・鈴木則文監督『ドカベン』(18)
映画では、長島は故障していない。県大会の直後に敗戦の責任を取って退部したところ、他の部員たちも辞めてしまう。そこで生徒会では「緊急生徒会議題/野球部再建の件」なる生徒会役員の集まりを開いて、長島を説得する。副会長の朝日奈麗子も当然、積極的に長島の説得を試みている。最初は渋っていた長島であるが「山田の入部」を復帰の条件として提示する。大河内生徒会長は「山田には一切の部活を認めない、それが生徒会の決定だ」と突っぱねるが、結局は折れて山田の入部を認めるのである。――確かに、明訓高校に(映画では原作で中学時代のことであった柔道部や長島の件が、全て高校2年生のときのこととなっている)山田以外、長島の変化球を捕球出来る人物がいないのだから、山田抜きで復帰したところで意味はないのである。
そして、何故か生徒会長や殿馬や柔道部の面々まで野球部に移って、何故かいなくなってしまった前監督に代わって徳川監督(水島新司)が就任し、2本作られたうちの2本めの予告篇*1に拠ると「明訓ナインの/天突く夢は/さあ!センバツだ!」と云うことで、高校2年の秋の地区大会に向けて始動する、と云ったところで映画は終わるのである。映画だと「かくして/明訓野球部は/高校球児達の夢/甲子園球場/目指して/突撃を 開始/したのである」と最後に文字で説明して「ドカベン/完」なので、目指すところがちょっと分かりづらい。映画では昭和52年(1977)夏まで話が進んでいるはずなので、確かにセンバツを目指すのだろうけれども、ゴールデンウィークに公開の映画でセンバツを目指すと云う結末は、どうも先取りし過ぎているような気がする。
この辺りの細かい経緯も、映画は原作の設定を微妙に、或いは大胆に捻っているのだが、それはまた改めて、映画を再見した上で詳述しようと考えている。
それはともかく、地区大会の初戦で負けてしまった鷹丘中野球部と違って*2、明訓野球部は甲子園を目指すことになっているのだが、原作の明訓野球部のメンバーのうち、中学時代から山田と一緒だった岩鬼と殿馬しか、映画には登場しない。しかも長島と山田以外はド素人の野球部で、これからどうやって甲子園を目指すつもりなのか、大いに疑問で、本作の感想を書いているブログやTwitterの多くに、この、本格的に野球を始めようと云うところで尻切れ蜻蛉に終わる作りからして「続編」を作るつもりだったのだろうけれども、不人気だったので本作のみで打ち切りになったのだ、とあるのに対して、私はどうにも信じられないような気分でいたのである。――いや、これに続編なんて無理でしょう、と。(以下続稿)