瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

水島新司『ドカベン』(40)

鈴木則文監督『ドカベン』(30)
 映画を再見したら幾らでもネタが拾えるつもりでいたのだが、暇がなくてやっと週末に通覧した後は、以前から気になっていた部分を幾つか、細かく見直すだけで終わってしまった。だから他にも記事にしたい箇所は幾つもあるのだけれども、これ以上書けないのである。後3回は借りないと駄目だな(笑)。買った方が安上がりだと云う気がしないでもないが、しかし買ってしまうと安心して(何が安心なんだか良く分からないのだけれども)見なくなってしまうのである。
 そこで、今回から映画の内容からは若干離れて、8月31日付(04)に紹介した、サチ子を演じた佐東歩美(渡辺麻由美)がブログ「ayuuun」の2011年09月20日付「温泉子役芸者」に取り上げていた、鈴木監督の筑摩書房PR誌「ちくま」の連載「東映ゲリラ戦記」を纏めた次の本について述べて見よう。
鈴木則文東映ゲリラ戦記』筑摩書房・四六判上製本

東映ゲリラ戦記 (単行本)

東映ゲリラ戦記 (単行本)

・二〇一三年十一月二十五日 初版第一刷発行(229頁)定価1900円
・二〇一三年十二月二十日  初版第二刷発行 定価1900円
 と云っても、興味深く読んだものの私は鈴木監督作品を殆ど見ていないので、こういう世界があったのか、と云うことに感心するばかりであった。
 本作には1章を割いて述べてあるのでその検討は後日に回し、ここでは81頁17行め〜82頁6行めの、鈴木監督が抜擢して主演とした女優杉本美樹(1953.1.28生)の演技に関する、次の記述を抜いて置こう。

‥‥。『女番長ゲリラ』*1が撮影に入った初めの頃、/杉本の喋り方が妙なエロキューションになったので「どうしたんだ?」と聞くと、折角主【81】役を摑んだのに台詞が棒読みで役者としてはまだまだ、と先輩俳優に注意されたので工夫/しているんですと言う。
「元のままでいい。抑揚のないぶっきらぼうの棒読みエロキューションがお前の個性じゃ/ないか。〈無口〉〈無愛想〉〈戦闘性〉こそ女優としてのお前の最大の魅力だということを/忘れるな」と厳重注意して、自分自身の自然体演技を心がけさせ、〈芝居じみたこと〉を/以後一切封じたのである。


女番長ゲリラ [DVD]

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 「棒読み」と云えば、本作の山田(橋本三智弘)と長島(永島敏行)の台詞が棒読みであることが、ネット上ではブログやtwitter等にて、かなり否定的に言及されている。
 しかしながら、2015年11月13日付「筒井康隆『時をかける少女』(2)」に引いた、大林宣彦監督『時をかける少女』DVDの特典映像の大林監督インタビュー「大林宣彦監督に聞く」での、大林氏の発言「棒読みの台詞ってねぇ、その時代から、下手な台詞だと言われるようになったんですが実はこれは映画の古典的な、話法なんですよね。つまり、物語の骨組みをきちんと伝えるために、綺麗な発声で、伝えるというね、だから日常的な演技というものとはちょっと違う役割を持つというのが、主役の立場でもある訳ですよね」を参照するとき、鈴木監督も同様の演出をしているのだと気付かされるのである。(以下続稿)

*1:ルビ「スケバン」。