・鈴木則文監督『ドカベン』(34)『東映ゲリラ戦記』(3)
昨日の続き。
天尾企画部長の提案を断った鈴木氏であったが、155頁11〜12行め「数日後」菅原文太と温めていた企画の「参考に新しいハヤカワ・ミステリでも読んでみるか/……とふらっと立ち寄った新宿の書店」で、13〜14行め「コミックの棚にズラリと並んでいる『ドカベン』二十数巻を目にして、何気なく第一巻/を読み始めた」ところ「つい引き込まれ」、15行め「三巻まで買い求め、近くの喫茶店で一気に読破とな」り、16〜17行め「その日のうちに豹変し……東京撮影所/の天尾完次に電話を入れた。」のである。
155頁18行め〜156頁2行めの鈴木氏の発言。
「ドカベンは映画でいける。日本人の好きな佐藤紅緑の少年の理想が堂々と描かれている。【155】素人の公募によるオーディション大賛成。漫画ソックリのを探そう。ドカベン三〇〇〇万/人の愛読者の夢を絶対こわさない映画をつくってみせる」
鈴木氏の156頁12行め「以降、ひたすら漫画『ドカベン』の映像再現に突き進むことにな」ったと云う意欲は、本物だったと思うのだけれども、不幸にして、前回挙げた種々の悪条件のため「夢を絶対こわさない」ことにはならなかったのである。
それはともかく、翻意して掛けた電話での会話の続きも抜いて置こう。156頁4〜9行め、
「そうか、今度は決意が固そうなので他の監督を太田浩児プロデューサーと相談していた/ところだ。企画は鈴木作品で通したので心配していたのだ。掛札昌裕の脚本はもう半分ぐ/らい進行している。原作を渡そうか」
というから、
「原作を読んだからやってみようという気になったんだ」
と答えた。それが本当の理由だからだ。
そして156頁15行め〜159頁10行め(157頁は宣伝写真と単行本①巻の書影)に、156頁13行め「本社宣伝部作成の映画館配布文」が引用されるのだが、その内容については次回に検討することにする。(以下続稿)