瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

睡眠不足(3)

 昨日の続き。
 梅が2000粒と書いたけれども、生ったのは恐らく倍以上で、半分は春のうちに、一頃続いた強風で落ちてしまった。これら青いうちに落ちた梅の実も、何らかの使い途があったのかも知れないが、そのまま放置した。今は果肉が落ちて種だけになって、庭中に転がっている。今、硝子瓶の中で蜂蜜漬けにしている2000粒の殆どは、枝からもいだのではなく、落ちたのを拾っている。高いところに生っていて届かないし、土が軟らかいので脚立が沈んでしまう。梅は真っ直ぐ伸びないし、変なところから小枝が生えていて、うっかりすると腕や顔を引っ掻いてしまう。3年前、朝、出勤前にワイシャツに着替えてから思い立って、朝一番に拾った後に落ちた実を拾っていたとき、ふと梅の根元に落ちているのに気付いて、しかし梅の根元は土が軟らかくて足がめり込んでしまうので幹に手を掛けて、不自然な体勢で拾っていたところ、うっかり妙な按配に伸びていた枝をこめかみに刺してしまい、漫画のように流血したことがあった。私はそれまで人も自分もだらだらと血を流したのを見たことがなかったので、本当に漫画みたいだと思ったのである。しかも、刺さったときはあっと思ったが、痛くないので、洗面台の鏡に映してみて、本当に他人事*1のように感ぜられたのである。
 時間があれば1日に何度も拾うのだけれども、これは団子虫と競争になるからである。団子虫は普段、茶殻や野菜屑で満足しているのに、梅の実にも食い付いて、窪みを作るのである。なるべくそんなことをされたくはないので、起きたらすぐ拾い、まだ明るいうちに帰宅出来たら蚊を追い払いながら拾う。繁茂した枝はベランダの先の屋根の上にも広がっていて、夜中、実が屋根に落ちる音と、転がる音を度々耳にした。そのまま庭に落下するのだが、樋にも溜まっていたので、ベランダの柵を乗り越えて屋根の上に降りて、樋からも拾い、さらに枝に着いている実を触って見て、取れたものはそのまま収穫した。
 収穫した実はすぐに水洗いして、トースターの上に敷いたキッチンペーパーに並べて乾かす。乾くと硝子瓶に放り込み、そのときに傷や汚れのあるものを選り分けるので、随分時間がかかる。そして、初めの頃は瓶を軽く振って、近頃では杓子で掻き混ぜて蜂蜜をまぶす。硝子瓶は4つ、22リットルくらいあるのだが、うち2つは昨年、一昨年以前の古漬けが残っているので、5リットル(或いは4リットル)の2つを順次空けて詰め、それでは足りなくなりそうなので8リットルの瓶を買って来て、それで今、瓶が3つ一杯になっているのだが、もう日に20粒も収穫がないので、ガス抜きをすれば何とか今年の収穫は収まりそうである。
 例年、梅に油虫が大量に着いて、油虫の着いた枝の下は本当に油を浴びたようになるのだが、この油虫の分泌物が梅の実にかかると黒く汚れるのである。洗うのも面倒だし、洗っても完全には落ちない。今年は油虫が漸く着き出したらしく、ここ数日拾った実の3割くらいが黒く汚れているが、例年に比べると汚れも少ない。どうしてなのだが良く分からないが、とにかく綺麗な仕上がりになりそうで今から楽しみである。
 蜂蜜漬けの実は実家の父が喜ぶので、会う折ごとに少しづつタッパに詰めて渡している。私は残った梅シロップを水で割って飲んでいる。液体を運ぶのは大変だし、甘い物が大好物の父に目安が分かりにくい液体の方を渡しては、すぐに飲まれてしまいそうである。日に何粒と決めて摘んでもらうのが丁度良い。
 梅、椿、紫陽花で地面に日が差さなくなって、乾かなくなったので、風呂の残り湯(冷ました水)は、庭ではなく玄関を出た向かいの団地の生け垣に撒いている。躑躅が植わっているのだが、乾きやすくて枯れて抜かれてしまったり、育ちが悪かったりするのだけれども、管理人はたまに草むしりはしても水はやらない。それで隔日の風呂掃除の前に、残り湯をバケツで汲んでやっている。今年も枯れずに花を着けたのでほっとしている。ただ、これから暑くなると庭も1日で乾いてしまうので、風呂の残り湯では間に合わなくなるのが困ったところである。土質の改良から出来るなら良いのだけれども、自分の庭ではないので、茶殻を撒く訳にも行かない。せめて乾かないように努めるばかりである。――頼まれもしないのにこんなことが気になっているせいで、夏は家を空けられないのである。
 今から風呂に入るのだが、その後、また蜂蜜に着けた梅からガスが出て、瓶の口近くに盛り上がって来たので、杓子と爪楊枝でガス抜きをするのに時間を取られる。収穫の手間はなくなったがガス抜きに時間を取られる日々が暫く続きそうで、睡眠不足は解消されるどころか、いよいよ甚だしくなりそうな按配なのである。だから本のことなど書いていられなくなっているのだけれども。(以下続稿)

*1:読みは勿論「ひとごと」。