瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小松和彦監修『日本怪異妖怪大事典』(2)

 昨日の続き。
 さて、小松氏は原義を持ち出して「怪異」と「妖怪」を「同義反復」とするが、「怪異現象」と云っても「妖怪現象」とは云わないし、「妖怪」には会っても「怪異」に会うとは(云えなくもないが)云わないだろう。「怪異」でも何でもない「現象」を、名前の付いているモノつまり「妖怪」に結び付ければ、すなわち「現象」に名前を付ければ、それは「存在」となる。別に「存在」を目撃する必要はないのである。
 飯倉氏の解説から編集に関する記述を抜いて置こう。冒頭、(17)頁上段14行め〜下段17行め、

 事典の特色とその狙い
 はじめに、既存の妖怪辞典・事典類と比較しての本事典/の特色を確認しておきたい。
 まず本事典では、国際日本文化研究センターの研究支援/データベース「怪異・妖怪伝承データベース」(http:///www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB/ で利用可能)に収録された、【上段】民俗学関連雑誌・都道府県市・『日本随筆大成』記事・柳/田國男「妖怪名彙」(『妖怪談義』所収)からデータ化され/た「民間に伝承されていた怪異・妖怪の民俗資料報告」に/拠って立項し、ほぼすべての項目に具体的な事例の要約を/付している。
 これまでの多くの妖怪事典は、民俗学の報告書に記載さ/れた民間伝承の妖怪と、近世〜近代の絵師・作家らの創作/による妖怪、たとえば近世の絵師・鳥山石燕が『画図百鬼/夜行』(一七七六年)などで創作したような化け物たちを同/列に扱って記載している。民間伝承の妖怪と創作された妖/怪との区別をしないそうした排列は、日本の妖怪文化の広/さや深さを知る事ができる利点があるものの、民族文化に/おいて広く共有された概念と、文芸的な創作とが混同され/てしまう懸念がある。本事典では、あえて後者の、創作さ/れた妖怪を立項せず、日本の民俗文化の中で無意識的に共/有されてきた言語芸術や心意現象、いわば集団の想像力に/おける怪異・妖怪を把握する事典を目指した。


 「都道府県市」は「都道府県史」の誤変換であろう。或いは「都道府県市町村史」の「町村史」の脱落か。――『県史』や『市誌』の類には大抵「民俗篇」があって、このような伝承に触れるところがある*1
 この辺りは、解説の次、(22)〜(23)頁「凡 例」の、(22)頁下段16行めまでの「1 項目の設定」の前半と重なる。(22)頁上段3〜14行め、

 本事典の項目は、国際日本文化研究センターの怪異・妖怪データ/ベースプロジェクト(代表・小松和彦が製作した「怪異・妖怪伝/承データベース」収録の、民間に伝承されていた三万五七〇一件の/怪異・妖怪事例、および同データベースに収録されていない現代の/民俗事例、アイヌの事例から立項した。
 したがって本事典では、民間に伝承されていなかった、近世の絵/師や文人、近代の作家や画家・漫画家が創作した妖怪については、/知名度は高くとも立項は避けた(例:江戸期の画家・鳥山石燕が『画百鬼夜行』で創作した「甕長」や「泥田坊」、現代の漫画家・水木しげるが創作した「鬼太郎」や「ねずみ男」等)。反面、既存の事典では立/項されてこなかった現代の伝承も、報告のある限り積極的に立項し/収録している(例「UFO」「メリーさんの電話」等)


 飯倉氏の解説に戻って、1節めは(18)頁上段14行め、2節め「「民間伝承の妖怪」のなかの「現代の妖怪」」(18)頁上段15行め〜(19)頁上段。3節め「現代の怪異・妖怪――都市伝説、学校の怪談、オカルト」(19)頁下段〜(21)頁上段8行め、(21)頁は殆ど余白である。
 「凡 例」の(22)頁下段17行め〜(23)頁下段19行め「2 各項目の構成」については、今後、各項目を引用する際に、必要に応じて確認することとしたい。
 前付の最後、(24)頁は6段組で「目次」には「執筆者一覧」とあるが、5段めまでの「●執筆者一覧*2/  (五〇音順)」の前、1段めの初めに「●監修」「●編集委員」がカバー等と同じ順序で入り、そして6段めは「●装丁・口絵デザイン/長谷川 徹」の2行のみ。「●執筆者一覧」は99名で「●監修」及び「●編集委員」の4名も含まれている。(以下続稿)

*1:7月27日付(3)に引いた山田奨治「あとがきにかえて/妖怪データベースから妖怪事典へ」にあるように、これは前者――「都道府県史」の誤入力である。

*2:見出しは明朝体太字。