瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

水島新司『ドカベン』(41)

 昨日の続き。
鈴木則文監督『ドカベン』(31)
 山田と長島の台詞は、棒読みではあるけれども、聞き取りづらいと云うことは全くない。
 そこで思い出すのは、10年くらい前、歌舞伎座市川染五郎坂本龍馬を演じたのを見たのだが*1、主役の台詞が聞き取れないのである。ところが、脇役の50代か、それより上と見える2人の台詞は、小声で喋っていると云う設定も含めて明瞭に聞き取れたので、もう誰だか覚えていないが、凄いと思った記憶がある。――家人が最近、職場の毎月歌舞伎座に行くと云う同僚にこの話をしたところ、「変わってないわよ」「強弱しかないのよ」と酷評していたそうだが、劇場で声が通らなければ、いくら情感を込めて演じたとしてもしょうがない。坂本龍馬の場合、脇役が巧かったので余計に目立ってしまった訳だが、本作の山田と長島の場合、岩鬼のように研修所出身でもなく方言と云うアドヴァンテージ(?)もない訳で、とにかく〈芝居じみたこと〉をさせずに、明瞭に台詞を読ませることにポイントを絞って演出したのであろう。
 私はこれは、オーディションで選んだ素人への対応として、正解だったと思う。棒読みだけれども、明瞭である(ただ、プロの声優が演じているアニメと比較されたら分が悪い。観客はそこを割り引いてくれない)。
 かつ、厳しくしなかったことで、現場の雰囲気はすこぶる良かったようだ。それは8月31日付(04)に言及した、黒木鉄也(1968生)の8月2日付tweetに引用されている、昭和52年(1977)2月27日付「日刊スポーツ」の記事「役者やの〜 これでズブシロ?」に具体的に描写されている。同じく8月31日付(04)に言及した、サチ子を演じた佐東歩美のブログ「ayuuun」の回想、2011年09月20日付「温泉子役芸者」からもひしひしと伝わってくる。そして同じく8月31日付(04)に言及した、facebook「山本由香利ファンサイト(非公認)」に引かれている、ファンクラブの会報「会報 由香利」No.1(昭和52年7月1日発行・山本由香利ファンクラブ事務局(東映芸能内)・4頁)の2頁が本作の特集(?)になっており、囲みコラム「ないしょの話〈三振〉」に「‥‥、実は同級生役の女の子たちとすっかり仲良しになって、撮影中にお菓子をポリポリおしゃべりに夢中、‥‥」云々とあって、ソフトボール部員を演じた、男子生徒と違ってこちらは年相応の「女の子たち」にとっても、とっても楽しい現場であったようだ。そして、その活気は、40年を隔てて見ている私にも、伝わって来るように思うのである。
 ――長島を演じた永島氏と云えば、余りの酷さに見るのを止めた朝の連続テレビ小説*2に代えて録画し始めたテレビ朝日の昼の帯ドラマ「トットちゃん」にて、青森県の某村の農業会の、ちょっとスケベな会長役を方言で演じていた。これも8月31日付(04)に触れたのだが、永島氏の所属事務所HPのPROFILE<主な出演作品>「映画」項に本作が挙がっていないのだけれども、本作がデビュー作であったことは決して不幸でも恥ずべきことでも黒歴史でもない、むしろ幸運であったと思うのだ。――堂々と記載して欲しい、と、僭越ながら思うのである。(以下続稿)

*1:どういう経緯で見に行くことになったのか、全く覚えていないが、どうしても見たいと思って行ったのでないことだけは確かである。【追記】急に行けなくなった人に券をもらって、1階席で見たのだと思う。

*2:2015年11月24日付「山本禾太郎「第四の椅子」(08)」の付け足しに書いたように「あさが来た」以来前作までは録画して、文句を言いながら夕食時に流して何となく見ていたのだが、今作は「まれ」以来の愚作である。突っ込みたい箇所は多々あるが、……あり過ぎて突っ込む気にもならない。