瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山岸凉子「ひいなの埋葬」(10)

 昨日の続き。
山岸凉子スペシャルセレクションIX『鬼子母神』(10)
 さて、一人娘の死亡により追い詰められた静音の祖母は、梨本家の存続のため、恐るべき計略を巡らすのです。――娘の遺した男児血友病であるかどうか、可能性は半々のはずなのですが、初めから血友病患者のつもりで対処しています。出産時に既にその兆候が見えていたのでしょうか。しかしそれにしても男児が100%血友病患者(そして女児もほぼ100%保因者*1)とは、有り得なくはないですが……380頁1コマめの系図は、血友病患者・保因者でなかった人がかなり省略されているので、Victoria女王の子孫に、どのくらい患者・保因者が出たのかを判断する材料としては適当ではないのですが、それでも血友病患者■11名、保因者●8名に対して、血友病患者でない男性□も5名(他に結婚相手の□7名)記載されています。保因者でない女性○5名(他に結婚相手の○1名)については、保因者であった可能性があるのですが、とにかく、9月3日付(6)に引用したシズオの発言にあるような、極端な、子孫を絶滅させるような病気ではありません。
 それはともかく、2月28日に静音の祖母は到着した弥生と対面して、330頁3コマめ〜331頁3コマめ、

老婆:「あなた川島の弥生殿ですね」
弥生:「は はい 初めておめにかかります」(この人が梨本家の当主なのね)
老婆:「おいくつになられました?」
弥生:「16です」
老婆:「16… それはもう立派な大人ですねえ」ニタッ
弥生:?【330】
老婆:「でもほんと あなたが来てくれてホッとしましたこれで梨本家は安泰です お礼をいいますよ」
弥生:「!?」(雛の節句に招待されて来ただけなのにずいぶんおおげさな)

との謎めいた言葉を掛けるのですが、この老婆は、実は男である静音を表向きは女として*2、満16歳の、女性としては婚姻適齢に達してすぐに、全ての秘密を知っている、主家に何処までも忠実な主治医・影尾雪を入婿として結婚させる一方 いつ死ぬか分からない孫の静音に、家柄の点では問題のない川島弥生*3を手籠めにさせ、強制的に梨本家の血筋を残そうと企んでいるので、こんなことを言っているのです。
 前回、孫の男児を「女として発表した」理由が正直分からない、と書きましたが、女子であれば18歳になるまで結婚出来ない男子よりも2年早く結婚が可能になるのです。――隠蔽可能な部分は法律も人権もあったものでないようなことをやろうとしていながら、表立って法律に反するようなことは(家名に傷が付きますから)しないのです。(以下続稿)

*1:8月23日付(03)で考えて見たように、弥生や進・京子兄妹の祖母が梨本家出身の可能性があるのですが、……そこまで読み込むことは要求されていないとは思うのですけれども。

*2:表記は同じで、女性としては「しずね」男性としては「シズオ」と読みます。

*3:老婆にとって、川島家は入り婿である自分の父親の実家と云うことになります。