瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

田辺貞之助『江東昔ばなし』(1)

『江東昔ばなし』菁柿堂・四六判
 浪人時代に入り浸っていた図書館で上製本を愛読していた。最近になって、並製本が刊行されていることに気付いた。
上製本(昭和五十九年六月十五日第一刷発行・定価一二〇〇円・190頁)
並製本(二〇一六年四月五日 第一刷・定価1600円・214頁)

江東昔ばなし

江東昔ばなし

 まずカバーについて。地色は並製本は白だが上製本は少し黄色い。上製本は濃い灰色で文字とスケッチが印刷されているが、並製本は黒である。
 カバー表紙の淡彩のスケッチは同じものが使用されている。上製本では建物や舟の屋根に赤、水面に藍が使用されていたが、並製本は水面に使われている淡い青紫だけになっている。位置も、上製本は上1/4が余白で特に水面の広さ・奥行きの強調された構図になっていたが、並製本は後述するように上半分を余白にして文字を詰め込んだために、上製本の下部1/4の水面がカットされ、奥行きを感じさせないものとなっている(空が広くなっている勘定になるが、もともとの構図が水面に目を注いで描かれたものだから、残念ながらそのような広さも感じられないのである)。
 カバー表紙の文字は全て縦組み、上製本は上部中央に古印体で標題、その右脇、上寄せで小さく、隷書風の著者名、下部中央にさらに小さく古印体の版元名。並製本は青の長方形(11.2×2.2cm)に明朝体白抜きで標題が入る。上製本では「江東」と「昔ばなし」の間が僅かに開いているように見えたが、並製本ははっきり「江東 昔ばなし」と空いている。右脇に明朝体で著者名、位置が「昔」の上半分までであるのは上製本と同じ。長方形のすぐ下に明朝体で小さく版元名。上製本にはこれ以外に文字はなかったが、並製本は左上にポップ体で、

著者は一九〇五年、江東区砂村生れ。/東大でフランス語を学び、のち東大/教授。その軽妙で楽しい語り口で、/生れた土地への愛着を、歴史と人情/話に託して語ります。

との紹介文が入る。――著者が生れた当時は東京府南葛飾郡砂村であったが、大正10年(1921)7月に町制施行して砂町になり、さらに昭和7年(1932)10月に亀戸町・大島町とともに東京市に併合されて城東区となった。戦後、昭和22年(1947)3月に深川区と合併して江東区になったので、「江東区砂村」はおかしい。しかし、改廃の激しい地名は正確に記述すると長くなってしかもそれで読者に通じる訳でもないので、仕方がないのかも知れない。いっそ「江東区砂町」で良いのではないか。「語り」が繰り返されるのもくどいようだ。
 カバー背表紙、上製本はカバー表紙と同じ字体で、若干縮小して、上部に標題、「し」の字が掛かるスケッチの対岸の大屋根の倉庫は霞まされている。中央やや下に著者名、最下部に版元名。並製本は全て明朝体で、大きな標題の「江東」と「昔ばなし」の間は、カバー表紙よりも詰まっている。著者名は下部、最下部の版元名は横並び。
 カバー折返し、表紙折返しにスケッチの左端が少し割り込んでおり、並製本は右下にゴシック体縦組みで1行「装画/間瀬直方」とあるが、上製本にはない。裏表紙折返しには上製本並製本とも何も刷られていない。
 カバー裏表紙、中央やや上に「SEISHIDO」のマークがあるのは共通。上製本は下部中央に横組みで2行「菁柿堂・発行/発売・星雲社 定価1,200円」「ISBN4-7952-7909-8 C0095 \1200E」とあるのみであったが、並製本は左上にバーコード2つ「9784434219078/1920093016001」、ゴシック体で「ISBN978-4-434-21907-8/C0093 \1600E」明朝体で3行「定価(本体1600円+税)」「発行/菁柿堂」「発売/星雲社」最後の2行は詰まる。そして下部の枠(4.9×10.5cm)の中にポップ体縦組みで、

江東 昔ばなし       ※
深川のあちこち
小名木川の川筋
江東のミステリー
幼時の想い出*1
江東と異変         ※
大正六年の大津波
関東大震災
太平洋戦争
江東の人と暮し       ※
江東の夫婦
江東の男たち
江東の女たち

と内容を示すのだが、目次を見るに仮に※印を添えた3つの章に、続く3つないし4つの節があるので、これを区別せずに同じように並べてしまったのはポップ体とともに(確かに軽妙な文体なのだけれども)そぐわない感じがする。(以下続稿)

*1:目次・本文とも「幼時の思い出」。