瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山岸凉子「ひいなの埋葬」(1)

 なかなかの力作で、単行本及び全集では表題作になっていました。 
花とゆめCOMICS

山岸凉子全集32
 しかしながら、その後、漫画の文庫版がブームのようになって刊行された、山岸氏の選集(白泉社文庫・文春文庫・秋田文庫・MF文庫)には収録されませんでした。
 そのため、久しく読む機会がなかったのですが、漸く、次の選集にて読むことが出来ました。
山岸凉子スペシャルセレクションIX『鬼子母神 2010年12月20日第1刷発行・定価1,200円・潮出版社・403頁・四六判並製本
鬼子母神 (山岸凉子スペシャルセレクション)

鬼子母神 (山岸凉子スペシャルセレクション)

 そして、これは確かになかなか扱いが難しい作品だと思った次第です。
 単行本か全集と『山岸凉子スペシャルセレクション』を比較した上で記事にしようと思ったのですが、その余裕がないので、差当り『山岸凉子スペシャルセレクション』によって、内容を確認して置きましょう。
 山岸凉子スペシャルセレクションIX『鬼子母神』に収録されている作品のうち、5〜54頁「鬼子母神*1」、131〜171頁「かぼちゃの馬車」、174〜247頁「緘黙の底*2」、249〜264頁「副馬*3」の4作品は読んだことがあります*4。57〜88頁「グリーン・フーズ Part1」89〜128頁「グリーン・フーズ Part2」266〜305頁「死者の家」そして307〜403頁「ひいなの埋葬」は初めて読みました。
 冒頭4頁(307〜310頁)は初出ではカラーだった頁で、308〜309頁見開きは、前付4頁(頁付なし)のカラー口絵「山岸凉子/カラー原画セレクション」の見開き(2〜3頁め)として収録されています。1頁めも同じく左下に「「ひいなの埋葬より」とあるのですが、このイラストは本文には収録されていません。場面としては348頁5コマめ〜352頁5コマめに当たりますが着物の柄は一致しません。イメージ画として別に描かれたものでしょうか。巨大なお雛様の扇の持ち方も異なります。カバー裏表紙の着飾った幼女の半身像のカラーのカットは、310頁4コマめから採った「美しい女の子」です。
 403頁と奥付の間にある「初出一覧」に本作は「ひいなの埋葬 ひいなのまいそう花とゆめ」(白泉社)1976年6号」と見えているのですが「くだん書房」の古本リスト「花とゆめ」の書影等を参照するに、「花とゆめ」1976年6号(3月20日号)に「かきおろし大長編シリーズ―4」として掲載されています。題からも察せられるように雛祭りとその前後が描かれていて、掲載時期に合わせて考えると昭和51年(1976)の3月3日と云うことになりそうですが、結末、401頁5コマめ〜407頁(3コマ)に、401頁5コマめの弥生の台詞に「今日から新学期ね ガンバラなくちゃ」とありますので4月上旬、昭和51年とすると未来のことになってしまいますから、若干遡らせた方が良さそうです。
 舞台となった梨本家の所在地はどこだか分からないのですが、主人公の川島弥生は最初、新幹線で移動しています。弥生を梨本家に招いた、代々梨本家の侍医を務めている影尾雪*5が、312頁1コマめ〜314頁4コマめ、弥生の養家を訪ねて初対面する場面で、314頁3コマめ「いえ めったに上京しませんので用事もたまっておりますから」と言っているところからして、弥生は東京在住です。(以下続稿)

*1:読み「きしもじん」。

*2:読み「しじまのそこ」。

*3:読み「そえうま」。

*4:2015年4月16日付「山岸凉子『黒鳥』(1)」に取り上げた白泉社文庫『黒鳥』111〜185頁「緘黙の底」(ルビ「しじま」)189〜238頁「鬼子母神」、文庫に収録されているのはこの2作品のみで「かぼちゃの馬車」は2015年8月12日付「山岸凉子『ティンカー・ベル』(1)」に取り上げたサンコミックス『ティンカー・ベル』にて、「副馬」は花とゆめCOMICS『日出処の天子』第10巻にて読みました。

*5:男性。ルビ「かげおきよし」。