瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

Prosper Mérimée “La Vénus d’Ille”(12)

・I giochi del diavolo “la Venere d'Ille”(2)
 4月6日付(07)の続き。

 まづシリーズ共通のオープニング*1、ピアノ伴奏付のヴァイオリン曲が流れる中、最初は部分の大写しで何だか分からなかったのが、最後に全体を写して判明する、と云う仕掛けで白地に血のような赤で描いた悪魔の顔が現れる。
 原作では4月10日付(09)に引いたように、日没後に案内人の話を聞きながらイールに向かう場面から始まるが、TVドラマは、その途々聞かされる銅像の発見・発掘シーンから始まる。――2人の男が Peyrehorade 家のオリーヴ畑で、枯れたオリーヴの根を掘り出している最中、1人の鶴嘴にカチンと音がして、左手が現れる。死体が出てきたかと脅える2人の様子に気付いて覗き込んだ Peyrehorade 氏は、眼鏡を掛けてそれがブロンズ像であることに気付き、自ら手や木の枝で掘り進めると女神像の胸、そして顔が現れる。
 ここでロマンチックな主題曲が流れて、女神像の横顔をバックに、タイトルとキャスト・スタッフがクレジットされる。
 牛2頭に引かせて綱で引っ張って銅像を立たせるが、その直後に銅像が傾いてもう1人(ジャン・コル)の左脚に倒れかかる。
 場面は変わって案内人にその話を聞く主人公(語り手)。原作では案内人がジャン・コル(このドラマではイタリア語読みで「ジョバンニ」某)と2人で銅像を見付けた――つまり発掘に立ち会っていたことになっているが、ドラマの案内人は小柄で髭を生やした別人である。
 さらに場面は変わって、長身で体格も良くアフロのような黒髪のアルフォンス(このドラマではイタリア語読みで「アルフォンソ」)が、ラケットを手に台所に入って摘み食いをしているところに、夏らしく胸の開いた服で胸を見せつけるようになっている下女・マリアがお盆に饅頭みたいな白いパンをたくさん載せて来たところを捕まえて、からかうように話し掛けて1つ摘まむ。
 案内人と並んで歩きながら話を聞く主人公。案内人が手綱を引く驢馬には主人公の荷物が積まれている。原作と違ってまだ日は高い。そこで乗馬のクララを目撃する。
 ここら辺、このTVドラマは、TVドラマだから、と云うべきなのか、クララと主人公とを関連付けようとしている。原作では主人公と mademoiselle de Puygarrig が直接言葉を交わす場面もないから、気持ちを通わせるようなこともないのだが、TVドラマでは後述するように、キスしたり(!)もするのである。いや、クララが野駆けをしている、と云うのも、TVドラマではクララ自身がこの結婚に対して、漠然としたものを抱いていると云うことを暗示しているかのようでもある。
 そして鐘の鳴り響くイールの町を遠望するが、Google Map 等で見るに丘陵地からイールまでの距離が近過ぎるようだし、4月5日付(06)に引いた西本氏の「解題」にあるようにイール(Ille-sur-Têt イル=シュル=テ)は川に近い平地にある町なのだが、どうも緑濃き低山の懐にあるように見える。
 そして Peyrehorade 家(ドラマは「ペロラード」もしくは「ペィロラード」と聞こえる)での晩餐の場面になる。(以下続稿)

*1:【4月18日追記】動画を貼付した。