典』と名づけた理由に/ついて述べる。「怪異」という言葉も、「妖怪」という言葉/も、文字通りに理解すれば、不思議な、神秘的な、奇妙な、/薄気味悪い、不安を抱かせる、といった形容詞がつくよう/な現象や存在を意味する。したがって、怪異・妖怪と並べ/ることは同義反復ということになる。しかし、あえて並べ/て記すことにした。というのは、「怪異」という語が、ど/ちらかといえば「現象」を想起させるのに対して、「妖怪」/は「存在」を想起させるからである。しかしながら、本書/をひもといていただければわかるように、日本の妖怪は、/現象としての妖怪がとても多いのである。そこで、おびた/だしい数にのぼる怪異現象の呼称をできる限り拾い上げた/いとの思いから、本書ではあえて「怪異・妖怪」としたの/である。‥‥

と標題について説明する。この節は(5)頁上段12行めまで、1行分空けて13行めから「妖怪文化の三つのカテゴリー」の節で、さらに(5)頁下段6行めから「・現象としての妖怪」、(6)頁下段13行めから「・存在としての妖怪」、(8)頁上段5行めから「・造形化された妖怪」の3つの項に分かれ(項目名は明朝体太字、字下げなし)、(10)頁上段1行めまで。1行分空けて2行めから「幽霊と妖怪の違いについて」の節で、(11)頁上段10行めまで。1行分空けて最後に以下のようにある。

 以上、手短に日本の妖怪の特徴を述べてきたわけだが、/最後に、本書は「事典」であって「図鑑」ではない、とい/うことを強調しておきたい。本書でとくにこだわったのは、/民間伝承のなかに語られてきた、現象としての妖怪の呼称/であり、そのような現象を引き起こしたとされる妖怪存在/であり、そうした妖怪の属性・特徴についてである。その/多様な様相を示すことが、日本の妖怪文化の特徴を物語る/ことだと思われるからである。日本には古くから妖怪を描/いた絵巻や絵本、錦絵等があるが、それに基づく妖怪図鑑/の作成については、別に考えるべきなのである。
 なお、本書は国際日本文化研究センターが制作し公開し【上段】ている「怪異・妖怪伝承データベース」を基礎にして、そ/れを増補するかたちで項目の選定を行なっている。しかし、/ここに収録されていない妖怪名彙はまだたくさんあると思/われる。今後、さまざまな機会を見つけて、絶え間ない増/補がなされる必要があろう。


 この「ここに収録されていない妖怪名彙」として、今年(それ以前から同人誌として一部に流通していたらしいのだが)5月30日付「朝里樹『日本現代怪異事典』(1)」等に触れた『日本現代怪異事典』が刊行された訳だが、この本について小松氏・国際日本文化研究センターがどういう態度を示すのか、少し気になっている。……特に調べていないけれども。(以下続稿)