瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

Prosper Mérimée “La Vénus d’Ille”(15)

・I giochi del diavolo “la Venere d'Ille”(5)
 昨日は Puygarrig から戻って後のことにまで及んでしまったが、ここで Puygarrig での出来事からその日の晩までを見て置こう。―― Puygarrig 邸の庭で大勢が集まって立食パーティー。そこでアルフォンス君から「マテュー」と声を掛けられて金の指輪を見せられる。アルフォンス君は主人公よりも長身である。
 原作では昼食後、Puygarrig への出発前にアルフォンス君に厩舎に連れて行かれ、さんざん馬の自慢を聞かされた挙句に、花嫁に贈る灰色の牝馬から花嫁の美しさに話が及び、それよりも持参金の多さの方にアルフォンス君が感激しているらしいことに不快にさせられるのだが、そこで指輪を見せられるのである。
 指輪のデザインについては原作では、杉氏(143頁9〜10行め)は「‥‥、小指のつけ根からダイヤをちりばめた大きな指輪を引き抜いて見せた。組/み合わされた二本の手の形につくられているもので、‥‥」西本氏(105頁13〜14行め)は「‥‥、もう小指の第一関節から、二本の手が握り合わされた意匠に、ダイアモンド/をいくつもあしらった、大きな指輪を引き抜いていた。二本の手の意匠が‥‥」平岡氏(219頁6〜7行め)は「‥‥、ダイヤモンドをちりばめた太い指輪を小指のつけ根から抜き取った。/手と手を絡み合わせた形をしているのが、‥‥」となっており、後から細工して追加したダイヤモンドが幾つも嵌め込まれているのだが、TVドラマでは握り合った手の左右に1つずつダイヤモンドをくっつけている。
 話もTVドラマの方に戻して、――主人公がアルフォンス君に指輪の感想を述べているところに歓声が挙がる。庭に姿を見せたクララを祝福するために招待客たちが集まって騒いでいる。アルフォンス君はクララに駆け寄ってキスを交わし、抱き上げる。周囲は拍手。
 アルフォンス君がクララを主人公に紹介、右手に接吻、さらに顔にも接吻して、2人が見つめ合うところに例の主題曲が流れる。
 その曲が流れたまま、すぐに場面は Peyrehorade 邸の庭で銅像の顔をスケッチする主人公、――この流れで、クララと女神像が似ていることが暗示される(そういう台詞もあるのかも知れないが、イタリア語が分からないので)。主題曲が余韻を残して途切れたところで、眼鏡を外した Peyrehorade 氏が登場して、主人公に感想を聞き、台座の銘文を指摘して主人公と意見を交わす。時間が短いので原作ほど複雑な話はしていない模様。この辺りのことは前回も述べた。
 Peyrehorade 氏が家に戻ると再び主題曲が流れ、主人公は銅像を見上げ、銅像の前を逍遙して、顔をつくづくと眺める。やがて主人公はスケッチブックを脇に挟み、折り畳み椅子を手に、もう1度銅像を顧みてから家に向かう。女神像の脇には紫陽花の花が盛りである。主題曲が流れ続ける中、夕陽に照らされて銅像の背中が燃えるように赤く染まり、象嵌された白い目が何故か異様に光る。主題曲は例の煽るようなBGMに掻き消される。(以下続稿)