瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

遠藤周作『海と毒薬』(07)

・角川文庫1932(3)
 四十版を見た。
【四十版】昭和三十五年七月三十日初版発行・昭和六十二年五月二十日四十版発行・定価260円・165頁
 角川文庫は奥付に改版と示さないため版次を整理しがたいので、一覧にして示さず見た順にメモすることにしたが、それではどうも面倒である。しかし、四十六版と五十九版を比較しつつメモした2013年7月8日付(01)及び2013年7月9日付(02)に注記するのも手間なので、ここに別にメモして置くことにする。
 カバー表紙は四十六版に同じ。バーコードを裏表紙の余白に貼付しているので白抜きゴシック体「角川文庫」も見えている。
 カバー背表紙、裏表紙も四十六版に同じ。
 カバー表紙折返し、上部の紹介分は四十六版に同じ。下部の広告は2013年9月13日付「角川文庫の「月刊カドカワ」の広告(1)」の①、最下部の「カバー写真」云々は四十六版に同じ。
 カバー裏表紙折返し、五十九版は最上部中央に「角川文庫遠藤周作作品集」とあって1行分空けて明朝体で、以下左右2列に「海と毒薬 おバカさん/ヘチマくん 闇をよぶ声/恋愛とは何か ぐうたら生活入門/火山 現代の快人物/古今百馬鹿 黒ん坊/ぐうたら会話集第1集 ぐうたら会話集第2集/ぐうたら会話集第3集 わが青春に悔いあり/狐型狸型 ぐうたら漫談集/灯のうるむ頃 観客席から/天使」計19点を列挙する。標題は字数の多いものは活字が縦長で詰まっており、少ないものは均等割付。下左に小さく「カバー 暁美術印刷」右下にKBマークがあるのは同じ。
 これは、1列に11点挙げていた四十六版よりも左右2列に20点21冊を列挙していた五十九版に近く、五十九版の最後「宿敵(上)(下)」が見えないだけである。すなわち私の見た四十版のカバーは、以前見た四十六版のカバーよりも新しいと思われるのである。形式面に注目すれば1列→2列と云う流れを想定すべきであろうから、カバー裏表紙折返しからすると四十六版→四十版→五十九版という順序になるはずである。しかしながら、四十六版のカバーに見えない「火山 現代の快人物/古今百馬鹿 黒ん坊/ぐうたら会話集第1集 ぐうたら会話集第2集/ぐうたら会話集第3集」と「観客席から」の8点8冊について国会図書館OPACにて検索するに、いづれも四十版よりも前に刊行されているのである。
 五十九版に追加されていた『宿敵』上下2冊は昭和62年(1987)9月刊で、これが四十版及び四十六版のカバーの下限として考えて良いであろう。四十版カバーは昭和62年(1987)5月刊の本体以前に刊行されていたものを網羅していることになるが、昭和63年(1988)7月刊の四十六版が『宿敵』上下2冊を載せていないのは奇妙である。やはり四十六版カバーは、四十版カバーより早い時期のものと考えざるを得ないように思う。
 さて、四十版から四十六版まで増刷の頻度が高まっているのは、昭和61年(1986)10月17日の熊井啓監督映画『海と毒薬』公開がきっかけなのだと思われる。四十六版カバー時点では在庫切れだった8点の復刊も、これに関連する動きかと思う。――四十六版は映画公開から2年近く経ってからの増刷なのだが、私の見た本はカバーだけ映画公開より古いものを使用したことになる。カバーだけ新しいものに掛け替えたと思われる例はいくつも見て来たが、このように古いカバーを出して来て掛けたと思われる例は殆どなかったように思う。

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 この見当を確実なものにするためには、同じカバー*1の掛かった本の探索――あまり図書館でも見掛けないのだが、これに努めるしかなさそうだ。
 本体について、奥付は四十六版と同じらしく異同はそれぞれの発行日と「製本所――文宝堂製本」のみであろうか。
 奥付裏の「角川文庫発刊に際して」に続く3段組(1段21点)の「角川文庫目録 現代日本文学(緑帯)1987年1月」の(4)〜(9)頁に、「角川文庫 最新刊」1頁に10点の(49)(50)頁。(以下続稿)

*1:このカバー表紙の写真が映画から採られたものであれば上限の見当も付けられるのだが、全編白黒と云う映画(未見)とは関係ないもののようだ。