瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

水島新司『ドカベン』(45)

鈴木則文監督『ドカベン』(35)『東映ゲリラ戦記』(4)
 11月9日付(44)の続きで「本社宣伝部作成の映画館配布文」のうち、気になる箇所を幾つか見て置こう。
 まず6行のリード文があるが、最後の2行(158頁2〜3行め)に、

 全国3000万ファンの
  熱望にこたえ遂に映画化!

とある。どのくらい「熱望」があったのかは、原作の掲載誌「週刊少年チャンピオン」が本作をどのように扱っていたか、跡付けるべきであろう。いづれそのような調査が必要になるであろうが、そこまでする余裕がない。

漫画+映画! ~漫画原作映画の現在地 (映画秘宝セレクション)

漫画+映画! ~漫画原作映画の現在地 (映画秘宝セレクション)

 漫画の実写映画化については、本作の写真を表紙に使用しているこの本を参照すべきであろうが、未見。
 158頁10〜12行め、

 映画は、甲子園出場をめざす明訓高校野球部の活躍ぶりを、さまざまなエピソードを/まじえて描かれている。
 主人公は、柔道部から野球部に転部するキャッチャーの山田太郎、‥‥

 続けて岩鬼正美と長島徹が紹介される(12〜14行め)。――山田が野球部に入るのは最後の最後、しかも練習するだけで「活躍」しとらんやないけ、と突っ込みたくなるが、10月15日付(26)に言及した、2本作られたうちの2本めの「特報」に写されているオーディション会場には「東映映画ドカベン主演三役募集審査会場」とあった。1本めの「特報」は「主演3大公募! 」の告知である。
 そうすると、最後に柔道部から野球部に転じた山田と岩鬼だけではなく、初めから「野球部」主将として「活躍」していた長島徹も「主演」扱いなので、この書き方でも間違いとは云えない、ことになる。しかし、見に行った小学生たちは(この宣伝文を読んだとして)そうは思わないだろう。いっそ「ドカベン 柔道部篇」みたいに副題で堂々と「柔道部」を謳ってしまった方が良かったのではないか。
 さて、このオーディションについてはこの宣伝文にも、159頁2〜7行め、

 このように、作品の内容、登場人物のキャラクターが大変ユニークなものだけに、出/演者についても思いきって候補のワクを大きく広げ、一番ふさわしいキャストを求めよ/うと、主演の山田、岩鬼、長島の三役について一般公募をした。
 そして、2700名の応募の中から、橋本三智弘(山田太郎役、日大横浜在学中、17/歳)、高品正広(岩鬼役、建設業手伝い、23歳)、永島敏行(長島役、専修大学2年、20/歳)の主役3名が決定した。

とある。8月31日付(04)に紹介した、黒木鉄也の8月2日付tweetに引用された、昭和52年(1977)2月の「日刊スポーツ」の記事によると、公募時に橋本氏は高校1年生16歳、永島氏は大学2年生だったはずなので、公開時に橋本氏「17歳」は4月中に誕生日を迎えたとしておかしくないが、永島氏が新年度に入っても2年のままなのはおかしい*1
 それから、158頁16〜17行め「‥‥。ドカベンのラ/イバルとなる影丸、賀間、柔道部主将のゆびすけ、‥‥」とあるが、影丸は原作では高校野球を始めてから投手として山田と対決するが、柔道部時代には9月27日付(15)及び10月14日付(25)に見たように、そして原作でも専ら、岩鬼の好敵手だった。かつ「ゆびすけ」は「わびすけ」である。これは原文の誤植を踏襲したのか、鈴木氏の執筆時の誤記なのか、入力時のミスなのか、どの段階で生じたのか分からないが、とにかく校正漏れである。(以下続稿)

*1:留年の可能性もあるけれども。