瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

今野圓輔『幽霊のはなし』(06)

 一昨日からの続きで、第一章の3節めを見て置こう。
 43頁、章題と同じ大きさの明朝体、3行取り1字下げで「戦 争 と 幽 霊*1」とあり、さらに1行空けて、3行取り2字下げで一回り大きなゴシック体の項目名。この節からは写真が挿入されており、ゴシック体横組みでキャプションがある。キャプションの引用に続けて位置の上か下かを注記した。
  首だけと首なしと(63頁2行め〜)
    イラスト、63頁上
    写真、63頁中左「柴田勝家の住んでいた城あと」下
    この節には文献名が殆ど挙がっていない。64頁8行め〜65頁1行め、

 柴田勝家の首なしの武者行列という話は、話だけで、ほんとうはだれひとり見た者はいなかった/のかもしれない。見たら死ぬのでは、生き証人ののこったわけもないので、しらべようもないが、/青森県には、首なしとは反対の、首だけの幽霊話が、昭和四十六年(一九七一年)ごろに話題になっ/ていた。*2
 人身事故をおこした乗用車のボンネットに、血だらけのなま首だけが、ひょいとのっかるという/話である。ただみたいな値段で、つぎつぎに転売され、持ち主はかわっても、その自動車を運転す/るとでるという。くわしくは記憶していないが、地もとの新聞にも報道された有名な幽霊だとのこ/とだった。血だらけのなま首だけの幽霊スタイルなどは、かつての平和な村の日常生活のなかでは/考えられないことで、これではもう、妖怪に近くなる。*3

    この引用の前に首なしの武者行列の他に、伊豆諸島の海難坊主に触れている。
    この引用に続けて“首きれ馬”という妖怪が各地に分布していることに触れる。
  八幡のヤブ知らず*4(65頁5行め〜67頁13行め)
    イラスト、65頁左上・66頁右上
    写真、66頁右下「神田明神」上(頁付なし)
       67頁左上「平家の人たちの化身といわれる平家ガニ*5」下
  うかばれない戦争犠牲者たち*6(68頁1行め〜71頁11行め)
    イラスト、69頁左上
    写真、68頁右上「悲惨なベトナム戦争*7」下
       70頁右上「妖怪に近い幽鬼*8」下
       71頁左上「無名戦士の墓*9」下
    68頁9行めの末尾に小さく「(東京新聞 昭和46年6月23日)」
「首だけの幽霊話」について、単行本『現代民話考|Ⅲ| 偽汽車・船・自動車の笑いと怪談』及びちくま文庫版『現代民話考[3]偽汽車・船・自動車の笑いと怪談』 (二〇〇三年六月十日第一刷発行・定価1300円・筑摩書房・444頁)にて類話を検索すると、「中古車の怪」として6話が挙がっている。
 安い中古車を買ったら幽霊が出たり、事故に巻き込まれたりして、実は死亡事故を起こして安く売りに出されていた事故車だったことが分かった、と云うパターンなのだが、例によって『現代民話考』の分類は「中古車の怪」と云うより「事故車の怪」とした方が適当で、事故車が中古車として転売されて、と云う前提ではない話が2つ、うち1話は事故車の清掃を担当した運転手が取り憑かれるので、事故車に怪異が起こる訳ではないのである。――これについては長くなるので、別に検討することとしよう。(以下続稿)

*1:ルビ「ゆうれい」。

*2:ルビ「しばた かついえ・くび・む しやぎようれつ/い・しようにん/わだい/」。

*3:ルビ「じこ・くび/ねだん・てんばい/き おく・ほうどう//ようかい」。

*4:ルビ「や わた」。

*5:ルビ「へ いけ」

*6:ルビ「ぎ せいしや」。

*7:ルビ「ひ さん」。

*8:ルビ「ようかい・ゆう き」。

*9:ルビ「はか」。