瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

水島新司『ドカベン』(23)

・理事長の名前
 私は長島や、朝日奈アッコにこだわり過ぎているかも知れぬ。
 長島は、続編に登場するのかどうか、読んでいないので確かめていないが、本編の最後に1度だけ、ちらっと登場する。すなわち、9回裏に山田の逆転満塁ホームランで選抜二年連続優勝(すなわち選抜では負けなし)を成し遂げた場面、見開き(文庫版(31)300〜301頁)の44のコマに過去のキャラクターたちを描き、

おれたちのライバルだった山田……しかしやっぱり追いつけない男だ【1段め】
や 山田のやつ なんてえ男だ やっぱりすごい………ほんとうにすごい………………【2段め】
もう二度と現れることはないだろうな 山田のような大器は……【4段め】
こんな男におれたちは勝とうとしていたのか 勝てなかったわけだ【5段め】
おばけだぜこの山田/同じ年代にともに戦いともに仲間だったおれたちは幸運だった【7段め】

と、恐らく特定の誰かではなく、これら山田と関わった人物全体の中から沸き上がって来た感慨のようなものを、差し挟んでいる。
 さて、描かれている47名のうち、中学時代から関係のあった者は、1段め右から2人めに影丸、5人めに木下、2段め2人めに雲竜、5人めに賀間、6人めに夏子、7コマめに岩鬼の両親、3段め6人めに徳川監督、4段め3人めに不知火、5人めは小林真司、5段め1人めに景浦秋男監督兼部長、4人めに井之頭軍司、6段め1人め小林稔子、2人め長島徹、3人め牙、4人め大河内光、7段め2人め幽鬼鉄山、4コマめ赤一郎・青二郎・黄三郎の三つ子(苗字は不明)、合計20人である。鷹丘中野球部ナインのうちでは*1、俊足だが全く役に立たなかったスリの猛司が入っていない。――当然だが、やはり朝日奈アッコは入っていない。
 私は整合性が気になるので、このような場合、すなわち、――ある程度のポジションを得ていた者が、理由も説明されないままにいなくなってしまうようなことが、気になってならないのである。
 ついでにもう少々原作の細かいところを少し確認して置く。
 9月23日付(12)に、山田を自分の経営する鷹丘中に転校させた(らしい)理事長の銅像の台座正面に嵌め込まれている銘板に「初代理事」長「堂本源‥‥」とあることを指摘したが、その先まで読んで行くと、フルネームで出ていることが分かった。
 10月10日付(21)に見た、長島が転校しようとしていた場面で、「鷹丘中学校初代理事長堂本源藏像」との銘板のほぼ全体(右端が切れている)が描写される(文庫版④275頁1コマめ)。やや縦長のようだが、これが新入部員勧誘をめぐる場面(文庫版④298頁1コマめ)では、銘は同じだが正方形に近い。
 ところが、この形と名前が変わってしまうのである。
 山田がサチ子と野球部員勧誘に奔走する場面(文庫版⑤101頁1コマめ)ではこの銘板が横長になっていて、小さいために文字が潰れている(と云うか潰している)が上部に横書きで「■■■■」とあるのである。晩秋、進路が問題になる頃(文庫版⑦18頁1コマめ)に描かれた銘板は、やはり小さいために文字を記入していないが横長である。
 そして2学期の期末テスト後の場面(文庫版⑦44頁1コマめ)では銘は縦書きになっているが銘板の形は横長である。そして銘は「鷹丘中学校初代理事長堂本源三郎」となっていて、左側にかなり余白がある。次のコマ(文庫版⑦44頁2コマめ)はやや小さく文字も乱れているが、同じ形と銘である。
 堂本源藏なのか、堂本源三郎なのか、瑣事ではあるけれども、水島氏は細かい設定をきちんと控えて描いていないらしい。だからこそ、重要性の低いキャラクターの消失と云うことも起こり得るのだろう*2。(以下続稿)

*1:11月15日追記】以下全て「鷹岡」となっていたのを「鷹丘」に訂正した。

*2:この堂本理事長も上記の47名の中に見当たらないのである。――他にこの中に入っていても良いと(朝日奈アッコよりも)思う人物としては、講道館の伊賀谷栗助師範代を挙げて置こう。随分山田の才能を買っていたのだが……。